1 / 1
1
しおりを挟む
安達 菊は御年100歳であった。
菊は小部屋で何やら悲しんでいた。
何故なら菊には息子が4人もいたのだが、すでに先立っていたのである。
菊は孤独であった。
「もう何も残すものはないんだ。夫も他界して、息子も一人もいない。仏様は何故こんな人生を私に定めたのだろう? きっと、天に見放されたのだろう」
菊は悲しみの日々を送り、毎日お寺で手を合わせていた。
今日も朝早くから、橋を渡りお寺へと歩いていると、向こうから息子の一人にとてもよく似ている男が歩いてきた。手には赤く染まった出刃包丁を持ち、嬉々として通り過ぎて行ったのだ。
菊は身震いし、「くわばら、くわばら」と無関係を装いお寺へと向かう。
お寺に向かう道中。菊は不思議な体験をしてきた。
息子にとても似ている男が3人も通り過ぎ、皆、何かとてつもない犯罪をしたかのような風貌をしていた。
ある男は、片手にガソリンの入ったポリタンクを持ち、もう片方の手にライターをつけたり消したりしながら歩いている。ある男は、剃刀の刃か何かで体中を傷つけていた。最後の男は、ガスマスクと大きなバックであった。
菊は身の毛がよだつも、なんとかお寺に入り、一心に祈った。
その時、また不思議なことが起こった。
目の前が急に明るくなりだし、腰を抜かした菊の前に観音菩薩が現れたのだ。
「菊や。お前は決して孤独ではない。お前は道すがら息子たちに会っていたのだ。息子たちは、皆、恐ろしい犯罪に手を染めてしまう未来を背負ったものたちだったのだ。息子たちに殺されてしまう未来の者たちは今も生きている。その者たちを探しなさい」
観音菩薩の言葉に、菊は涙を流し、精一杯感謝をした。
菊は未来で息子に殺されてしまった運命の人たちを探し当て、ささやかな出会いをし、心満たされ。死ぬ間際。菊は光に満たされていた。
菊は小部屋で何やら悲しんでいた。
何故なら菊には息子が4人もいたのだが、すでに先立っていたのである。
菊は孤独であった。
「もう何も残すものはないんだ。夫も他界して、息子も一人もいない。仏様は何故こんな人生を私に定めたのだろう? きっと、天に見放されたのだろう」
菊は悲しみの日々を送り、毎日お寺で手を合わせていた。
今日も朝早くから、橋を渡りお寺へと歩いていると、向こうから息子の一人にとてもよく似ている男が歩いてきた。手には赤く染まった出刃包丁を持ち、嬉々として通り過ぎて行ったのだ。
菊は身震いし、「くわばら、くわばら」と無関係を装いお寺へと向かう。
お寺に向かう道中。菊は不思議な体験をしてきた。
息子にとても似ている男が3人も通り過ぎ、皆、何かとてつもない犯罪をしたかのような風貌をしていた。
ある男は、片手にガソリンの入ったポリタンクを持ち、もう片方の手にライターをつけたり消したりしながら歩いている。ある男は、剃刀の刃か何かで体中を傷つけていた。最後の男は、ガスマスクと大きなバックであった。
菊は身の毛がよだつも、なんとかお寺に入り、一心に祈った。
その時、また不思議なことが起こった。
目の前が急に明るくなりだし、腰を抜かした菊の前に観音菩薩が現れたのだ。
「菊や。お前は決して孤独ではない。お前は道すがら息子たちに会っていたのだ。息子たちは、皆、恐ろしい犯罪に手を染めてしまう未来を背負ったものたちだったのだ。息子たちに殺されてしまう未来の者たちは今も生きている。その者たちを探しなさい」
観音菩薩の言葉に、菊は涙を流し、精一杯感謝をした。
菊は未来で息子に殺されてしまった運命の人たちを探し当て、ささやかな出会いをし、心満たされ。死ぬ間際。菊は光に満たされていた。
0
お気に入りに追加
3
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
ファー・ジャルグ 北の国のお話
日比谷ナオキ
児童書・童話
アイルランドに存在する妖精、ファー・ジャルグの話を元に、作成した話です。本来は絵本として作成したものなので、非常に短い作品です。
ある北の国の話。北の国の森には、真っ赤な帽子と真っ赤なマントを羽織った不思議な精霊、ファージャルグがいるのです。彼は度々人の前に姿を現して、いたずらをするのですが、旅人が森で迷ったりしている時は助けてあげたりします。そんな精霊と、ある二人の男のお話です。
【完結】馬のパン屋さん
黄永るり
児童書・童話
おじいちゃんと馬のためのパンを作っている少年・モリス。
ある日、王さまが命じた「王さまが気に入るパン」を一緒に作ろうとおじいちゃんに頼みます。
馬のためのパン屋さんだったモリスとおじいちゃんが、王さまのためのパン作りに挑戦します。
新訳 不思議の国のアリス
サイコさん太郎
児童書・童話
1944年、ポーランド南部郊外にある収容所で一人の少女が処分された。その少女は僅かに微笑み、眠る様に生き絶えていた。
死の淵で彼女は何を想い、何を感じたのか。雪の中に小さく佇む、白い兎だけが彼女の死に涙を流す。
茶臼山の鬼(挿絵つき)
Yoshinari F/Route-17
児童書・童話
いろいろな作品に挑戦しようと思っています。
茶臼山には、鬼がたくさん棲んでいます。その中でも、赤鬼の「アギョウサン」と、青鬼の「サギョウゴ」は、人間に変身できる、特別な鬼です。
2人の鬼は、人間に変身して、トラックに乗って、街にやって来ます。
何をしにやって来るのか、知っていますか?
原作 文 Yumi F
イラスト Yoshinari F
しあわせの白いたぬき
マシュー
児童書・童話
まっ白い毛色をしたたぬきの女の子チイは、他のたぬきと毛色が違うという理由で仲間はずれにされてしまう。
ある日、他の里からやって来たたぬきの男の子カンは仲間はずれにされているチイに手を差し伸べる。
チイとカンの出会いから始まる家族の愛の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる