上 下
10 / 11
前兆現象 バクテリア

2-10

しおりを挟む
 木戸根はふむふむと、何度も頷いてから。

「その星宗さまという人は、多分。噂でしか聞いたことがないけど、この日本の政界を裏で牛耳る偉い人だろうね。あの星宗さまか……ぼくも会ってみたいな。よし! こうしよう。ぼくも天台学校に行くよ。そこで、教鞭を振るなり、異能の力を振るなり。何でも言ってくれ。後、缶コーヒーをむやみに空で捨てないように。いいね」

「あ、ああ」

 緑色の空から無数に降りだしているカプセルを、光太郎と木戸根は、静かに見ていた。地上では、破裂音が轟き。カプセルの中の水が、噴水のようになって、こっちまで飛沫が飛び散りそうだった。

「じゃ、天台学校は君の下にある学校だね。ぼくはちょっと、あのカプセルをなんとかしてくるよ」

「ええ? なんとかって、それじゃあ、意味ねえぞ! 俺が焼くから!」
「いやいやいや、ぼくの異能の力は……瞬間凍結さ。それと、空も飛べるんだよ」
 
 木戸根は話ながら下方へと、ゆっくりと降りていった。

「……瞬間凍結? 凍らせるんだ……」
「そう、それでぼくは友人と違って、見捨てたわけじゃないけど、助かったんだ」

 すぐ近くの地上へ落下した。一つのカプセルが破裂し、大きな破壊音とともに破壊汚水が壮大に飛び散った。

「クソッ! 焼いてやる!」

 光太郎が拳を握ると、腕から炎が降りて来た。その炎は熱く光太郎の拳を包んだ。
 と、同時に眼前に大きな破壊汚水の飛沫が迫り来る。

「大丈夫だよ! 飛沫から少し離れて!」

 遥か下方に降りた木戸根が、余裕の口ぶりで難なく透明な飛沫を空中で、瞬間凍結してしまった。

 木戸根が片手を上げて、見えない波動か風か何かによって、地上から霧散し、飛び散る破壊汚水を凍らしていった。
 そのままの形で真っ白に凍った破壊汚水は、そのまま地上へと次々と落ちていく。

「すげえなあ……木戸根さん!」

 光太郎は素直にそう思った。
 
「あ! なんだ!?」

 だが、そのカプセルだけ他のカプセルとは違った。
 中に破壊汚水以外に何か入っていたのだ。
 感覚器官が異常発達した光太郎でも、肉眼で捉えられないほどのスピードで、こちらに向かって、何かが飛んできた。

 瞬間。光太郎は物凄く強い衝撃で、後方へと吹っ飛んだ。
 腹部が破裂しそうなほどの打撃を受けたのだ。と、気が付いたのは、光太郎が空中で、体制を整えながら急ブレーキした時だった。

「イッテテテテーーー! クソ! なんだってんだ!!」

 光太郎は拳を握り直した。
 
「翼。生えてる時で良かった……藍川に感謝しないとな……」

 翼の生えている光太郎は、想像以上に頑丈だった。
 恐らく、翼が生えていない時だったら、確実に即死していただろう。と、光太郎は思って、身震いする。

 けれども、また目では補足できない物体が、こちらへ向かって、猛スピードで飛んできた。

「あぶない! 光太郎くん!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

INNER NAUTS(インナーノーツ) 〜精神と異界の航海者〜

SunYoh
SF
ーー22世紀半ばーー 魂の源とされる精神世界「インナースペース」……その次元から無尽蔵のエネルギーを得ることを可能にした代償に、さまざまな災害や心身への未知の脅威が発生していた。 「インナーノーツ」は、時空を超越する船<アマテラス>を駆り、脅威の解消に「インナースペース」へ挑む。 <第一章 「誘い」> 粗筋 余剰次元活動艇<アマテラス>の最終試験となった有人起動試験は、原因不明のトラブルに見舞われ、中断を余儀なくされたが、同じ頃、「インナーノーツ」が所属する研究機関で保護していた少女「亜夢」にもまた異変が起こっていた……5年もの間、眠り続けていた彼女の深層無意識の中で何かが目覚めようとしている。 「インナースペース」のエネルギーを解放する特異な能力を秘めた亜夢の目覚めは、即ち、「インナースペース」のみならず、物質世界である「現象界(この世)」にも甚大な被害をもたらす可能性がある。 ーー亜夢が目覚める前に、この脅威を解消するーー 「インナーノーツ」は、この使命を胸に<アマテラス>を駆り、未知なる世界「インナースペース」へと旅立つ! そこで彼らを待ち受けていたものとは…… ※この物語はフィクションです。実際の国や団体などとは関係ありません。 ※SFジャンルですが殆ど空想科学です。 ※セルフレイティングに関して、若干抵触する可能性がある表現が含まれます。 ※「小説家になろう」、「ノベルアップ+」でも連載中 ※スピリチュアル系の内容を含みますが、特定の宗教団体等とは一切関係無く、布教、勧誘等を目的とした作品ではありません。

ワイルド・ソルジャー

アサシン工房
SF
時は199X年。世界各地で戦争が行われ、終戦を迎えようとしていた。 世界は荒廃し、辺りは無法者で溢れかえっていた。 主人公のマティアス・マッカーサーは、かつては裕福な家庭で育ったが、戦争に巻き込まれて両親と弟を失い、その後傭兵となって生きてきた。 旅の途中、人間離れした強さを持つ大柄な軍人ハンニバル・クルーガーにスカウトされ、マティアスは軍人として活動することになる。 ハンニバルと共に任務をこなしていくうちに、冷徹で利己主義だったマティアスは利害を超えた友情を覚えていく。 世紀末の荒廃したアメリカを舞台にしたバトルファンタジー。 他の小説サイトにも投稿しています。

美咲の初体験

廣瀬純一
ファンタジー
男女の体が入れ替わってしまった美咲と拓也のお話です。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

未来への転送

廣瀬純一
SF
未来に転送された男女の体が入れ替わる話

入れ替われるイメクラ

廣瀬純一
SF
男女の体が入れ替わるイメクラの話

処理中です...