イニシエ 図書館のspellbook

主道 学

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蛇の書

階下から

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 その日は、激しい雨音を聞きながら、ぼくはベッドの上でいつまでも考え事をしていた。お気に入りの文庫本も読まない。好きな音楽も聴かない。ただ、未だ振り続ける大雨の音に耳を傾けている。
 あの後、白花と凛と別れ。
 家に帰った。
 学園長にも両親にも、もう話した。
 これから世界が終わりを告げるまで本格的な戦いが起きるから。と……。

 学園長は「ふむ……」と言っただけだった。けれど、何か思うところがあるのか考え事をしているかのようだった。両親は話を聞くとただ泣いていた。きっと、ぼくの代で世界の終わりがついに来たんだということを悲しんでいるのだろう。あるいは違うかも知れない。でも、ぼくにはその涙が決して悲しみからだけではないようにも思えた。

 一体……? 
 どういうことなんだろう?

 やっぱり、学園長も両親もそして、恐らくはまだ話していないマレフィキウム古代図書館の館長も……それと白花さえも、何かぼくには到底理解できない秘密を持っているのだろう。

 それはなんなのだろうか?

 世界の終わりが告げられるといっても、ピンとこないし、何が起きたら世界が終わるんだろうか? 世界の終わりの具体的な事象とは? それに関わるマレフィキウム古代図書館の魔術師とは? 破滅の書。ルインの書とは? 

 ぼくは代々魔術書を見張っているだけの役目を担っているだけだった。
 他の事はほとんど知らないに等しい。

 明日、学校で……白花に必ず問い詰めてみよう。 
 そう、世界の終わりを告げる一族に……。
 
………

 ガタンと階下から物音がしたと同時に、ざわざわとした酷い胸騒ぎが始まった。ぼくは我慢できなくなってベッドから起き出した。
 白いパジャマがいつの間にか汗でびっしょりになっていた。
 ベッドの傍らにある目覚まし時計を見ると、深夜の三時だった。
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