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勇気の書
本はどこへ消えた?
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本は、体裁はしっかりとしていて、読むことに無理が生じない本ばかりで、解読がいつの間にか好きになっていたぼくとしては大助かりだった。
きっと、ことのほか大切に古代図書館の館長に保管されていたのだろう。
そのため今までの役目は全然苦にはならなくなった。
「ねえ、君。昨日の夜にマレフィキウム古代図書館で、一冊の本を見なかった? 光の中へと消えていったのだけど? その本のタイトルはルインっていうの」
「え?!」
女性はこの学園の制服を着ていた。
青と白のブレザーだ。
金髪で綺麗な顔をしているが、ギリギリ日本人の顔立ちだった。
真っ白なハットを目深にかぶっている。
「見たのか?」
「睨まないで。私は白花 楓よ。世界の終わりを告げる一族」
「?!」
学園内にはメタンは無いが。
二酸化炭素はあるな。
空気の振動を体内電流で、発した。
「待って! 落ち着いて聞いて! 私は奴隷の書を読んだの! どんな傷でも癒せる! 癒しの力があるわ!」
「酸素もあれば!!」
「仕方ない!!」
白花は東階段を駆け下りた。
途端に、白花のいた場所の空気が弾けた。
空気の破裂系の初歩的な魔術だ。
ぼくは階下へと白花を追った。
階段を嵐のように駆け降りると、白花が両手を挙げて降参というポーズをしていた。
「ねえ、落ち着いてよ。ゆっくり話しましょ」
「……」
「私は何も世界の終わりを望んではいないのよ。ただ告げるだけなの。いわばシグナルね」
「そうか……すまなかったな」
白花は終始落ち着いていた。
ぼくは白花の瞳に、かなり小さな鎖のような模様が付いていることに気が付いた。
「ねえ、何してるの? ひょっとして告白?」
「マジか?!」
驚きとお道化が入り交じった顔の弥生と靖がこちらを見下ろしていた。
「零君。フラれたのよね! そうでしょ! 可哀想! きゃははははは!」
「何言ってんだ。あったりまえだろ!!」
弥生と靖が腹を抱えて笑い転げている。
この状況を見れば、誰でもそう捉えて当然だろう。
窓の外は未だ大雨で、突如稲光が発した。
「いいえ。私、この人は好きよ」
「?!」
「世界の終わりまで……ずっと一緒にいましょうね」
「う?!」
それから放課後まで弥生も靖も沈黙を貫いた。
昇降口から傘をさして外へ出ると、大雨に辟易した。やっと、弥生が話し掛けて来た。
「ネクラのあんたがねえー。明日は学校が休みで良かったわ。きっと、核ミサイルを背負ったワンちゃんか巨大なタライやたわしが空からたくさん降ってくるわよ」
「フフッ、そうでもないわよ」
ぼくの隣には、いつの間にか白い傘を差した白花がいた。
真っ白なハットは今は脱いでいた。
金髪が肩まで垂れ下がっている。
「ねえ、ルインの書はどこへ消えたのかしら? あなたならきっとわかるはずよ」
「零でいい」
「零……この大雨はこのままずっと振り続けるわ。元凶を絶たないといけない」
しばらく二人で、常緑樹が立ち並ぶ歩道をとぼとぼと歩いた。
きっと、ことのほか大切に古代図書館の館長に保管されていたのだろう。
そのため今までの役目は全然苦にはならなくなった。
「ねえ、君。昨日の夜にマレフィキウム古代図書館で、一冊の本を見なかった? 光の中へと消えていったのだけど? その本のタイトルはルインっていうの」
「え?!」
女性はこの学園の制服を着ていた。
青と白のブレザーだ。
金髪で綺麗な顔をしているが、ギリギリ日本人の顔立ちだった。
真っ白なハットを目深にかぶっている。
「見たのか?」
「睨まないで。私は白花 楓よ。世界の終わりを告げる一族」
「?!」
学園内にはメタンは無いが。
二酸化炭素はあるな。
空気の振動を体内電流で、発した。
「待って! 落ち着いて聞いて! 私は奴隷の書を読んだの! どんな傷でも癒せる! 癒しの力があるわ!」
「酸素もあれば!!」
「仕方ない!!」
白花は東階段を駆け下りた。
途端に、白花のいた場所の空気が弾けた。
空気の破裂系の初歩的な魔術だ。
ぼくは階下へと白花を追った。
階段を嵐のように駆け降りると、白花が両手を挙げて降参というポーズをしていた。
「ねえ、落ち着いてよ。ゆっくり話しましょ」
「……」
「私は何も世界の終わりを望んではいないのよ。ただ告げるだけなの。いわばシグナルね」
「そうか……すまなかったな」
白花は終始落ち着いていた。
ぼくは白花の瞳に、かなり小さな鎖のような模様が付いていることに気が付いた。
「ねえ、何してるの? ひょっとして告白?」
「マジか?!」
驚きとお道化が入り交じった顔の弥生と靖がこちらを見下ろしていた。
「零君。フラれたのよね! そうでしょ! 可哀想! きゃははははは!」
「何言ってんだ。あったりまえだろ!!」
弥生と靖が腹を抱えて笑い転げている。
この状況を見れば、誰でもそう捉えて当然だろう。
窓の外は未だ大雨で、突如稲光が発した。
「いいえ。私、この人は好きよ」
「?!」
「世界の終わりまで……ずっと一緒にいましょうね」
「う?!」
それから放課後まで弥生も靖も沈黙を貫いた。
昇降口から傘をさして外へ出ると、大雨に辟易した。やっと、弥生が話し掛けて来た。
「ネクラのあんたがねえー。明日は学校が休みで良かったわ。きっと、核ミサイルを背負ったワンちゃんか巨大なタライやたわしが空からたくさん降ってくるわよ」
「フフッ、そうでもないわよ」
ぼくの隣には、いつの間にか白い傘を差した白花がいた。
真っ白なハットは今は脱いでいた。
金髪が肩まで垂れ下がっている。
「ねえ、ルインの書はどこへ消えたのかしら? あなたならきっとわかるはずよ」
「零でいい」
「零……この大雨はこのままずっと振り続けるわ。元凶を絶たないといけない」
しばらく二人で、常緑樹が立ち並ぶ歩道をとぼとぼと歩いた。
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