夜を狩るもの 終末のディストピア seven grimoires 

主道 学

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The End of the World (世界の終末)

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「さあ、地下へと行きましょう。きっと、この廊下の突き当たりにありますよ」
 廊下からオーゼムがヘレンとモートに明るく言って手招きをした。
 白い月の光で、かろうじて薄暗い廊下の広さがわかる。三人で歩くには、狭さで息苦しさを覚えるほどだった。窓は全て嵌め殺し窓なので、息苦しさが更に増していく。
「オーゼムさん。あるものとは一体なんなのですか?」
「オーゼム? ぼくも気になるんだ」
 ヘレンは肩で息をしながら興味が先立ってしまい答えを急ごうとした。モートもかなり気になっているらしい。無表情のように見えるが、目だけが鋭かった。蝋燭の頼りない灯りだけで、三人で暗い廊下を前に進むしかなかった。だけど、オーゼムは何故か明るい。

「……そうですねー。あるものとは、形があるのか、物体か、それとも人なのかもわからないのです」
 そこまで言うと、オーゼムはニッコリと微笑むと廊下を少し足早に歩いた。
 仄かな灯りで見える部屋の家具や調度品などが、右側にずらりと並んでいたが、手入れをしてくれる人も、使う人もいないのだろうか。徐々に空っぽな部屋が目立つようになった。やがて、オーゼムが地下へと通ずる床の扉を見つけた。

 蜘蛛の巣を避けながら、オーゼムは床の扉をゆっくりと開けた。
 扉を開けた途端に、急激にジョンの屋敷全体が寒くなりだした。
 その時、ジョンの屋敷全体が激しく揺れだした。
「あ! 始まってしまいました!」
 オーゼムが叫んだ。
 ヘレンは驚いたが天変地異のような揺れのせいで、床に倒れ込んだ。モートは平然と窓の外を見た。そして、地響きのようなものが辺りを包みだした。
 ヘレンも壁面に身体を支えながら、嵌め殺し窓から外を覗くと、天空には真っ赤な大きな太陽が見えた。今までの凍てついた空気は完全に消え去り、高温がホワイト・シティ全部を襲いだしたかのような熱が空から降って来た。
「な……何が起きているんです!」
 ヘレンはたまらなくなって悲鳴を上げた。呆然と宙に浮いているかのように突っ立っているオーゼムは口を開いたが。だが、大地震が発生して口を閉じた。

 けれども、オーゼムは微笑んでいた。
「さあ、最後の賭けの時間です! モート君! 外へ出るのです! あなたも最後の狩りの時間ですよ!」
 再び口を開いたオーゼムはモートに叫んだ。
 そして、ヘレンに向くと、その真摯な顔から警告の声を発した。
「ヘレンさん! さあ! 早く! ここはもう危ないので、外へでましょう!」
 オーゼムはヘレンを連れ、屋敷の外へと大急ぎで向かった。
 モートは黒のロングコートを靡かせ外へと飛び出した。
 
The end of the world  2

 モートが屋敷の外へ出ると、大地震は収まったが、そこはヒルズタウンの外観が一変していた。街の建物は全て巨大な真っ赤な太陽によって燃え盛り、火傷を負った人々は方々へと避難するため大パニックであった。
「この世の地獄だー!!」
「今朝の天気予報はー! 今日から突然、真夏になってしまったのー?! ねえ、知っている人はいない?!」
「何が起たー!!」
「ひっ、酷く熱いー!!」

 走り回る人々の悲鳴は酷くなる一方だった。
 次に、稲妻が所々に落ちた。 
 その次は、モートの歩いているアリスの屋敷の橋の下の川が大量の血が流れたかのように真っ赤に濁ってきた。

「モート君! まだまだこれからですよ! 世界中の各所に地獄の門が開きます! この街だけでも早くに門を閉じるのです! 門は五つあって、ウエストタウンの墓地公園、イーストタウンの商店街、クリフタウンの聖パッセンジャービジョン大学付属古代図書館、ここヒルズタウンにあるグランド・クレセント・ホテルにあります! 最後はシルバー・ハイネスト・ポールです。なので、一番近いヒルズタウンの門から閉じるのです!」
 玄関先からオーゼムの声が風に乗って届いた。

「わかった……」

 モートは橋の上から返事をすると、バスの停留所へと行き。地図でホテルの場所を確認すると、地獄の門を閉じにアリスの屋敷から少し東へと走り出した。
  地から大きな門が焼かれた道路を突き破って現れた。地獄の門が開く。中から火だるまの人間が大量に飛び出し、それらを鞭で打ちまくる堅牢な髑髏でできた鎧を着た禍々しい姿の巨人が数体現れた。
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