上 下
69 / 82
Sloth (怠惰)

69

しおりを挟む
「そう、グリモワールを使ったのですが。それが今、事件を起こしている本なのですが。昔の私は、その回収のためと、そして、深く関連しているモート君に私は会おうと天界で思いました。まあ、結果はまだまだわかりませんが……いたちごっこですよ……。事件を追うと、事件に遭う。いやはや、人はまったく今も昔も変わらないものですねー」
 アリスはホッとした。何を言っているのかはわからないが、それならば、モートは直接的な殺人犯ではないのでは? けれども、オーゼムがすぐさまそれを否定した。

「いえいえ、何を隠そう事件は事件ですよ。殺人事件です。モート君が直接に殺してしまったのですよ……まあ、そうですねー。今と同じく銀の大鎌で殺害したのです。酷いですか? まあ、そんなところです」
 アリスは震え上がり酷い眩暈がしてきた。
「あ、お気をたしかにしてくださいね……まあまあ、この事件は昔から興味の湧いている事件でしたので……こほん。さあ、これからが本番です」
 オーゼムは絵画の前で咳払いをした。

 アリスとヘレン。そして、オーゼムだけがいるサロンだった。話をしているオーゼムが黙ると瞬く間に、シンと静まり返ったかかのようになる。
 外は今は吹雪だった。
 アリスは路面バスで、オーゼムとここノブレス・オブリージュ美術館へと来た。エンストはしなかった。ただ、いつもよりゆっくりと来たかのような感覚だった。
 少し、息を吐いて、空を見上げればこの街がこの世で一番美しいと思える。いつもの変わり映えしない天気だった。

 アリスは溜息を吐いた。
 きっと、モートも理由があったのだろう。
 この世では、理由がなければならないのだ。そう、何をするにも理由があるのだろう。
「はい。それではみなさん。こちらを向いてください……」
 オーゼムがニッコリと悲しく微笑んだ。

 Sloth 3

 アールブ……。
 ねえ、アールブ……。
「罪人が罪人を狩る……か……ぼくは……」

 Sloth 4

「そうです。これはモート君が決して開いてはいけないといわれていたグリモワールを開けてしまったことによります。それで村人が全員皆殺しになりました。封印されいしグリモワールは、七つの大罪です。それを七冊揃えると……どうです……お気をたしかに……あらゆる罪が罪を犯したものへ死をもたらします。昔のモート君はそれを知っていました。村の住人は全て罪の名によって死滅しました。人を殺め過ぎて、モート君はすでに死神となっていました。彼らを殺したのはその貫通する力、通り抜ける力です。おや、話が前後していますね。これでいいんです。そこで、モート君の遺体は絵画に封印されました。この村の唯一の生き残りによって……そう、ジョン・ムーアの最愛の人によってです」
 パチリっと、暖炉が弾いた。
 アリスはふと、モートの顔が頭の片隅を過った。

「村人たちの死因がお話の中で、前後していますよ。おかしいですよ。オーゼムさん?」
 アリスは納得できない箇所を指摘した。

「え、生きていた? その時代に?」
 ヘレンは驚きの声を上げた。

「何故、アールブヘルムの絞殺魔と呼ばれているかというと。死因が……まるで絞殺をしたかのような首の表面ではなく内部での破壊が目立ったからなのです」

 全て話し終えると、オーゼムは何度も悲し気に頷いていた。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

保健室の秘密...

とんすけ
大衆娯楽
僕のクラスには、保健室に登校している「吉田さん」という女の子がいた。 吉田さんは目が大きくてとても可愛らしく、いつも艶々な髪をなびかせていた。 吉田さんはクラスにあまりなじめておらず、朝のHRが終わると帰りの時間まで保健室で過ごしていた。 僕は吉田さんと話したことはなかったけれど、大人っぽさと綺麗な容姿を持つ吉田さんに密かに惹かれていた。 そんな吉田さんには、ある噂があった。 「授業中に保健室に行けば、性処理をしてくれる子がいる」 それが吉田さんだと、男子の間で噂になっていた。

後悔と快感の中で

なつき
エッセイ・ノンフィクション
後悔してる私 快感に溺れてしまってる私 なつきの体験談かも知れないです もしもあの人達がこれを読んだらどうしよう もっと後悔して もっと溺れてしまうかも ※感想を聞かせてもらえたらうれしいです

パラダイス・ロスト

真波馨
ミステリー
架空都市K県でスーツケースに詰められた男の遺体が発見される。殺された男は、県警公安課のエスだった――K県警公安第三課に所属する公安警察官・新宮時也を主人公とした警察小説の第一作目。 ※旧作『パラダイス・ロスト』を加筆修正した作品です。大幅な内容の変更はなく、一部設定が変更されています。旧作版は〈小説家になろう〉〈カクヨム〉にのみ掲載しています。

最終死発電車

真霜ナオ
ホラー
バイト帰りの大学生・清瀬蒼真は、いつものように終電へと乗り込む。 直後、車体に大きな衝撃が走り、車内の様子は一変していた。 外に出ようとした乗客の一人は身体が溶け出し、おぞましい化け物まで現れる。 生き残るためには、先頭車両を目指すしかないと知る。 「第6回ホラー・ミステリー小説大賞」奨励賞をいただきました!

夜を狩るもの 終末のディストピアⅡ meaning hidden

主道 学
ホラー
人類の終焉に死神が人類側に味方したお話。 雪の街 ホワイトシティで14歳の7人の少女たちが次々と襲われる事件が相次いで起きた。再び地上へと舞い降りた天使のオーゼムはその7人の少女たちには手首に聖痕があり何かを封印していることを知った。 モートは何故か同じ場所に聖痕ができてしまったアリスのために事件調査に乗り出したが、聖痕のついた7人の少女たちも守らなければならなかった。 やがて、事件は終焉を迎えようとするジョン・ムーアによって人類はゾンビ化の序曲を奏でる。 人類の終焉を囁く街での物語です。 注)グロ要素・ホラー要素があります。   産業革命後の空想世界での物語です。  前回のhttps://www.alphapolis.co.jp/novel/568505557/319447786の続編です。   超不定期更新です汗 申し訳ありません汗 お暇つぶし程度にお読み下さいませ<(_ _)> meaning hidden (ミーニング ヒドゥン) 隠された意味という意味です。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

呪配

真霜ナオ
ホラー
ある晩。いつものように夕食のデリバリーを利用した比嘉慧斗は、初めての誤配を経験する。 デリバリー専用アプリは、続けてある通知を送り付けてきた。 『比嘉慧斗様、死をお届けに向かっています』 その日から不可解な出来事に見舞われ始める慧斗は、高野來という美しい青年と衝撃的な出会い方をする。 不思議な力を持った來と共に死の呪いを解く方法を探す慧斗だが、周囲では連続怪死事件も起こっていて……? 「第7回ホラー・ミステリー小説大賞」オカルト賞を受賞しました!

ARIA(アリア)

残念パパいのっち
ミステリー
山内亮(やまうちとおる)は内見に出かけたアパートでAR越しに不思議な少女、西園寺雫(さいおんじしずく)と出会う。彼女は自分がAIでこのアパートに閉じ込められていると言うが……

処理中です...