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Gluttony (暴食)
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モートは急いでノブレス・オブリージュ美術館の正門を出た。オーゼムを探しにイーストタウン行きの路面バスを探した。
正門から反対側のバスの停留所で、偶然、聖パッセンジャーピジョン大学付属古代図書館の館長のアーネスト・グレグスンに会った。アーネストはヘレンとも懇意な初老の男性だったことをモートは知っていた。
「やあ、モート君。すっかり立派になって」
アーネストはモートのことを知っている風だった。
「こんにちは。アーネストさん」
今年で63歳になるには、あまりにも頑健な身体を持つアーネストは、図書館の館長というよりも、歴戦のボクサーとも見えた。
シンシンと降る雪の空からは、日差しがほんの僅か射しこんでいる。
白い息を吐いて、アーネストが言った。
「ヘレンさんから君の話を聞いたよ。モート君が追っているグリモワールは、実は七冊あるんだ……1589年に書かれたそのグリモワールは、それぞれ七つの大罪にちなんだ名前と強力な悪魔の眷属を召喚できると言われているんだ」
アーネストの声は気のせいか微かに震えていた。
「七冊?! すぐにヘレンに知らせないと!」
モートは慌ててバスの時刻表を見たが、けれども、まだ30十分以上も待ち時間があった。そこで、近くにある「ポット・カフェ」まで全速力で電話を借りに行った。
Gluttony 3
アリスはレストランへとシンクレアと共に渋々、クリフタウンへ向かうことにした。本当は美術館を見学したかったのだが、シンクレアは決して裕福ではなかった。アリスが向かう聖パッセンジャーピジョン大学の近くにあるレストラン「ビルド」は、ホワイト・シティで一番有名なレストランで、中でも羊肉のソテーが何よりも美味しかった。
アリスはたまに病院のあるクリフタウンから足を運んでいたが、シンクレアとモートは一度も入店していないだろうと、今日に思い切って誘うことにしたのだが。今回は親友のシンクレアとだけ食べることになった。
久しぶりの羊肉のソテーの味を思い出し、期待してシンクレアを連れだった。
ノブレス・オブリージュ美術館から道路の反対側へ横断歩道を渡り、バスの停留所へ着くと、そこにはモートの姿はなく。変わりによく行く古代図書館の館長のアーネストがいた。アーネストは筋骨逞しい身体でこちらにお辞儀をした。
「こんにちは。お嬢様たち。クリフタウンへ? そうですか。それはまた……今日は良い天気とはいえませんが。まあまあですからね。私はこれからヒルズタウンのホテルの温水プールでなまった体を鍛えるため水泳ですよ」
そして、アーネストはモートは急いでどこかへと走って行ったとだけ言った。
「そういえば、今日は日曜日ですもんね。お休みなのですね」
アリスは白い息を吐いて空を見上げた。
シンシンと降る雪の間に、時折日差しが射している。
「あらそう、アリス? モートはどこへ行ったのか知っているかしら? 今度は改めてゆっくりお礼を言いたいの。でも、モートがこんなにも良い人だったなんてね。ミリーが家に来てから、最初何も言わなかっの。でも、急に堰を切ったようにモートに助けてもらったとか言いだして、そしたら、母さんが「夜遅くから何やってたの! すぐに帰らないし!」って、それはもう。見るのも聞くのも嫌になるほどの長い説教だったわ」
アリスもアーネストも頭を抱えたくなるほど、その時の光景が何故だか鮮明に想像できた。
正門から反対側のバスの停留所で、偶然、聖パッセンジャーピジョン大学付属古代図書館の館長のアーネスト・グレグスンに会った。アーネストはヘレンとも懇意な初老の男性だったことをモートは知っていた。
「やあ、モート君。すっかり立派になって」
アーネストはモートのことを知っている風だった。
「こんにちは。アーネストさん」
今年で63歳になるには、あまりにも頑健な身体を持つアーネストは、図書館の館長というよりも、歴戦のボクサーとも見えた。
シンシンと降る雪の空からは、日差しがほんの僅か射しこんでいる。
白い息を吐いて、アーネストが言った。
「ヘレンさんから君の話を聞いたよ。モート君が追っているグリモワールは、実は七冊あるんだ……1589年に書かれたそのグリモワールは、それぞれ七つの大罪にちなんだ名前と強力な悪魔の眷属を召喚できると言われているんだ」
アーネストの声は気のせいか微かに震えていた。
「七冊?! すぐにヘレンに知らせないと!」
モートは慌ててバスの時刻表を見たが、けれども、まだ30十分以上も待ち時間があった。そこで、近くにある「ポット・カフェ」まで全速力で電話を借りに行った。
Gluttony 3
アリスはレストランへとシンクレアと共に渋々、クリフタウンへ向かうことにした。本当は美術館を見学したかったのだが、シンクレアは決して裕福ではなかった。アリスが向かう聖パッセンジャーピジョン大学の近くにあるレストラン「ビルド」は、ホワイト・シティで一番有名なレストランで、中でも羊肉のソテーが何よりも美味しかった。
アリスはたまに病院のあるクリフタウンから足を運んでいたが、シンクレアとモートは一度も入店していないだろうと、今日に思い切って誘うことにしたのだが。今回は親友のシンクレアとだけ食べることになった。
久しぶりの羊肉のソテーの味を思い出し、期待してシンクレアを連れだった。
ノブレス・オブリージュ美術館から道路の反対側へ横断歩道を渡り、バスの停留所へ着くと、そこにはモートの姿はなく。変わりによく行く古代図書館の館長のアーネストがいた。アーネストは筋骨逞しい身体でこちらにお辞儀をした。
「こんにちは。お嬢様たち。クリフタウンへ? そうですか。それはまた……今日は良い天気とはいえませんが。まあまあですからね。私はこれからヒルズタウンのホテルの温水プールでなまった体を鍛えるため水泳ですよ」
そして、アーネストはモートは急いでどこかへと走って行ったとだけ言った。
「そういえば、今日は日曜日ですもんね。お休みなのですね」
アリスは白い息を吐いて空を見上げた。
シンシンと降る雪の間に、時折日差しが射している。
「あらそう、アリス? モートはどこへ行ったのか知っているかしら? 今度は改めてゆっくりお礼を言いたいの。でも、モートがこんなにも良い人だったなんてね。ミリーが家に来てから、最初何も言わなかっの。でも、急に堰を切ったようにモートに助けてもらったとか言いだして、そしたら、母さんが「夜遅くから何やってたの! すぐに帰らないし!」って、それはもう。見るのも聞くのも嫌になるほどの長い説教だったわ」
アリスもアーネストも頭を抱えたくなるほど、その時の光景が何故だか鮮明に想像できた。
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