夜を狩るもの 終末のディストピア seven grimoires 

主道 学

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Ange l(天使)

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 店内は種々雑多な高級洋服店らしく随分と値の張るブランドの洋服が所狭しと壁に立て掛けられてあった。お客はどこもラッシュアワー時並にいる。モートは取り分けて気に入ったものなどないので、店先のガラス窓に映る赤い魂に気が付いた。アリスは上機嫌で二階へ行こうとモートを誘うが。

 モートは警戒した。

 すぐに振り返って、店内の様子を見ても、青い色の魂で赤い魂が埋もれてしまっていた。当然、アリスの魂ではない。アリスの魂は黄色だった。
「アリス。少しぼくの傍にいてくれ」
 モートは警戒をしながら、アリスの肩を抱ける位置まで近づいた。赤い魂は危険を意味している。何かが起ころうとしていた。それは、命の危険がその人に牙を剥いているということだ。

「どう……したのです? あ……」

 アリスも普段大人しいモートの鋭い警戒をした目に気が付いた。モートは注意深く店内の人々を観察した。周りは皆、平和に買い物をしている。なら、その赤い魂の人は、誰かに恨みを買われているか、偶然危険な人物に突発的に出会ったといったところだろう。後者でも前者でも黒い魂を持つものがいる。そのものは、複数かも知れない。
「あ! あの人?!」
 アリスが驚きの声を上げた。


 Angel 2


 アリスは前方にいる背の高い金髪の男から神々しいオーラのようなものを感じた。何とも言えない落ち着いた気持ちにさせる。そのオーラを全身に浴び。アリスはその男がモートとは何もかも対照的だと思った。

 モートは安心できる男だが、常時油断ができない空気を発しているのだ。何に対して油断ができないのかは、アリス自身はさっぱりわからなかったが。ただ、静かに這いよるかのような不思議な恐怖を感じる類の空気だった。
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