夜を狩るもの 終末のディストピア seven grimoires 

主道 学

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 普通の家が60個くらい一緒になったような大きさの豪邸を見回して、モートは不思議に思い首を傾げた。こんなところで黒い魂が関係しているのだろうか? アリスの性格からして家族も友人も円満のように思えた。
 金持ちだからといって、決して黒い魂が関与するわけではない。
 モートは窓際の雪をどかして、アリスの部屋の中を注意深く観察することにした。失礼だとは思うが飾ってある花瓶に顔を出して、部屋全体を覗いた。

  何故なら複数の男の話し声がしたからだ。
  モートは壁や天井、床を通り抜けることができるのだ。

 どうやら、許嫁や求婚者などの婚姻関係での話だったのだろう。
 だが、五人もの男がアリスの部屋にいて、アリスそっちのけで激しい言い合いをしていた。
 その一人は内ポケットに毒薬を隠しているのを、モートが気が付いた。長期間に渡って、普通の状態からいつの間にか心臓発作を起こすような毒の類だった。けれども、その男の魂は黄色だった。

 何故? 黄色の魂なのだろうか? と、モートは思った。黄色は喜びを表わしている時だ。花瓶のところから、次第にモートは謎を解き明かそうとしていた。

 部屋は徐々に五人の男たちの話し合いが、激しい口論に変わってきていた。アリスは困惑しているようだ。これまで、恐らくは一度もなかった体験だったのだろう。

 最初に結婚を申し込んだのは……誰だ?
 モートは考えた。

 毒薬を隠している男の魂の色が黒に近い灰色になりだした。
 激しい口論の中で、その男が多額の借金の返済に困っている節がでていた。ホワイト・シティでは、借金の返済に困るものには、黒い魂を持つものもいる。そこまでモートは考えた。
  
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