夜を狩るもの 終末のディストピアⅡ meaning hidden

主道 学

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Pursuing Lemegeton(追う者)ヘレン編

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「こんばんは。あなたは、確かヘレンさんでしたよね?」

 いや、ゾンビ以外も近づけないのだ。と、その男に対してヘレンは思った。男は20代の物腰柔らかな青年で、どこか実業家風のホワイトシティの貴族地区。ヒルズタウンにいるかのような男だった。それも、かなり格調高い貴族に思える。

「どうして? 私の名前をご存知なのですか?」
「どうして? ノブレス・オブリージュ美術館でも、常連だったはずですよ。ぼくですよ。ぼく……わかりませんか?」

 ヘレンは一瞬、その男の顔を疑った。
 それは、とある男の顔に非常に似ているからだ。
 
「あなたは、もしかして……サン・ジルドレ?」

 ヘレンはその名前を口にしてから、首を傾げた。
(確かに、あなたとは何年か前にお会いしているはず。でも……)
 
 変死体サン・ジルドレという人物の不吉な名前が、ヘレンの頭に浮かび上がった。サンは、何年も前にノブレス・オブリージュ美術館のVIPクラスにいた人物で、それからしばらくして、サン自身の屋敷内で不可解な変死体で発見されたという報道がされている。

「確か……あなたは……(書斎で変死体で発見されて、警察ではホワイトシティで今世紀最大の迷宮入り事件とされていたのでは? なんでも、新聞では死因がとある血の飲み過ぎと書かれていたわね)」
「そうですよ! 私は一度、変死体という形となってこの世から抹殺されていまして。それでも、ここにこうしているのにはわけがあります」

 赤黒い雹が一際激しくなった。
 ヘレンは震えながら、大き目の傘の柄を両手で掴んだ。

「わけ? というのは?」
「ふっふっふっ……意図的なんですよ。いや、儀式的産物なんですよ」 
「あの。もったいぶらないでくださいませんか?」
「はっはっはっ」

 その時、轟音と共に大きな落雷が近くのブルータル建築の住宅地へと落ちていった。
 
 サンの笑い顔の横面が、一瞬白く映えた。
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