夜を狩るもの 終末のディストピアⅡ meaning hidden

主道 学

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zombie apocalypse (ゾンビアポカリプス)モート編

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 やっと、イーストタウンのシンクレアが住む中心部にたどり着いた頃には、モートの黒いロングコートは、ゾンビによる汚れた血を吸って真っ黒だった。
 
 モートは、渋々。
 近くの水飲み場でロングコートを洗った。

 辺りは真っ赤なゾンビのうめき声が今も木霊していた。
 スラブ街の方からもゾンビが徘徊し、おおよそ人が住んでいた活気溢れるイーストタウンの面影は木っ端微塵に砕け散っていた。

 そこはすでに、赤黒い雹によって、ノブレス・オブリージュ美術館と同じ阿鼻叫喚の地獄絵図だった。

 モートはロングコートを洗い終えると、水飲み場から、少しだけ慌てながら、シンクレアとミリーを探そうとしたが……。

 その時、馬の蹄の音が路地裏の方からしてきた。モートがそちらをよく観察してみると、それは馬に乗った黒い剣を持つ仄暗い骸《むくろ》だった。

 どうやら、ゾンビアポカリプスの中での黒い魂だったので、さしずめ黒幕側が差し向けた敵なのだろうと、モートは考えた。あるいは、スラブ街で育った悪人だ。だが、このところ、敵はアンデッドばかりだった。何か関連があるのだろうか?

 そう考えると、モートは銀の大鎌を素早く構えた。

 瞬間、空から降り散る。赤黒い雹がその激しさを増した。が、同時にモートは黒の骸へ飛び掛かった。

 乾いた音が辺りを襲う。

 一瞬で、黒の骸は、頭から馬の足まで真っ二つになっていた。

 骸の乗っていた馬の二つに分断された背から、足に掛けて、おびただしい鮮血が舞う。

 アンデッドなので脆いのだ。
 
 だが、モートはできるだけ早くに、シンクレアとミリーを探すことにした。モートがゾンビ以外の音を聞こうと、耳をすますと、今度はスラブ街の方で激しい銃撃戦の音がした。 
 新鮮な血の臭い漂う密集されたスラブ街は、ゾンビが溢れかえっている。とうとう、向こう側の道路の端まで溢れかえってしまい。それを一軒の平屋建ての中から、雄々しく黒いスーツを着た男たちがトンプソンマシンガンで蜂の巣にしていた。

 元はアンデッドと化したホワイトシティの住人だが、……ゾンビは人を襲うようだ。そう考えたモートは、仕方なく。黒いスーツ姿の男たちを助けるため。ゾンビの首を狩っていった。

 次々とゾンビの首が飛び。
 汚れた血が辺りに凄惨に舞った。

 と、その時。

「モート! そのゾンビはもう死んでるけど殺しちゃダメよ!!」

 モートが振り向くと、平屋建ての小窓からシンクレアが怯えた顔を出していた。どうやら、この平屋建てがシンクレアの家らしい。初めてそのことを知ったモートは、きっと、この平屋建ての中には、今もシンクレアの姉弟がたくさん住んでいるのだろうと考えた。勿論、ミリーもいるはずだ。その証拠にミリーが姿を現した。
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