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Spear of Longinus (ロンギヌスの槍) アリス編
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シンシンと静かに降り積もる雪の日だった。アリスは、聖パッセンジャー・ビジョン大学付属古代図書館の一階で、様々な本に囲まれながらシンクレアと単位認定試験の勉強をしていた。試験まで後、二日しかないという現実がアリスの頭を悩ましていた。
無音とまではいかないが、静寂の図書館には、同じ聖パッセンジャー・ビジョン大学の学生もちらほらと見える。アリスは皆、同じなのだろうと思うと、少し滑稽な気持ちになって来た。
広いテーブルに座るアリスは、無造作に本の山を作っていた。調べることが多すぎるのだ。その本の山の上に、同じ大学にいるシンクレアの兄の一人ロイが、笑いながら、もう一冊を置いていった。
「アリス。これ読んでみろよ。面白いぜ」
「まあ! ロイ! あっち行って!」
アリスの隣で、勉強をしているシンクレアが激昂した。
アリスはシンクレアも単位認定試験への調べものの多さに、ストレスが溜まっているのだろうと思えた。
「……ロイさん。今は見て分かる通り。私も勉強中なのですよ」
ロイをシンクレアがシッシっと手で追いやると、アリスは静かに本の山とノートの世界へと再び入っていった。
パチリっと暖炉の薪が弾ける音で、アリスは気がついた。ポーン、ポーン。っと、本棚の隙間に設置された柱時計も鳴り渡り。19時を指している。シンクレアの方を向くと、隣で同じように夢中で勉強をしていた。
「あら! もうこんな時間?! ねえ、シンクレア! 夜よ!」
シンクレアが顔を上げた。アリスはその時、ここ聖パッセンジャー・ビジョン大学付属古代図書館には、他の人たちがいないことに焦り出した。皆、帰ったのだろう。本来ならアーネストが様子を見るはずなのに、そのアーネストが来なかったせいで、この有様だ。ホワイトシティの夜は危険で、寒さが尋常ではなかった。当然、命の危険もある。
窓の外は、漆黒が覆いつくしガタガタと木枠を激しく鳴らす強風が吹いている。
!
バタン!
バタンッ!
唐突に、図書館の正門のドアが開いたような大きな音がしていた。その次はドタドタと大勢の靴音がしてきた。アリスに緊急を要する危機感が芽生えてきた。シンクレアは自分の本やノートを片付けながら、こちらに目配せしている。アリスも自分の本などを素早く片付けた。
「モート……」
アリスは本をバックに入れながら、とてもか細い声でいつの間にか呟いた。
いつの間にか外は血の雨が降りだしていた。聖パッセンジャー・ビジョン大学付属古代図書館の全ての窓が血塗られていく。アリスは恐怖し、広いテーブルの下へシンクレアと共に隠れ、辺りに山積みになっていた本で姿を隠す。ドカンっと、このフロアのドアが蹴破られた。そして、慎重に歩く重い靴音が複数近づいてきた。
「……うん?」
アリスとシンクレアのいるテーブルの傍のにいる男が首を傾げた。男はテーブルの足に不自然に本が一冊外れているところを怪訝に思っている。
アリスは気が付いた。その男は、トンプソンマシンガンを手に持ち、まがまがしくキラリと光るナイフを腰元に差していた。その男が、アリスとシンクレアが隠れているテーブルに積まれた本を足で打ち払った。
男とアリスが目が合った。
「……?! ここにいたぞー! スティグマのターゲットだ!」
男がアリスを見つけると、ドタドタと男たちが集まり、トンプソンマシンガンを一斉に構える。アリスは恐怖して心底どうしようもないほど絶望した。だが、モートのことが頭を過った。シンクレアは恐怖のあまりその場で固まってしまっていた。
と、同時に天井からいきなり何かの物体が落ちてきてテーブルの上へ着地した。
ザンッと、鈍い音と共に男たちの胴体から真っ赤な血が吹き出る。周囲の本棚が血塗れになった。
幾つかのトンプソンマシンガンが火を吹いた。
連射する弾丸の嵐は、ここ聖パッセンジャー・ビジョン大学付属古代図書館全体に響くほどの轟音を発した。
アリスとシンクレアのいるフロアの壁が、蜂の巣になっていく。
だが、モートは銀の大鎌で次々と男たちの首を狩りだした。
やがて、静かになると、モートはテーブルの下のアリスとシンクレアにこう言った。
「アリス……やっぱり、図書館は静かなほうがいい」
「え? ええ……」
アリスはあまりの凄惨な光景なのに、モートに相槌を打っていた。
「そうよね。ありがとうモート。後、汚れた本は洗ってくれるのかしら?」
シンクレアがやっと口を開いたと思ったら、冗談を言ったので、アリスは少しうんざりした。きっと、突っ立ている無言のモートもだろう。
「もうー、シンクレアったら」
無音とまではいかないが、静寂の図書館には、同じ聖パッセンジャー・ビジョン大学の学生もちらほらと見える。アリスは皆、同じなのだろうと思うと、少し滑稽な気持ちになって来た。
広いテーブルに座るアリスは、無造作に本の山を作っていた。調べることが多すぎるのだ。その本の山の上に、同じ大学にいるシンクレアの兄の一人ロイが、笑いながら、もう一冊を置いていった。
「アリス。これ読んでみろよ。面白いぜ」
「まあ! ロイ! あっち行って!」
アリスの隣で、勉強をしているシンクレアが激昂した。
アリスはシンクレアも単位認定試験への調べものの多さに、ストレスが溜まっているのだろうと思えた。
「……ロイさん。今は見て分かる通り。私も勉強中なのですよ」
ロイをシンクレアがシッシっと手で追いやると、アリスは静かに本の山とノートの世界へと再び入っていった。
パチリっと暖炉の薪が弾ける音で、アリスは気がついた。ポーン、ポーン。っと、本棚の隙間に設置された柱時計も鳴り渡り。19時を指している。シンクレアの方を向くと、隣で同じように夢中で勉強をしていた。
「あら! もうこんな時間?! ねえ、シンクレア! 夜よ!」
シンクレアが顔を上げた。アリスはその時、ここ聖パッセンジャー・ビジョン大学付属古代図書館には、他の人たちがいないことに焦り出した。皆、帰ったのだろう。本来ならアーネストが様子を見るはずなのに、そのアーネストが来なかったせいで、この有様だ。ホワイトシティの夜は危険で、寒さが尋常ではなかった。当然、命の危険もある。
窓の外は、漆黒が覆いつくしガタガタと木枠を激しく鳴らす強風が吹いている。
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バタン!
バタンッ!
唐突に、図書館の正門のドアが開いたような大きな音がしていた。その次はドタドタと大勢の靴音がしてきた。アリスに緊急を要する危機感が芽生えてきた。シンクレアは自分の本やノートを片付けながら、こちらに目配せしている。アリスも自分の本などを素早く片付けた。
「モート……」
アリスは本をバックに入れながら、とてもか細い声でいつの間にか呟いた。
いつの間にか外は血の雨が降りだしていた。聖パッセンジャー・ビジョン大学付属古代図書館の全ての窓が血塗られていく。アリスは恐怖し、広いテーブルの下へシンクレアと共に隠れ、辺りに山積みになっていた本で姿を隠す。ドカンっと、このフロアのドアが蹴破られた。そして、慎重に歩く重い靴音が複数近づいてきた。
「……うん?」
アリスとシンクレアのいるテーブルの傍のにいる男が首を傾げた。男はテーブルの足に不自然に本が一冊外れているところを怪訝に思っている。
アリスは気が付いた。その男は、トンプソンマシンガンを手に持ち、まがまがしくキラリと光るナイフを腰元に差していた。その男が、アリスとシンクレアが隠れているテーブルに積まれた本を足で打ち払った。
男とアリスが目が合った。
「……?! ここにいたぞー! スティグマのターゲットだ!」
男がアリスを見つけると、ドタドタと男たちが集まり、トンプソンマシンガンを一斉に構える。アリスは恐怖して心底どうしようもないほど絶望した。だが、モートのことが頭を過った。シンクレアは恐怖のあまりその場で固まってしまっていた。
と、同時に天井からいきなり何かの物体が落ちてきてテーブルの上へ着地した。
ザンッと、鈍い音と共に男たちの胴体から真っ赤な血が吹き出る。周囲の本棚が血塗れになった。
幾つかのトンプソンマシンガンが火を吹いた。
連射する弾丸の嵐は、ここ聖パッセンジャー・ビジョン大学付属古代図書館全体に響くほどの轟音を発した。
アリスとシンクレアのいるフロアの壁が、蜂の巣になっていく。
だが、モートは銀の大鎌で次々と男たちの首を狩りだした。
やがて、静かになると、モートはテーブルの下のアリスとシンクレアにこう言った。
「アリス……やっぱり、図書館は静かなほうがいい」
「え? ええ……」
アリスはあまりの凄惨な光景なのに、モートに相槌を打っていた。
「そうよね。ありがとうモート。後、汚れた本は洗ってくれるのかしら?」
シンクレアがやっと口を開いたと思ったら、冗談を言ったので、アリスは少しうんざりした。きっと、突っ立ている無言のモートもだろう。
「もうー、シンクレアったら」
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