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pain (苦痛) ヘレン編

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「ねえ、アーネスト……」
「なんだい?」
「悪魔の偽王国とは一体なんなのかしら?」
「さあ、そのグリモワールを読んでみないとさっぱりわからんねえ」
「そう、そうよね。これから一体? 何が起こるのかしら?」

『その時がもうすぐ来るんだ』

 ジョンの確かに言った言葉がヘレンの脳裏に蘇った。
 それは、おおよそ人類にとって何かとてつもなく恐ろしいことのように思えた。 

 辺りの気温が急激に低下してきた。外の吹雪がどうやら本格的になりだしたようだ。

「お、おや! こりゃ今日は凄い吹雪になるなあ。ホワイトシティでも記録的だぞ」
「そうね。もう私は帰るわね」
「ああ、気をつけてな」

 ヘレンはノブレス・オブリージュ美術館行きのバス停まで古代図書館の大理石の階段を降り始めた。

 アーネストはもう少し調べてるようで、レファレンスルームからは出てこない。

 ヘレンは玄関の受付で厚着のロングコートを受け取ると、外へと出た。古代図書館の外はすでに銀世界となり吹雪いて視界がすこぶる悪かった。
 ようよう感でバス停まで横断歩道を探し当てて歩いていると、片側二車線の道路の行き交う交通の流れは完全に停止していた。

 このままでは多くの凍死者がでる。
 ヘレンはそう思った。
 だが、この自然現象はホワイトシティではたまにあることだった。

 ヘレンは大幅に遅れてきた16時30分の路面バスにようやく乗れた。ところが、数分もしないで、バスはエンストを起こした。

 無理もない。
 ヘレンはそう思った。

 路面バスの暖房が故障したのか、外の吹雪と同じくらいの極寒が車内を襲う。ヘレンは身を低くして、寒さを堪えた。

 バスの運転手は急に口笛を吹き。
 そのまま何事もなかったかのようにバスは走り出した。
 暖房も元通りになり、ヘレンは何が起きたのかと車内の前方を向くと、このバスにはモートとオーゼムが座席に座っていた。

 ヘレンはオーゼムの力でバスが元通りになったとわかった。

「聖パッセンジャービジョン大学付属古代図書館にもなかったですねえ。モートくん。それにしても、一体何を我々は探さないといけないんでしょうねえ?」
「ああ……まだわからないさ」
「レメゲトンよ。モート……」
「???」

 ヘレンは走行中のバス内で、モートたちの傍に寄った。
 アーネストの言葉をそのままモートとオーゼムに伝えた。
 
「ほうほうほう。いやはや、レメゲトンでしたか……」
 オーゼムが何度も頷いた。
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