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blood (出血) モート編

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 モートはここから遥か西にあるウエストタウンへと飛翔した。
 銀髪とロングコートから赤い水滴を零しながら宙を飛翔していると、しばらくすると、ウエストタウンの真っ赤に染まった林立する建造物が見えてきた。すでに真っ白な雪の姿は無い。道路へとモートが着地する頃には、真っ赤に染まった行き交う人々は皆、肌の苦痛を訴えていた。
 モートは何も感じないが、どうやら、血の雨は人間には有害なのだろう。血の流れる道端で、せっせと水掻きをしていた老人が苦痛に顔を歪めて急に倒れだした。

「だ……大丈夫か?」

 モートが駆け寄ると、老人は急にのろりと立ち上がった。具合が悪いのだろうとモートが肩に手を置いた。だが、何故か老人は何が可笑しいのかカラカラと笑いだした。
 
 老人がモートの方へと振り向くと……。

 そこには、生気のない灰色の死んでしまったような顔になった老人がカラカラといつまでも笑っていた。 
 
 モートは銀の大鎌をロングコートから取り出したが、一際目立つ赤い魂の人物を優先して、向きを変えて探した。

 周囲を見回すと。
 道路の真ん中に一人の少女が真っ赤な魂をして佇んでいる。

 周りの人たちもどこかおかしい。
 ゆらゆらと肩を動かして、少女を取り囲んでいた。 

 モートは焦ってその少女のところへ飛び込んだ。
 
 ザンッ!

 黒い魂だったので、モートはゾンビとかした男たちの首を瞬間的に狩った。
 
「あ、あなたは……? 怖い人ね……」
「……大丈夫かい……」
「ええ、助けてくれてありがとう。でも、まだあそこのゴミ箱の中にいるわ。さっき這い出てきたから」
「ああ……君はどこか建造物の中にいてくれ……」
「了解」

 モートはゴミ箱を銀の大鎌で破壊すると、中にマンホールが見えた。そして、マンホールの下へと通じる梯子が見える。ざあざあと降る血の雨が、マンホールの中へと消えていく。モートが梯子を降りようとすると、「きゃっ!」とさっきの少女から悲鳴が上がった。
 後ろを振り向くと、少女の足元に這いつくばる女のゾンビがいた。
 モートはヘレンとの約束があるので、女子供は狩れなかった。

 そのままモートは後方へと反転すると、女のゾンビを両足で踏んづけた。
 女のゾンビはそのまま動かなくなった。
 
「さあ! 今のうちにあの建物へ……! 急ぐんだ!」
「了解! 私の名前はペルガモよ! 変わった名前でしょ! 誰だか知らないけど、後お願いね!」
「ああ……」

 モートはマンホールの中へと梯子を降りた。

 どうやら、血の雨にあたると、人はゾンビになるのだろうとモートは梯子を降りながら考えていた。血の雨が降らなくなると、ゾンビはでてこなくなる。つまり、逆なのだ。ゾンビがでると血の雨が降るのではなく。血の雨がゾンビを増やすのだ。
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