夜を狩るもの 終末のディストピアⅡ meaning hidden

主道 学

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blood (出血) モート編

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 モートの今朝は、アリスが来る時間までノブレス・オブリージュ美術館の正門を押しつぶしてしまうかのような大雪を取り除くことから始まった。深夜からここホワイトシティでも記録的な雪が降り続けたせいだ。正門の前を行き交う通行人は、皆、モートに挨拶をしていた。

「やあ、モート君。今朝もよく働くね」
「ああ……いってらっしゃい」

 いつも挨拶をする通勤途中の配管工にモートは、軽く手を振った。配管工は今夜も記録的な大雪が降るのではとも言っていた。そんないつもの日常がモートには嬉しかった。モートはせっせと青銅の正門の隙間を埋めてしまった氷をスコップで丹念に削ったりしていた。ノブレス・オブリージュ美術館の使用人たちは、ヘレンが率先して広い館内の大掃除であった。
 道路はすでに雪が固まっていて、交通が滞っていた。エンストを起こす車が目立っている。

 午前9時過ぎになると路面バスが停まり。アリスが反対側の道路から歩いて来た。珍しくオーゼムと一緒だった。

「モートくん。アリスさんについた聖痕現象の意味がわかりましたよ。聖痕と血の雨との関係はまだよくわかりませんが……」
「オーゼム……? それは本当かい?」
「ええ、はい。恐らくは聖痕がついた人たちは全部で七人いるはずなんです。何故かと言うと、今まで助けた少女たちの名前がエペソとスミルナという変わった名前だったからです。これはヨハネの黙示録の七つの教会へのメッセージです」
「???」
 モートは首をかしげたが、アリスは深々と白い息を吐いて少しだけ頷いた。どうやら、アリスはヨハネの黙示録を知っているようだった。だが、モートは知らなかった。
 行き交う人々も吐く息は白い。
 空からシンシンと降る雪と共に風も出てきた。

「恐らく、後はペルガモとテアテラ。サルギス。フィラデルフィア。ラオデルキヤという名前をしているでしょうね。いずれにしても、終末で起こる前触れなんでしょうね」
「オーゼム? それと……どうしてアリスに……聖痕が?」

 モートは考えようとした。
 だが、突然。
 空から真っ赤な雨が降りだした。

「多分ですが……七人の人物たちは何かを封印しているのでしょうね。全員が少女の可能性もあります。さあ、モートくん出番ですよ。行ってください! その七人を守るのです!! あ、言い忘れていました! その七人の家は恐らく教会のはずなんです。エペソとスミルナの家も教会でしたので……。そうです教会は神の家ですからね」
「ああ……わかった」

 モートは激しく降りだした血の雨の中で、シルバー・ハイネスト・ポールへと走った。
 美術館から数十ブロックもモートは様々なものを通り過ぎる。シルバー・ハイネスト・ポールは石造りのホワイトシティでもっとも高い塔で、おおよそ400年前にホワイト・シティの統治者が建立した歴史的な建造物の一つだ。今では大勢の観光客が年に二回は訪れる場所だった。猛スピードで辿り着いたモートは、立ち入り禁止の扉を通り抜け、石階段を頂上まで行くと赤い魂を探した。
 
 シルバー・ハイネスト・ポールの頂上からは、血の雨が降り注ぐホワイトシティの真っ赤な全容が見え。モートが目を凝らすと、その中で赤い魂は幾つも見えるが、またしてもウエストタウンに小さい。だが、非常に激しく光る赤い魂が一つあった。

「……また、ウエストタウン……か……きっと、あそこだ」
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