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プロローグ
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ここは、ホワイトシティのクリフタウンという場所。
山に面した子供たちの通学路で。
雪の積もる殊の外寒い夜だった。川辺に一台の普通自動車が止まり、一人の男が静かに降りた。それから、懐の中から男は手に薬品が染みこまれたハンカチを取り出した。
空には大きな白い月が浮き出ていた。
シンと静まり返ったその夜の中へ。一人の赤い髪の少女が草木覆う細道を歩いてくる。男は慎重に近くの草むらに身を隠した。息を大きく吸って、草むらから少女の背後目掛けて忍び寄る。と、その時。
ザンッ!
一際、大きな鈍い音と共に、草むらに隠れていた男の首が地面へと落ちた。白い雪の積もった草むらに鮮血が飛び散って、真っ赤になった。
真後ろには、いつの間にか黒のロングコートで、銀髪の長身の男が銀色の巨大な鎌を持ち突っ立っていた。
「うん?」
銀髪の男は、近くを何事もなかったかのように、通り過ぎていく少女の右手首に、目立つ傷があることに気が付いた。
イーストタウンの貧民街の一室。
パンチパーマがかかった少女が寝室のベッドで、夜更かしをしていた。少女は本を読み漁っている。その本は外国語で書かれた恋愛小説だった。
急に、玄関が騒がしくなった。
それから、ドタドタと大きな靴音がしてきた。少女は本を読むのを止め。この部屋のドアを開けて外の様子を覗いてみようとした。
だが……。
廊下に現れたのは、血塗れの知らない男たちがガクガクと震えて、とある一点を見つめていた。
その凶悪な顔の男たちを少女は知らない。
当然、従姉妹の知り合いでもないし、家族も知らない。そのまったく知らない男たちの一人は、立ったままで胴体から上のあるものがなかった。そう、首がないのだ。
一斉に逃げ腰になった知らない男たちは、手には、それぞれトンプソンマシンガンが握られていた。
次に、廊下の右側の壁から銀の大鎌が突然現れ、男たちの首をそれぞれ素早く狩っていった。
少女は何が起きているのか、さっぱりわからず混乱した。
その後は、銀髪の男が廊下の壁から静かに顔を出し、少女の方を見つめた。銀髪の男が少女の手首の刺青に気がつくと、銀髪の男は一瞬だけ意外そうな顔をした。そして、そのまま壁の向こうへと、また音もなく消えていった。
そして、そのまま銀髪の男は二度と壁から現れなくなった。
ウエストタウンにあるどこかの地下通路で、金髪の少女は走っていた。
少女は今年で14歳の誕生日を迎えたばっかりだった。薄暗い洞穴のような通路で、その少女の後を大きな靴音を響かせて悪漢が三人も追いかけていた。そこは身を切るような寒さの通路だった。
所々、寝間着一枚の少女の足にはかすり傷が浮き出ていた。息も絶え絶えで、少女の顔色はこの上なく青白かった。
少女はこの暗い地下の通路の行き止まりにあたった。命からがら真横へと逃げると小さな古びたエレベーターが見えた。だが、幾ら少女が上へとあがるボタンを押してもエレベーターは何も反応をしなかった。
悪漢がそれぞれ、斧を手に持ち下卑た笑い声を発しながら少女に近づくと……と、天井から一筋の光がエレベーターを差して、扉がゆっくりと開いた。
「おめでとうございます!」
本来開くことのないエレベーターからオーゼムが現れて少女を急いで、箱の中へと引っ張り込んだ。そして、エレベーターの扉を閉めると、エレベーターの扉の中から何かが飛び出し、悪漢たちの前に現れた。
「やあ、いらっしゃい」
モートは銀の大鎌で三人の悪漢の首を瞬時に狩った。
三人の首は鮮血を上げこの暗い通路の壁にぶち当たった。
――――
「やはり、このところ14歳の少女ばかりが狙われていますね……それもこの少女の右の手首には、今度は傷や刺青ではなく。聖痕のような傷がありましたよ」
「ああ……」
困惑したオーゼムの声に、モートは無表情にこっくりと頷いた。
山に面した子供たちの通学路で。
雪の積もる殊の外寒い夜だった。川辺に一台の普通自動車が止まり、一人の男が静かに降りた。それから、懐の中から男は手に薬品が染みこまれたハンカチを取り出した。
空には大きな白い月が浮き出ていた。
シンと静まり返ったその夜の中へ。一人の赤い髪の少女が草木覆う細道を歩いてくる。男は慎重に近くの草むらに身を隠した。息を大きく吸って、草むらから少女の背後目掛けて忍び寄る。と、その時。
ザンッ!
一際、大きな鈍い音と共に、草むらに隠れていた男の首が地面へと落ちた。白い雪の積もった草むらに鮮血が飛び散って、真っ赤になった。
真後ろには、いつの間にか黒のロングコートで、銀髪の長身の男が銀色の巨大な鎌を持ち突っ立っていた。
「うん?」
銀髪の男は、近くを何事もなかったかのように、通り過ぎていく少女の右手首に、目立つ傷があることに気が付いた。
イーストタウンの貧民街の一室。
パンチパーマがかかった少女が寝室のベッドで、夜更かしをしていた。少女は本を読み漁っている。その本は外国語で書かれた恋愛小説だった。
急に、玄関が騒がしくなった。
それから、ドタドタと大きな靴音がしてきた。少女は本を読むのを止め。この部屋のドアを開けて外の様子を覗いてみようとした。
だが……。
廊下に現れたのは、血塗れの知らない男たちがガクガクと震えて、とある一点を見つめていた。
その凶悪な顔の男たちを少女は知らない。
当然、従姉妹の知り合いでもないし、家族も知らない。そのまったく知らない男たちの一人は、立ったままで胴体から上のあるものがなかった。そう、首がないのだ。
一斉に逃げ腰になった知らない男たちは、手には、それぞれトンプソンマシンガンが握られていた。
次に、廊下の右側の壁から銀の大鎌が突然現れ、男たちの首をそれぞれ素早く狩っていった。
少女は何が起きているのか、さっぱりわからず混乱した。
その後は、銀髪の男が廊下の壁から静かに顔を出し、少女の方を見つめた。銀髪の男が少女の手首の刺青に気がつくと、銀髪の男は一瞬だけ意外そうな顔をした。そして、そのまま壁の向こうへと、また音もなく消えていった。
そして、そのまま銀髪の男は二度と壁から現れなくなった。
ウエストタウンにあるどこかの地下通路で、金髪の少女は走っていた。
少女は今年で14歳の誕生日を迎えたばっかりだった。薄暗い洞穴のような通路で、その少女の後を大きな靴音を響かせて悪漢が三人も追いかけていた。そこは身を切るような寒さの通路だった。
所々、寝間着一枚の少女の足にはかすり傷が浮き出ていた。息も絶え絶えで、少女の顔色はこの上なく青白かった。
少女はこの暗い地下の通路の行き止まりにあたった。命からがら真横へと逃げると小さな古びたエレベーターが見えた。だが、幾ら少女が上へとあがるボタンを押してもエレベーターは何も反応をしなかった。
悪漢がそれぞれ、斧を手に持ち下卑た笑い声を発しながら少女に近づくと……と、天井から一筋の光がエレベーターを差して、扉がゆっくりと開いた。
「おめでとうございます!」
本来開くことのないエレベーターからオーゼムが現れて少女を急いで、箱の中へと引っ張り込んだ。そして、エレベーターの扉を閉めると、エレベーターの扉の中から何かが飛び出し、悪漢たちの前に現れた。
「やあ、いらっしゃい」
モートは銀の大鎌で三人の悪漢の首を瞬時に狩った。
三人の首は鮮血を上げこの暗い通路の壁にぶち当たった。
――――
「やはり、このところ14歳の少女ばかりが狙われていますね……それもこの少女の右の手首には、今度は傷や刺青ではなく。聖痕のような傷がありましたよ」
「ああ……」
困惑したオーゼムの声に、モートは無表情にこっくりと頷いた。
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