悪魔が教会生活を始めるのは何かおかしいだろうか

ああああ

文字の大きさ
上 下
11 / 13
第二章

天使を後ろから殴り倒すのは悪いことだろうか

しおりを挟む

 冬の少し肌寒い日の夕方。
 田舎なため土地が有り余っているということを、顕著に表している公園にて事件は起きた。

 真琴は、学校帰りに何故か公園で遊んでいるココとサンドラを発見する。
 無視するかとも考えたが、それを実行するよりも先にココに見つかってしまい、合流せざるを得なくなってしまった。

 二人は、どこから拾ってきたか分からないボールでドッジボールをしている最中であり、真琴はそれに不本意ながらも途中参加。
 見た目からは考えられないほどの速球を放つココとサンドラを相手に、必死で回避をし続ける。
 キャッチなどという考えさえ浮かばない。
 当たれば死ぬ。弾丸と認識は同じだった。

 幸い二人のコントロールはそこまで良いわけではない。
 内野のココ、外野のサンドラ、二人の猛攻を凌げているのもそのおかげだ。

 そして、真琴の足が疲労により動かなくなる頃。
 とどめと言わんばかりの一球を投げた瞬間――それは現れた。

「げっ、あんたは!」

 ココが昔のライバルと再開した時のようなセリフを放つ。
 ココの目線の先――つまり真琴の目の前には、一人の少女がいた。

「少年、大丈夫ですか?」

 すっぽりと手に収まっている、さっきまでとんでもないスピードで飛んでいたボールを、足元に置きながら少女は言う。

「あなたの目の前にいるのは、信じられないかもしれないけれど悪魔なのです。ボクがこいつを食い止めますから、その間に逃げてください」

「いや、それは知っているけど」

「――!? 知っている!? ど、どういう事なのです――」

「スキあり!」

 真琴を球から守った少女は、真琴の言葉に気を取られた刹那、後ろからココに殴り倒される。

 何故この少女がココとサンドラの正体を知っているのか、あの弾丸ボールを受け止められるほどの能力を持っているのか、分からない事は多々あったが、そんな考えもすぐさま吹き飛ぶ。

「敵に背を向けるとは、焼きが回りましたね、リエル」

「ななな、何やってんだ!?」

 見ず知らずの――しかも自分を助けようとしてくれた少女が殴り倒された時の衝撃は、とてもではないが形容する事はできない。

 リエル――という真琴からしたら本当に聞き覚えのない名前だが、ココの言い方や行動的には馴染み深そうだ。

「ああ、気にしないでください、ただの知り合いですから。身ぐるみ剥がして、そこら辺に置いときましょう」

「気にするよ! しかも何で更に追い打ちをかけるんだ。隣人愛はどうした隣人愛は」

 平然と恐ろしい事を口にするココ。
 サンドラも頷いている所から、ココと同意見なようだ。
 二人とリエルの間に何があったのか、それは真琴にはまだ分からないが、このまま放置というわけにはいかないだろう。

「……完全に気絶してるよ。……ココ、家まで運んでやってくれ。お前にはその義務があるぞ」

「……えー」

 露骨に嫌そうな顔をするココ。
 このような顔をしたのは、罰として晩飯抜きの刑を処した時以来だ。

 この公園から家までは意外と近い。
 かといって、非力を代表するかのような真琴に、人を背負って歩き続ける程の体力は無かった。
 それにリエルという少女からしても、男に背負われるよりは、同じ年頃の女の子に背負われる方が良いだろう。
 決して真琴が面倒くさいと思ったからではない。

「ドラちゃん、このまま帰るぞ。……何があったのは後から聞くから、とりあえず看護してやろう」

「まことは優しいなの。愛に溢れてるなの」

(この子随分と嫌われてるんだな……)

 嫌そうに背負うココのスピードに合わせ、ゆっくりと家へと向かう。
 そこには奇妙な集団ができていた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

百合系サキュバスにモテてしまっていると言う話

釧路太郎
キャラ文芸
名門零楼館高校はもともと女子高であったのだが、様々な要因で共学になって数年が経つ。 文武両道を掲げる零楼館高校はスポーツ分野だけではなく進学実績も全国レベルで見ても上位に食い込んでいるのであった。 そんな零楼館高校の歴史において今まで誰一人として選ばれたことのない“特別指名推薦”に選ばれたのが工藤珠希なのである。 工藤珠希は身長こそ平均を超えていたが、運動や学力はいたって平均クラスであり性格の良さはあるものの特筆すべき才能も無いように見られていた。 むしろ、彼女の幼馴染である工藤太郎は様々な部活の助っ人として活躍し、中学生でありながら様々な競技のプロ団体からスカウトが来るほどであった。更に、学力面においても優秀であり国内のみならず海外への進学も不可能ではないと言われるほどであった。 “特別指名推薦”の話が学校に来た時は誰もが相手を間違えているのではないかと疑ったほどであったが、零楼館高校関係者は工藤珠希で間違いないという。 工藤珠希と工藤太郎は血縁関係はなく、複雑な家庭環境であった工藤太郎が幼いころに両親を亡くしたこともあって彼は工藤家の養子として迎えられていた。 兄妹同然に育った二人ではあったが、お互いが相手の事を守ろうとする良き関係であり、恋人ではないがそれ以上に信頼しあっている。二人の関係性は苗字が同じという事もあって夫婦と揶揄されることも多々あったのだ。 工藤太郎は県外にあるスポーツ名門校からの推薦も来ていてほぼ内定していたのだが、工藤珠希が零楼館高校に入学することを決めたことを受けて彼も零楼館高校を受験することとなった。 スポーツ分野でも名をはせている零楼館高校に工藤太郎が入学すること自体は何の違和感もないのだが、本来入学する予定であった高校関係者は落胆の声をあげていたのだ。だが、彼の出自も相まって彼の意志を否定する者は誰もいなかったのである。 二人が入学する零楼館高校には外に出ていない秘密があるのだ。 零楼館高校に通う生徒のみならず、教員職員運営者の多くがサキュバスでありそのサキュバスも一般的に知られているサキュバスと違い女性を対象とした変異種なのである。 かつては“秘密の花園”と呼ばれた零楼館女子高等学校もそういった意味を持っていたのだった。 ちなみに、工藤珠希は工藤太郎の事を好きなのだが、それは誰にも言えない秘密なのである。 この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」「ノベルバ」「ノベルピア」にも掲載しております。

後宮出入りの女商人 四神国の妃と消えた護符

washusatomi
キャラ文芸
西域の女商人白蘭は、董王朝の皇太后の護符の行方を追う。皇帝に自分の有能さを認めさせ、後宮出入りの女商人として生きていくために――。 そして奮闘する白蘭は、無骨な禁軍将軍と心を通わせるようになり……。

高校生なのに娘ができちゃった!?

まったりさん
キャラ文芸
不思議な桜が咲く島に住む主人公のもとに、主人公の娘と名乗る妙な女が現われた。その女のせいで主人公の生活はめちゃくちゃ、最初は最悪だったが、段々と主人公の気持ちが変わっていって…!? そうして、紅葉が桜に変わる頃、物語の幕は閉じる。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

大正ロマン恋物語 ~将校様とサトリな私のお試し婚~ その後

菱沼あゆ
キャラ文芸
咲子と行正、その後のお話です(⌒▽⌒)

髪を切った俺が芸能界デビューした結果がコチラです。

昼寝部
キャラ文芸
 妹の策略で『読者モデル』の表紙を飾った主人公が、昔諦めた夢を叶えるため、髪を切って芸能界で頑張るお話。

処理中です...