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第二章
天使を後ろから殴り倒すのは悪いことだろうか
しおりを挟む冬の少し肌寒い日の夕方。
田舎なため土地が有り余っているということを、顕著に表している公園にて事件は起きた。
真琴は、学校帰りに何故か公園で遊んでいるココとサンドラを発見する。
無視するかとも考えたが、それを実行するよりも先にココに見つかってしまい、合流せざるを得なくなってしまった。
二人は、どこから拾ってきたか分からないボールでドッジボールをしている最中であり、真琴はそれに不本意ながらも途中参加。
見た目からは考えられないほどの速球を放つココとサンドラを相手に、必死で回避をし続ける。
キャッチなどという考えさえ浮かばない。
当たれば死ぬ。弾丸と認識は同じだった。
幸い二人のコントロールはそこまで良いわけではない。
内野のココ、外野のサンドラ、二人の猛攻を凌げているのもそのおかげだ。
そして、真琴の足が疲労により動かなくなる頃。
とどめと言わんばかりの一球を投げた瞬間――それは現れた。
「げっ、あんたは!」
ココが昔のライバルと再開した時のようなセリフを放つ。
ココの目線の先――つまり真琴の目の前には、一人の少女がいた。
「少年、大丈夫ですか?」
すっぽりと手に収まっている、さっきまでとんでもないスピードで飛んでいたボールを、足元に置きながら少女は言う。
「あなたの目の前にいるのは、信じられないかもしれないけれど悪魔なのです。ボクがこいつを食い止めますから、その間に逃げてください」
「いや、それは知っているけど」
「――!? 知っている!? ど、どういう事なのです――」
「スキあり!」
真琴を球から守った少女は、真琴の言葉に気を取られた刹那、後ろからココに殴り倒される。
何故この少女がココとサンドラの正体を知っているのか、あの弾丸ボールを受け止められるほどの能力を持っているのか、分からない事は多々あったが、そんな考えもすぐさま吹き飛ぶ。
「敵に背を向けるとは、焼きが回りましたね、リエル」
「ななな、何やってんだ!?」
見ず知らずの――しかも自分を助けようとしてくれた少女が殴り倒された時の衝撃は、とてもではないが形容する事はできない。
リエル――という真琴からしたら本当に聞き覚えのない名前だが、ココの言い方や行動的には馴染み深そうだ。
「ああ、気にしないでください、ただの知り合いですから。身ぐるみ剥がして、そこら辺に置いときましょう」
「気にするよ! しかも何で更に追い打ちをかけるんだ。隣人愛はどうした隣人愛は」
平然と恐ろしい事を口にするココ。
サンドラも頷いている所から、ココと同意見なようだ。
二人とリエルの間に何があったのか、それは真琴にはまだ分からないが、このまま放置というわけにはいかないだろう。
「……完全に気絶してるよ。……ココ、家まで運んでやってくれ。お前にはその義務があるぞ」
「……えー」
露骨に嫌そうな顔をするココ。
このような顔をしたのは、罰として晩飯抜きの刑を処した時以来だ。
この公園から家までは意外と近い。
かといって、非力を代表するかのような真琴に、人を背負って歩き続ける程の体力は無かった。
それにリエルという少女からしても、男に背負われるよりは、同じ年頃の女の子に背負われる方が良いだろう。
決して真琴が面倒くさいと思ったからではない。
「ドラちゃん、このまま帰るぞ。……何があったのは後から聞くから、とりあえず看護してやろう」
「まことは優しいなの。愛に溢れてるなの」
(この子随分と嫌われてるんだな……)
嫌そうに背負うココのスピードに合わせ、ゆっくりと家へと向かう。
そこには奇妙な集団ができていた。
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