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第三章 アルフス様に作られたゴーレムの無念を晴らす戦い
悪い朝
しおりを挟むギールの一日は、勿論だがベッドから目覚めることから始まった。
太陽が窓から差し込み、清々しい朝というのを言葉なしで伝えてくる。
そんな太陽とは裏腹に、ギールの心中は清々しくはなかった。そして穏やかでもなかった。
「…………」
ギールは頭を悩ませる。
朝は頭が働きやすいから、考える時間をとっている――という訳ではない。
正確には、朝だとしても考えずにはいられないというのが正しいだろう。
何時だって考えている。一日中考えている。
と言うのも、最近少し遠くにある小さい村から、有り得ないほどの魔力反応があったのだ。
歯牙にもかけてなかった村から――である。
最初は何かの間違いかと思ったが、それを疑うというのは、自分自身の能力を疑うということだ。
それなら話は早い。
自分の能力に絶対の自信があったギールは、その魔力反応を確かめるために行動したのだが――未だに結果は分かっていない。
ギールの下僕たちが村に着いた時には、もうその魔力反応が消えていたのだ。
しかし、あの魔力反応は間違いでなかったと証明できるほどの事実がある。
それは、馬鹿げた強さをもったゴーレムが村に存在していたという事からだ。
間違いなく、プロメシル王国が戦ってきた中で一番の強敵だった。
何人の下僕が殺されたことだろう。
下僕たちの死体は魔法で一斉に片付けたが、その数は数え切れない。
比喩ではなく、数えている間に精神が崩壊してしまうからだ。
ゴーレムには何とか勝利を収めたものの、かなりの損害を出してしまった。
しかも、あの魔力反応はゴーレムのものではない。
元から居たものとも考えずらいので、恐らく連れてこられたもの、もしくは召喚されたものだろう。
かなりの確率で、あのゴーレム以上の強敵がいるという事だ。
考えるだけでも恐ろしい。
では、その正体不明の強敵に対して、どうするべきかという話になる。
勿論プロメシル王国の知者たちとも、十分に話し合ったのだが、納得のいく答は出ていない。
それどころか、様々な意見が入り交じり、手のつけられない状態になっている。
その中でも一番有力な意見は、相手の出方を見るというものだ。
わざわざ自分たちから、ちょっかいを出す必要はないということである。
ギールも概ねその意見に異論はないのだが、後手に回ってしまうのを考えると、複雑な心境だ。
相手の強さを考えに入れると、もし戦いで先手を打たれた場合、どうしても勝つのは厳しいだろう。
つまり、相手の出方を見るというのは、ある種ギャンブルのようなものだ。
ギールとしては、不安要素を残したままでいるのは好みではないが、他にいい代案が出ないので仕方がない。
「ギール様! 大変でございます!」
部屋の扉がすごい勢いで開かれる。
ギールの思考は即座に、ノックもなしに入ってくる愚か者をどう処分するかへと切り替わったが、何やら様子がおかしいことに気付く。
「何だ? 騒々しい」
「せ、宣戦布告の申し出が……」
「……どこからだ?」
「ファルジック国からです!」
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