上 下
41 / 79
第三章 アルフス様に作られたゴーレムの無念を晴らす戦い

悪い朝

しおりを挟む

 ギールの一日は、勿論だがベッドから目覚めることから始まった。
 太陽が窓から差し込み、清々しい朝というのを言葉なしで伝えてくる。

 そんな太陽とは裏腹に、ギールの心中は清々しくはなかった。そして穏やかでもなかった。

「…………」

 ギールは頭を悩ませる。
 朝は頭が働きやすいから、考える時間をとっている――という訳ではない。

 正確には、朝だとしても考えずにはいられないというのが正しいだろう。
 何時だって考えている。一日中考えている。

 と言うのも、最近少し遠くにある小さい村から、有り得ないほどの魔力反応があったのだ。

 歯牙にもかけてなかった村から――である。
 最初は何かの間違いかと思ったが、それを疑うというのは、自分自身の能力を疑うということだ。

 それなら話は早い。
 自分の能力に絶対の自信があったギールは、その魔力反応を確かめるために行動したのだが――未だに結果は分かっていない。

 ギールの下僕たちが村に着いた時には、もうその魔力反応が消えていたのだ。

 しかし、あの魔力反応は間違いでなかったと証明できるほどの事実がある。
 それは、馬鹿げた強さをもったゴーレムが村に存在していたという事からだ。

 間違いなく、プロメシル王国が戦ってきた中で一番の強敵だった。
 何人の下僕が殺されたことだろう。
 下僕たちの死体は魔法で一斉に片付けたが、その数は数え切れない。
 比喩ではなく、数えている間に精神が崩壊してしまうからだ。

 ゴーレムには何とか勝利を収めたものの、かなりの損害を出してしまった。

 しかも、あの魔力反応はゴーレムのものではない。
 元から居たものとも考えずらいので、恐らく連れてこられたもの、もしくは召喚されたものだろう。

 かなりの確率で、あのゴーレム以上の強敵がいるという事だ。
 考えるだけでも恐ろしい。

 では、その正体不明の強敵に対して、どうするべきかという話になる。
 勿論プロメシル王国の知者たちとも、十分に話し合ったのだが、納得のいく答は出ていない。
 それどころか、様々な意見が入り交じり、手のつけられない状態になっている。

 その中でも一番有力な意見は、相手の出方を見るというものだ。
 わざわざ自分たちから、ちょっかいを出す必要はないということである。

 ギールも概ねその意見に異論はないのだが、後手に回ってしまうのを考えると、複雑な心境だ。

 相手の強さを考えに入れると、もし戦いで先手を打たれた場合、どうしても勝つのは厳しいだろう。
 つまり、相手の出方を見るというのは、ある種ギャンブルのようなものだ。

 ギールとしては、不安要素を残したままでいるのは好みではないが、他にいい代案が出ないので仕方がない。


「ギール様! 大変でございます!」

 部屋の扉がすごい勢いで開かれる。
 ギールの思考は即座に、ノックもなしに入ってくる愚か者をどう処分するかへと切り替わったが、何やら様子がおかしいことに気付く。

「何だ? 騒々しい」

「せ、宣戦布告の申し出が……」

「……どこからだ?」

「ファルジック国からです!」

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

愚かな父にサヨナラと《完結》

アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」 父の言葉は最後の一線を越えてしまった。 その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・ 悲劇の本当の始まりはもっと昔から。 言えることはただひとつ 私の幸せに貴方はいりません ✈他社にも同時公開

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~

くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】 その攻撃、収納する――――ッ!  【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。  理由は、マジックバッグを手に入れたから。  マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。  これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

異世界転生したらよくわからない騎士の家に生まれたので、とりあえず死なないように気をつけていたら無双してしまった件。

星の国のマジシャン
ファンタジー
 引きこもりニート、40歳の俺が、皇帝に騎士として支える分家の貴族に転生。  そして魔法剣術学校の剣術科に通うことなるが、そこには波瀾万丈な物語が生まれる程の過酷な「必須科目」の数々が。  本家VS分家の「決闘」や、卒業と命を懸け必死で戦い抜く「魔物サバイバル」、さらには40年の弱男人生で味わったことのない甘酸っぱい青春群像劇やモテ期も…。  この世界を動かす、最大の敵にご注目ください!

スキル喰らい(スキルイーター)がヤバすぎた 他人のスキルを食らって底辺から最強に駆け上がる

けんたん
ファンタジー
レイ・ユーグナイト 貴族の三男で産まれたおれは、12の成人の儀を受けたら家を出ないと行けなかった だが俺には誰にも言ってない秘密があった 前世の記憶があることだ  俺は10才になったら現代知識と貴族の子供が受ける継承の義で受け継ぐであろうスキルでスローライフの夢をみる  だが本来受け継ぐであろう親のスキルを何一つ受け継ぐことなく能無しとされひどい扱いを受けることになる だが実はスキルは受け継がなかったが俺にだけ見えるユニークスキル スキル喰らいで俺は密かに強くなり 俺に対してひどい扱いをしたやつを見返すことを心に誓った

処理中です...