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第三章 アルフス様に作られたゴーレムの無念を晴らす戦い
尋問
しおりを挟む「おい、バルカってジジイは何か喋ったか?」
「あ? 全然喋んねえよ。こりゃいくら待っても無駄だぜ」
「マジかよ。めんどくせえな」
雨が降る日。じめじめとした牢獄から、二匹の魔物が喋りながら出てくる。
二匹から読み取れる呆れたような表情。
恐らく何度も牢獄を往復しているのだろう。
「なあ、本当にあんな村に何か価値があるってのか?」
「あ? 聞かされてねえのかよ。あの村自体に価値があるんじゃなくて、あの村に有り得ないほどの魔力反応があったって話だろ?」
「ああ、そう言えばギール様がそう仰ってたな」
片方の魔物が納得したようだ。
ちなみに理由を聞かされていないというのは有り得ない。事前に全員へ説明されていたはずだからだ。
「おい、何か情報は落ちたのか?」
突然、魔物二人の会話に割り込むように、後方から声がした。
聞いたことのない声。
魔物二人は睨みつけるように振り向く。
「「ギ、ギール様!?」」
その声の正体は、ギールと呼ばれる魔物だ。
自分たちとは比べ物にならないほどの巨体。
威圧だけでもやられてしまいそうなほどだ。
魔物二人は、何か恐ろしいものを見たかのように驚く。声が裏返り、何とも不気味な声になってしまっている。
しかしそれも無理はない。
ギールとはプロメシル王国を統治する国王だ。
つまりは、自分たちの国王である。
本来なら会うことはおろか、見ることすらできないほど階級の差がある。
プロメシル王国は、多くの種族の魔物で構成されている。
普通は国内に十種族もあれば、それは多いと言えるだろう。しかし、プロメシル王国はそれどころではない。
多すぎて数え切れないほどの種族で成り立っているのだ。
故に混乱が起きやすい――はずなのだが、実際はそんなことはない。
国王であるギールの化物じみた統治により、問題は最小限といっても良いほどに抑えられている。
プロメシル王国の中で、唯一と言っていいほど代役のきかない人物だ。
それほどの御方が一体何の御用なのだろうか?
と、魔物二人は考えたが、今はそれどころではないと気付く。
「申し訳ありません! 今のところ情報を聞き出すまでには至っておりません! ここまで粘られるのは想定外でした!」
「……フン、まあ期待はしていないさ。なるべく早く聞き出せるように尽力しろ。それと、何があっても殺すなよ。聞きたいことは山ほどあるからな」
「かしこまりました!」
魔物二人は、ほぼ直角に腰を曲げ頭を下げる。
骨格上かなり――と言うか、不可能ともいえる姿勢なのだが、それを可能にするくらいに気持ちが表れていた。
ギールはそれを目で確認することもせず、踵を返す。
多忙なため、こんな所で時間を潰している余裕などないのだろう。
ギールの姿はすぐに見えなくなった。
「おいおい、俺は初めてギール様に会ったぜ……」
「あ? 何言ってんだ、俺もだぞ……」
「これって自慢していいのか?」
「あ? なわけねえだろ。ギール様は不機嫌だったじゃねえか。本当なら自害させられてもおかしくねえよ」
「そ、そうだな。すまねえ」
魔物二人は呆然と立ち尽くしている。
動かないのではない、動けないのだ。
両足がわなわなと震えているのが、見なくても容易に確認できた。
会って少し会話しただけでこの感覚。
もし、あれ以上に深く関わったらどうなってしまうのだろうか。
自分たちとの立場のがハッキリと分からされる。
「とりあえずよお、早いとこ聞き出さねえとヤバいぜ……」
「ああ、そうだな……。でもよお、どうすればいいんだよ」
「知らねえよ。殺しちゃあなんねえから、あんまり手荒い事はできねえ」
「おいおい、そんなんじゃあ永遠に無理だぜ。あんな頑固な男見たことねえよ」
「そんなこと言ってても何も始まんねえよ! さっさと行くぞ!」
「分かったよ! 何だってんだ!」
気合を入れ直した魔物二人は、もう一度じめじめとした牢獄の中へと戻る。
二人はバルカが情報を吐いてくれることを、半ば祈るような心境だった。
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