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第六章

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「どう? 疲れた?」

「はい……」

「そう。メイドは大変な仕事。しっかりと休んだ方がいい」

 ソフィアが部屋から出ていったあと。
 サンは疲れ果てたようにぐったりしていた。

「今日はククリもここで寝る。いい?」

「は、はい。でも、この部屋……ベッドが一つしか……」

「ククリは構わない。サンは嫌?」

「い、いえ! 喜んで!」

 サンはブンブンと首を横に振る。
 決して誤解をされないように。
 ただただ必死だった。

「うん。このベッドは良いベッド。ふかふか」

 ククリは、真面目そうな雰囲気から豹変して、ボフッとベッドに飛び込んだ。
 人間の国にあったベッドとは違って、かなり高品質だとサンでも理解できる。

 サンも、ベッドに飛び込みたいという気持ちを必死に押さえつけた。

「……やっぱりちょっと狭いですね、えへへ」

「たまにはこういうのも良いと思う。ソフィア様以外の人は、ククリも初めて」

 一人用のベッドでは、残念ながら二人を包み込むには狭かった。
 分かり切った結果だったが、少しだけ緊張してしまう。

「たまには面白いかもしれませ――あっ、ごめんな――」

「――きゃっ」

 サンが不意に動かした手が。
 不幸にもククリの脇腹にヒットしてしまった。

 ククリもこれには準備していなかったようで、女の子らしい声が意図せず出てしまう。

「サン。大胆」

「ち、ちち違いますって……!」

「ソフィア様でもいきなりそんなことはしなかった。意外と狼なのかもしれない」

「だ、だから違いますって!」

 考えうる中で、最も嫌な誤解のされかたをしてしまったサン。
 本来がそういう性格でないため、悔しさは数倍だ。

「冗談。ただ、ソフィア様ならスイッチが入ってたかもしれない。気をつけて」

「ひっ……危なかった……」

 どうやら誤解は解けていたらしい。
 ククリに泳がされていたようで、遊び心のある一面があらわになる。

 嫌な遊び心だった。

「でも、サンは二人で寝たような経験はない? ウィル様とかと」

「そ、そそそそそんなことあるわけないじゃないですか! ウィルさんにも失礼ですって!」

「そうなの?」

「そうですよ……奴隷だった時はまともな寝場所も用意されてなかったですし……」

 サンは白い肌を真っ赤に染めて否定する。
 なんの経験もないサンには、早すぎた話だったようで、布団を顔まで被ってしまった。

「サン。からかいすぎた。おやすみ」

「お、おやすみなさい……です」

「……すーすー」

「はやっ!」

 流石にやりすぎたと反省したククリの一言。

 ククリが眠りについたのは、その十秒後であった。
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