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第三章

戦いの火蓋

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「――来たのですよ」

「え?」

 ユキはいち早く現れたドラゴンを発見する。
 何度見ても恐ろしい容貌だった。

「人間、生贄の準備は出来たか? ――ん? 人数が多いな」

 ドラゴンも流石に異変に気付いたらしい。
 一人であるはずの生贄が、五人に増えているのだ。

「ド、ドラゴン様! 生贄はボクだけです! この人たちは関係ないのです!」

「フン、そんな美味そうな人間を見せられて、違いますで納得すると思うか?」

「お、お願いします! ボクはどうなっても構いませんからっ!」

 ユキは深々と頭を下げてドラゴンに許しを乞う。
 ウィルたちには今日出会ったばかりだが、体が勝手に助けようとしていた。

 ウィルたちがユキを助けようとしたのと同じように、ユキもウィルたちを助けようと動いたのだ。

「おい、儂らを守ろうとする必要はないぞ。お主は自分の身だけ心配しておれ」


「なんだお前は? んん? お前人間じゃないな」

 ドラゴンはエルネから発せられるオーラに気が付いた。
 明らかに人間のものとは違う、
 むしろ、やっと気が付いたと言うべきだろう。

「我を釣り出したつもりか? 大人しく餌になっておれば良いものを。覚悟しておけよ、人間?」

「ひっ……」

「心配するな、ユキちゃん」

 ユキはドラゴンが凄むと、ビクッと震える。
 本能的な行動だ。
 ウィルがユキの立場なら、逃げ出してもおかしくない。

「フフ、お前は人間だな。〈攻撃魔法・ライトニング〉」

 ドラゴンは、ウィルが人間であることを見抜くと、ユキもろとも攻撃した。
 その鋭い雷光は、ウィルが持っていた傘にヒットする。

「――なに!?」

 その傘はドラゴンの雷を完璧に受け止めた。
 少し手がビリビリしたくらいである。

「なんだその傘は!? 我の雷を受け止めたというのか!?」


「マイマスター、一応私の後ろに隠れておいてください。二度目は成功するか分かりませんから」

「ユキちゃん、君も後ろに!」

「は、はいなのです!」

 ドラゴンは動けずにいた。
 自分の雷を食らって生きていた者など、これまでに存在しない。

 ウィルが自分より劣っているのは分かり切っているが、それでも動くことはできなかった。

「……フン、まぁいい。雷など使わずに食いちぎれば良いだけだからな」

「おいおい、そんなことさせるわけないじゃろが」

「……なら貴様から消し去ってやろう。我からすれば人間と変わらぬからな」

「アッハハ! 人間と同じに見られるとは初めてじゃのう。ドラゴンなど家畜としてしか見ていなかったが、面白いジョークも言えるのじゃな」

「……ほざけ」

 ついに、戦いの幕は切って落とされた。
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