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一章

壱.突

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最後に見たのは、眼前にせまりくるトラック

甲高いブレーキ音、人々の叫び声……



朦朧もうろうとする意識の中、ファーストキスはコンクリートな上、自分の血の味だな…と私は呑気にもそう思ったのだった

























「小娘。これは些か度が過ぎるぞ」




口から短い息が漏れた。


ひりひりと痛む頬。目の前の女を庇うように立つケモミミのイケメン。




……ん?ケモミミ???



「え、コスプレ……?」

っていうか私、何で生きて……

ついさっき、確かにトラックに跳ねられて私は死んだはず。ペタペタと自分の体と顔を触る。


ショートの私にはないはずの漆黒のストレートロング。手触りでわかるほどの整った顔。170近くある身長。

 


つまり

恐らく、多分

限りなく正解に近いと思われる、もしかしたらの仮説




これこそまさに、


























「転生したあぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?!?」


叫ばざるを得ない現実を突きつけられた。


「……貴様、ふざけておるのか」

一瞬動揺した男が、手に持つ扇子を振りかざし、私に降ろそうとする。

「こ、紅刃様、これ以上はおやめ下さいっ。リリデア様にも理由が……」

それを、女が慌てた様子で止めに入る。



「ルゥラ、此奴は其方に手を出したのだぞ」

「それでも、私は紅刃様が誰かを傷つけるところなんて見たくありません……!!」


「……っ!ルゥラ、いや、しかし……」

「私なんかのために、そんな事しなくっていいんです」 



「私なんか・・・など__」「あぁもう、うざってぇ!!!さっさとハイって言えってんだよ!!!!!」


ボゴッ

ものすごく鈍い音がなった

「あ、やべ……」

明らかに頭蓋骨が割れた音だ。

突如豹変した美女がケモミミ男の頭蓋骨をかち割った音だ





目の前の光景についていけない私は、困惑するしかない

あれ、この2人、ついさっきまでイチャついてたよな……?




「えっと、紅刃さ~ん?……生きてる?」

転生してキョドってる私をフル無視して、女は安否確認を始める



「も、問題ない……ぞ。ヒーラー……だからな」

よろよろと起き上がるケモミミ男

「いや良かったー!!やべー!!!今度こそ本当に死んだかと思ったぁぁぁぁ!!!!」

ほっとする女。









「……えーっと、ゴホン。あの、私、空気……??」

そこに、おずおずお私は割って入る


「「あ」」

2人の声が重なった

「あ……?」

これ、完全に忘れてた時の"あ"でしょ



「んんんん……。やっぱ乙女ゲーって難しいわ……」
「いやはや……」

頭を抱える2人



「あのー、その、つまり、これ、ゲームの世界なんだ。乙女ゲー」

「我らはもとは冒険者育成ゲームのキャラクターじゃが、転生、とやらをしてしまっての」

「キャッキャウフフな乙女ゲームの展開を繰り広げるハメになってるんだよ……」

「其方も転生者なのであろう?先程叫んでおったのをみると」

「記憶がさっき戻ったみたいだな……。お前は元々、私らと同じパーティーの戦乙女ワルキューレだったろ?」







……え、いや違いますけど


一般市民を27年間やっておりましたけれども








うそ、これってもしかしてつまり……
















































冒険者育成ゲーム→現実の世界→乙女ゲーの世界って感じで、私、2度目の転生ってこと!?!?!?
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