上 下
14 / 30
第一章【それぞれの冒険】

case7❲アストの能力❳

しおりを挟む
擬態建物虫ビルディックは真っ黒で大きな、体長三十メートルくらいのお城に化けている虫型のモンスターで、城の入口は牙が剥き出し長い舌を自在に動かしている。城を支える場所からまるで百足ムカデのように無数の触手が見え、いつの間にか窓の全部が目に変わっていた。わたし、キャルはマジでキモいの無理なんだよー!

アストはいつも愛用の剣と銃を腰に提げているけど、今はは右手に銃、左手に剣をビルディックに向けて構えている。

アストの職業クラスは銃剣士であり、アストの能力は……

「ギャルルリャァァ!!」

突然、洞窟内にビルディックの雄叫びが響き渡った。わたし達は咄嗟に耳を塞ぐ。

ビルディックの舌がアストに向かって攻撃を開始する。アストは避けるとごろか銃を何発と発泡しながら、ビルディックへと全身する。ビルディックの舌は銃弾を浴びながらもアストへと威嚇する。

更にアストは舌だけでなく、窓の目や百足のような触手へと発泡し、ビルディックは少しずつ後退していく。致命傷はないけど、少しずつビルディックの体力を削り、アストは襲って来た舌をかわして、舌の上を疾走した。

「ボクはー♪強ーい、強くてーたくまーしいー♪」

戦闘中なのにアストはヘンテコ歌を熱唱しながら、剣を振り上げ、ビルディックを一刀両断する。

「マジでアイツひとりでやっつけんじゃねぇ?」

ピットが苦笑いしながら答える。

「いや、あの巨大な建物害虫は意外と頑丈だ。クリンヒットがない」

「確かにね」

パラガスの発言にエリアが頷く。

「んん……、アストくんの能力なら、大丈夫だよ」

ミレアが呟くとわたしを含めたみんなが頷いた。

アストの能力、それは……

「ボクの剣と銃!♪、んーん、はっ!♪」

アストが持つ剣と銃がいきなり空中で分解しだした。更に剣と銃がひとつに交わり、ひとつの物体を造る。

見た目はライフル銃でありながら、鞘にトリガー、鋼鉄の剣先が出来上がり、ひとつの銃剣へと変わったの。

銃剣アスタロトーー。アストはそう呼んでいるんだ。

そしてアストの能力は【創造クリエーション】と言って物を想像して実現し、創造する能力なんだ。なんかちょっとややこしいけど……

「こうなってしまったら、お城怪獣おしまい!はい終了!はいお陀仏!んーはっ♪」

アストのウザい発言に、ビルディックは怒り狂い舌を右往左往に攻撃して来た。

アストは巧みに避け、ビルディックの塔のような頭の天辺に駆け上がり、銃剣アスタロトを振り上げた。

「トリガーブレイバー!!!!」

アストの必殺技がビルディックの脳天に直撃する。剣先がビルディックに当たると同時にトリガーを弾くと同時に凄まじい爆発がおき、ビルディックはバラバラに散らばり、即死した。

わたし以外のみんなは、また心のない拍手をし、アストを簡単に労う。

「なんか、心込もってない!ボクの瞬殺勝利をもっとあがめろ!たたえろー!」

わたし達に近づくアストが膨れっ面を見せる。

「ねぇキャル、ボクのこと、惚れ直した?ボクは昨日のボクよりもキャルが好きだよ」

「もう!」

ちゃらんぽらんなのか真剣なのか、アストの告白にわたしは膨れっ面を見せた。

アストって軽いのか、真面目なのか、それともただのバカだけなのか……、やっぱりただのバカだね。

「うお?なんかキモモンスターの中からなんか出て来た!」

いきなりピットがビルディックの亡骸の方へと指をさした。

「なんかちっこいのがいる!」

更にパラガスが答える。

それは黒い物体でビルディックの粘液まみれになっていたけど、よくみればわたし達の身長の半分くらいしかない。

「なに、ちょっと象の赤ちゃん?」

それは黒い子供の象のように長い鼻、顔を隠すくらいの耳、四足でゆっくり、まるで産まれたばかりの赤ちゃん象が立ち上がる感じ、象の赤ちゃんの影だった。

「可愛い~!」

わたしが粘液まみれとはいえ、象の赤ちゃんを見て微笑んだ。

「んん……、久しぶり、キーカンバー」

ミレアが唐突に象に向かって言い、わたし達全員がミレアの顔へと集中する。

「……うん、久しぶり、ミレア」

「「「「「エエエエ~っ!!!!」」」」」

いきなり象の赤ちゃんが喋りだし、わたし達は鳩が豆鉄砲を食らったように驚きの声をあげた。

よく見れば、子象の顔は本来語られる一般的な龍の顔であり、尻尾も龍の尻尾だった。

この子象みたいな小さいのが、あの龍地球最強と言われる十龍の一頭、闇龍キーカンバー?

闇龍って言うからには、もっと大きくて凶悪な龍を想像していたんだけど……

「どうしてキーカンバーはぬるぬるしてるの?」

ミレアが無表情で質問する。

「あのね、笑わないでね」

キーカンバーが何故か照れた仕草でミレアに言うと、ミレアは無言で頷いた。

「ぼくね、転生したらすぐに、お城お化けに食べられちゃったんだ、エヘヘ……」

「「「「「エエエエ~っ!!!!!」」」」」

ミレア以外のわたし達はキーカンバーの発言にただビックリした。








アスト・シーア  16歳。

職業は高校二年生兼銃剣士

能力は創造能力の持ち主。物と物を手にし、想像した物を思った通りに創造する能力を使う。ただし、手にした物限定であり、想像が複雑だと創造出来ない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。

大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった! でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、 他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう! 主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!? はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!? いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。 色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。 *** 作品について *** この作品は、真面目なチート物ではありません。 コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております 重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、 この作品をスルーして下さい。 *カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

チート幼女とSSSランク冒険者

紅 蓮也
ファンタジー
【更新休止中】 三十歳の誕生日に通り魔に刺され人生を終えた小鳥遊葵が 過去にも失敗しまくりの神様から異世界転生を頼まれる。 神様は自分が長々と語っていたからなのに、ある程度は魔法が使える体にしとく、無限収納もあげるといい、時間があまり無いからさっさと転生しちゃおっかと言いだし、転生のため光に包まれ意識が無くなる直前、神様から不安を感じさせる言葉が聞こえたが、どうする事もできない私はそのまま転生された。 目を開けると日本人の男女の顔があった。 転生から四年がたったある日、神様が現れ、異世界じゃなくて地球に転生させちゃったと・・・ 他の人を新たに異世界に転生させるのは無理だからと本来行くはずだった異世界に転移することに・・・ 転移するとそこは森の中でした。見たこともない魔獣に襲われているところを冒険者に助けられる。 そして転移により家族がいない葵は、冒険者になり助けてくれた冒険者たちと冒険したり、しなかったりする物語 ※この作品は小説家になろう様、カクヨム様、ノベルバ様、エブリスタ様でも掲載しています。

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

またね。次ね。今度ね。聞き飽きました。お断りです。

朝山みどり
ファンタジー
ミシガン伯爵家のリリーは、いつも後回しにされていた。転んで怪我をしても、熱を出しても誰もなにもしてくれない。わたしは家族じゃないんだとリリーは思っていた。 婚約者こそいるけど、相手も自分と同じ境遇の侯爵家の二男。だから、リリーは彼と家族を作りたいと願っていた。 だけど、彼は妹のアナベルとの結婚を望み、婚約は解消された。 リリーは失望に負けずに自身の才能を武器に道を切り開いて行った。 「なろう」「カクヨム」に投稿しています。

ちっちゃい仲間とのんびりスケッチライフ!

ミドリノミコト
ファンタジー
魔獣のスケッチは楽しい。小さい頃から魔獣をスケッチすることが好きだったリッカは、生まれた頃から見守ってくれていた神獣、黄龍から4体の小さな赤ちゃん神獣を任せられることになった。数多くの有能なテイマーを輩出しているリッカの家は8歳で最初の契約を結ぶのだが、そこでまた一波乱。神獣と共に成長したリッカはアカデミーへ入学することになり、その非凡性を発揮していくことになる。そして、小さな仲間たちと共に、さまざまな魔獣との出会いの旅が始まるのだった。 ☆第12回ファンタジー小説大賞に参加してます!

処理中です...