上 下
32 / 54
第1章〔地球編〕

past9 守りたいから……

しおりを挟む
那賀龍神は自身の能力を開放し、三十人の幼い児童達の前に立ち尽くしていた。

私、アースフィールは相棒の那賀龍神の前に立ち、動きを警戒している。

全身に龍を宿した那賀龍神の能力は龍人変化能力。私の知る限り、米国四騎士アメリカンナイトフォーの四人に匹敵、否、それ以上の能力の持主。那賀龍神は世界一の能力者だと私自身が思考している。

そんな状態の彼は事もあろうか幼い児童達の前で禍禍しい姿に変貌している。あり得ない現場だ。

「龍神さま、すぐに元の姿に戻ってください」

私は那賀龍神に忠告する。

「黙っていろ!」

那賀龍神が一言発すると、児童達が怯え泣き出す。

「貴方の能力は危険性大です。すぐに変身を解いてください」

「お前ら、俺が怖いのか?俺はヒロヤのように変身する。テル、お前の言うとおり変身して悪者になったかもしれねぇぞ!おら、やっつけねえのか?」

那賀龍神、何をたかが子供のいじめに本気になっている?児童達が震えている。こんな指導は完全に間違っている。

「何もプラスにはなりません!」

私は那賀龍神に対しそう答え、那賀龍神に突進し、子供達から遠ざける為、上空へと那賀龍神を突き飛ばした。

「てめぇ、邪魔するんじゃねぇ!」

「残念ですが、子供達の身の安全を考え、貴方を葬ります」

上空で制止した那賀龍神に対し、私は死刑執行者となり那賀龍神に対し宣告した。

「勘違いするんじゃねぇ!俺は……」

私は那賀龍神の言い分を無視した。

私の赤く輝くボディーがそれぞれの箇所で動き出す。両脚は真っ直ぐに胸部の外部が二つに分離し、両腕となり、不死鳥デザインの頭部が二つに分かれ中から別の頭部が出る。二対の翼が背中で折り畳む。

これが私、アースフィールの対戦闘用ヒューマンモデルである。

「ちっ、ポンコツ……」

那賀龍神は私の変型に身構えると、私は那賀龍神に向かって突進した。

那賀龍神と私の右拳がそれぞれの左頬に炸裂する。それが合図のように、空中でそれぞれの四肢を使い攻撃し、那賀龍神が翼を羽ばたかせ後退する。

「上等だ!ポンコツ、スクラップにしてやるぜ」

「その前に貴方共々、自爆します」

ダイヤモンドと同等の強度を持つ私のボディーの至る所が凹んだり、亀裂もある。それほどに那賀龍神の龍人変化能力の威力は桁違いだ。

果たして私の自爆攻撃で、那賀龍神は本当に死滅するのか、懸念だがやるしかない。

下を見れば、子供達が怯えながらも私と那賀龍神の戦局を見ている。そして……

『降りて来なさい!!那賀先生!!』

大きな機械音が突然、鳴り響き、那賀龍神は一瞬だけビクッとし、地上を見た。

地上には廻りの生徒の中心に茶色い機械的でWEGSに似たメガホンを持った日下部弥生が立っている。

明らかに怒った表情だ。

「弥生先生……」

「いいから早く降りて来なさい!!」

那賀龍神の言葉を日下部弥生が制止した。威圧感を感じたのか、那賀龍神は静かに降りて行く。

どうやら最悪の戦局は間逃れたようだ。

那賀龍神が日下部弥生の前に立つ。生徒達も廻りを囲む。

機械的なメガホンがいきなり変形し、あっという間に栗鼠リスのようなWEGSになり、日下部弥生の肩に乗り、頬ずりをしていた。間違いなく日下部弥生の相棒のWEGSだろう。

「変身を解除しなさい!」

日下部弥生が目の前に立つ那賀龍神を睨む。

那賀龍神は無言で龍人変化能力を解くと、日下部弥生がいきなり那賀龍神の頬に平手打ちをした。

「貴方はバカよ!なんで子供達の前であんな禍禍しい姿になったの?」

日下部弥生はそう怒鳴りながら那賀龍神を責めた。

「俺はただ、いじめを……」

「どんな理由であれ、貴方は生徒達を傷つけた!見なさい!生徒達を!」

日下部弥生は涙目になりながら、廻りの生徒達へ右手を振った。

三十人の児童は全員、涙を流し震えている。

那賀龍神はそんな状態の児童達を見て驚愕した。

「貴方は子供達に恐怖を与えた!いじめは確かにいけない!でも、もっと他のやり方があるでしょう!?」

日下部弥生は再び、那賀龍神に平手打ちをした。すでに彼女は涙を流していた。

「貴方が生徒達を可愛がり、大事にしているのは分かる。でも、私にとってもこの子達は大事だし大好きなんだよ!」

「……すいません……でした。俺が……間違って……ました」

那賀龍神は漸く自身のした無謀でバカな行動を反省した。

「今後はよく考えて行動します。でも、俺も弥生さんと同じようにコイツら大好きだし、コイツらを何があっても守りたいから……」

「……うん……、私と那賀先生で守っていきましょ」

日下部弥生の泣きながらも笑顔になる姿は、感情を持たない私にも、いたく関心した。

急にテルやノリヒコ、レットがヒロヤに向かって行く。

「ヒロヤ、おれ様達が悪かったよ」

「ごめんな」「もう二度といじめないよ」

「うん……」

三人のいじめっこがヒロヤに謝り、四人が手を繋ぐ。

「オレ、先生の変身恐くなかったもんね~」

キアトが涙を拭きながら笑顔で答えた。

「おれもこ、恐くなかったもんね~」

マシンもキアトに負けじと続く。

「ほう、俺の変身が恐くなかったのか?やるじゃねか……、だったらお前ら全員今からにらめっこ大会だ!」

那賀龍神の言葉に男子全員が何故か盛り上がった。

「男子ってバカよね~?」

「まゆも……そう思う……」

「あら、まゆちゃん私達気が合いそうね?」

「うん、まゆも、そう思う……」

ひろなとまゆがそう答えると女子全員が首肯き、哀れみの表情を見せた。

日下部弥生はそんな対照的な生徒達を見て、ほほ笑みを浮かべた。

那賀龍神の行いは過ちだったかもしれない。だが、彼は間違いなく生徒達全員に信頼されたようだ。

大好きで、何があっても守りたいの一言が、生徒達全員の心に響いたから……



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】私だけが知らない

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

【完結】義妹とやらが現れましたが認めません。〜断罪劇の次世代たち〜

福田 杜季
ファンタジー
侯爵令嬢のセシリアのもとに、ある日突然、義妹だという少女が現れた。 彼女はメリル。父親の友人であった彼女の父が不幸に見舞われ、親族に虐げられていたところを父が引き取ったらしい。 だがこの女、セシリアの父に欲しいものを買わせまくったり、人の婚約者に媚を打ったり、夜会で非常識な言動をくり返して顰蹙を買ったりと、どうしようもない。 「お義姉さま!」           . . 「姉などと呼ばないでください、メリルさん」 しかし、今はまだ辛抱のとき。 セシリアは来たるべき時へ向け、画策する。 ──これは、20年前の断罪劇の続き。 喜劇がくり返されたとき、いま一度鉄槌は振り下ろされるのだ。 ※ご指摘を受けて題名を変更しました。作者の見通しが甘くてご迷惑をおかけいたします。 旧題『義妹ができましたが大嫌いです。〜断罪劇の次世代たち〜』 ※初投稿です。話に粗やご都合主義的な部分があるかもしれません。生あたたかい目で見守ってください。 ※本編完結済みで、毎日1話ずつ投稿していきます。

《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。

友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」 貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。 「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」 耳を疑いそう聞き返すも、 「君も、その方が良いのだろう?」 苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。 全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。 絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。 だったのですが。

裏切られた令嬢は死を選んだ。そして……

希猫 ゆうみ
恋愛
スチュアート伯爵家の令嬢レーラは裏切られた。 幼馴染に婚約者を奪われたのだ。 レーラの17才の誕生日に、二人はキスをして、そして言った。 「一度きりの人生だから、本当に愛せる人と結婚するよ」 「ごめんねレーラ。ロバートを愛してるの」 誕生日に婚約破棄されたレーラは絶望し、生きる事を諦めてしまう。 けれど死にきれず、再び目覚めた時、新しい人生が幕を開けた。 レーラに許しを請い、縋る裏切り者たち。 心を鎖し生きて行かざるを得ないレーラの前に、一人の求婚者が現れる。 強く気高く冷酷に。 裏切り者たちが落ちぶれていく様を眺めながら、レーラは愛と幸せを手に入れていく。 ☆完結しました。ありがとうございました!☆ (ホットランキング8位ありがとうございます!(9/10、19:30現在)) (ホットランキング1位~9位~2位ありがとうございます!(9/6~9)) (ホットランキング1位!?ありがとうございます!!(9/5、13:20現在)) (ホットランキング9位ありがとうございます!(9/4、18:30現在))

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

あなたの子ですが、内緒で育てます

椿蛍
恋愛
「本当にあなたの子ですか?」  突然現れた浮気相手、私の夫である国王陛下の子を身籠っているという。  夫、王妃の座、全て奪われ冷遇される日々――王宮から、追われた私のお腹には陛下の子が宿っていた。  私は強くなることを決意する。 「この子は私が育てます!」  お腹にいる子供は王の子。  王の子だけが不思議な力を持つ。  私は育った子供を連れて王宮へ戻る。  ――そして、私を追い出したことを後悔してください。 ※夫の後悔、浮気相手と虐げられからのざまあ ※他サイト様でも掲載しております。 ※hotランキング1位&エールありがとうございます!

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

いきなり異世界って理不尽だ!

みーか
ファンタジー
 三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。   自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

処理中です...