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第1章〔地球編〕

28.忍者もどきじゃねぇ

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バイオロイドパークの中央に捕らわれたストライダー達数名がスクリーン越しではなく、僕、沖田仙道の肉眼でもはっきりと確認できた。

キアト達と別れ、恐竜エリア、空想動物エリア、そしてWEGS研究所で捕らわれたストライダー達がいる場所へと移動した。時間にして十五分。

僕とテル、ヒロヤの三人とそれぞれの相棒のWEGSはドームのような広い館内の高い場所の壁越しから気配を消し、どう切り抜けするか考えていた。

「ちなみ……」

ソフトモヒカンの少年ヒロヤが自分の彼女を遠くから目視しながら、心配する。

「無事だな……」

ジーンズに黒装束に帷子かたびらを着た、忍者を意識した服装の少年テルが呟く。

ヒロヤの彼女、名前は確か、赤橋ちなみは体操座りで、虚ろな表情をしていた。

他の十数人のストライダー達も同じように憔悴した表情をしていた。

ちなみを含めた人びとの後ろにそれぞれの相棒のWEGSが微動だにせずに制止している。

先程、トムにより相棒のWEGSと共に見せしめに自爆死した人物の遺体が、今の現実を語る。それにしても何故、自爆したWEGSは簡単に操られたのだろう……?

「トムって野郎、居ないな……」

テルの言葉に僕は無言で頷いた。

先程から見回しながら探してはいたが、やはりトムはいない。

「誰か来た」

ヒロヤの一言に、僕とテルはヒロヤが向いている方へと顔を向けた。

捕らわれた人びとにいきなり近づくのは、成人女性とWEGS一体だった。

「あの女はトムって野郎と一緒にいた女?」

テルが成人女性、年齢はおそらく僕と同じ二十五か前後くらいの女。名前は確か……

「ジャル・ガーラだ」

つり上がった目、八頭身の美女、だけどあからさまに冷酷な印象の女だ。

「隠れているのバレバレなんだけど……」

ジャル・ガーラが僕達の隠れている方へと身体を向けて頬笑む。

「ちっ」「お前が犬くセェからバレちまったじゃねぇか」「んだと、ゴラ!」

僕達三人は見透かされたジャルやちなみ達ストライダーの前に姿を見せた。

「あら、三人ともナイスガイじゃない」

「人質を返してもらうぞ!」

ジャルの挑発に応じることなく、ヒロヤが言うと、ちなみがそれに反応し涙ぐむのが見えた。

「トムは何処だ!?」

「あら、ミスターセンドー、トム様はここにいないわ」

「だから何処だ!?」

「これから死ぬ人に教えてもね……」

その言葉に僕は身構えた。

「あら、もう一人の忍者みたいなボーイは何処に消えたの?」

ジャルの一言に僕とヒロヤはテルのいる隣を見た。

「テル……?」

テルはその場に忽然と消えていた。

「おれ様はここだ!」

テルの声がした方へと向くと、すでにテルはジャルの背後におり、両手にくないを持ち、ジャルの首筋へと当てていた。

「は、速い!?」

初めて見るテルの瞬発能力に僕は驚いた。

「あら~、速いのね」

「余裕ぶっこいてんなぁ!おばはん」

「失礼な…………」

首筋にくないを当てられているのに平然としているジャル・ガーラにテルが一言呟くと、ジャル・ガーラはため息を吐き、そして怒りの形相となった。

「ガキだね!」

その発言と同時にジャル・ガーラのWEGSがテルへと突進した。

ジャル・ガーラのWEGSは緑色の二足歩行型であり、ワニ、大きく長い尾を持つ蜥蜴亜人リザードマンモデルの名前は確か、アピールウィーク。

アピールウィークがテルを突き飛ばそうとすると、テルとアピールウィークの間にテルの相棒が割って入った。

WEGS同士が火花を散らし激突する。

獅子鷲グリフォンモデルのインディアン・オーラ、略してインディオーの前足がアピールウィークを凪ぎ払おうとすると、アピールウィークは咄嗟に後退し、インディオーの前足は空を斬った。

「詰めが甘いんじゃないの?バカテル」

「うるせぇよ」

インディオーが相棒であるテルに悪態をつくと、横腹の機械箇所が開いた。どうやらテルになんらかの武器を与えるようだ。

「忍者もどきのバカテル!おいらと変わろうか!?」

ヒロヤもテルに悪態をつく。

正直、テルでは不安がある。ヒロヤがそう言うのはムリがない。

「忍者もどきじゃねぇ!おれ様は本物の忍者だ!バカヤロー!」

テルがヒロヤに向かって怒鳴ると、インディオーの脇腹に手を入れた。

「おれ様は天狗の師匠から忍術を教わった一番弟子様だ!バカヤロー!」

テルの一言に僕は驚愕した。

「天狗の師匠……だと?まさか、テル!?」

「なんだよ?」

僕の疑問にテルが疑問視する。

「その師匠の名前は?」

「…………師匠の名前?前田政村師匠だ!」

やはり、そうか。衝撃が走った。前田政村は……

「知合いか?仙道さん?」

ヒロヤが僕に質問する。ジャル・ガーラもテルの告白に驚愕している。どうやら彼女も前田政村を知っている。いや、知っていて当然か……

「ワールド13のメンバーの一人、前田政村……、違う呼び方は……」

僕の発言と同時に、テルはインディオーからある物を取り出しそれを構え、次に僕の台詞とテルの台詞が重なった。

「「億忍、前田政村……」」 

テルは白くまるで濡れているように輝く美しい、刀剣を構えた。
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