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062-065 リトルデーモンと王者の冠
065 俺はオチにも戸惑わない
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魔物なのか人間なのか頭蓋骨が足元に幾つも転がっていた。洞窟は進むほどに古新聞と酢醤油を合わせたような異臭が漂う。おそらくリトルデーモンはそれに寄せ付けられているのだろう。
奥の道は人の手が加わってある。しかし、いくら歩きやすくなっても上記のことがあるから俺としては簡単に嬉べない。日本人のワースト5に入るだろう害虫が真横で絶賛、井戸端会議中だ。
「持って帰ればフィーカが喜びそうだ」
地獄の道中でプイプイが俺に気を利かせて言ったんだと思う。対して俺は何の反応も返さなかったがな。薬品の材料にするのか、酒の原料にするのかなんて聞きたくもない。
「王者の冠って?」
俺は人の話を無視して自分の知りたいことを聞いた。 プイプイは気にしておらず答えた。
「人を従わせるという禁断の魔術を秘めた品なんだ」
「禁断の魔術……?」
なんだか物騒な品だが、全くケロリとした物言いだった。もしかしたら何かオチがあるのか? そう俺は考えて、この続きで詳細を聞かせてもらった。
「その昔は魔王が所持していたようだ。冠を身に付けることで魔術を得たら、人の心を狂わせ、街や国を支配した。世界をも破壊しかけたらしい。でも、とある勇者が奪還した。そしてその冠は今、勇者の屍と共にここへ埋葬してある」
それがこれだ。と、世界を救った勇者の墓がバーンと現れる。
「こ、これは……!!」雑なオチ振りは、目の前で俺に肩透かしを食らわせた。
勇者の墓とは実に立派だったのだ。十字架を掲げるのではなく、立方体の黒石に「ナムアミダブツ」と掘られてた。
俺は思わず「日本式だ」と漏らしてしまう。素直に驚いたのもあるし、絶妙にガッカリしたのもある。
「見ろ。あれが王者の冠だ」
「ええっ!?」
プイプイが指をさした。探し物は一瞬で見つかった。なにせその墓石の上に普通に置いてあったからだ。ただし効力が強いらしいので、軽々手を出せる訳じゃないんだと。
それより別の衝撃も後から地味に来る。俺は男声を隠すのを忘れて「埋葬されていないじゃないか!」とツッコミを入れてしまった。しかし誰も聞いていない。
「……美しいな。レイスの血の結晶石と、臨海人魚の鱗で飾られている。あの輝きが人間を虜にするんだ……」
そう語るプイプイをはじめ、ユーミンとケンシも。虚ろになって冠に手を伸ばそうとしていた。
「おいおい。正気になれ、お前ら!」
三人は同時にハッとする。こんな調子で大丈夫なのかよ。俺は心配になった。
……まあ。確かに冠は綺麗だな。レイスの血と何人魚だっけ?
そこで俺は、そういえば。と、思い出したのだ。すかさずメモ帳を開いて明かりの近くでページをめくる。やっぱりだ。
「なあ、プイプイ。これって王者の冠のことじゃないか?」
聞きながら俺はメモ帳をプイプイに見せる。指で示した箇所をプイプイの目が追い終えたら「た、たぶん」と言った。
そうか……。
メモ帳の文字にはこうあるんだ。
『レースノチとリンカイキンギョのオーカン』
ブランド物を欲しがった女神が、涎を垂らしまくりながら言ったもんだから。聞き取りづらくて適当に書いた俺の字。
「そうなのか……」
俺はひとりだけ冠の虜にはならず。こちらの諸事情のせいで項垂れるばかりであった。
奥の道は人の手が加わってある。しかし、いくら歩きやすくなっても上記のことがあるから俺としては簡単に嬉べない。日本人のワースト5に入るだろう害虫が真横で絶賛、井戸端会議中だ。
「持って帰ればフィーカが喜びそうだ」
地獄の道中でプイプイが俺に気を利かせて言ったんだと思う。対して俺は何の反応も返さなかったがな。薬品の材料にするのか、酒の原料にするのかなんて聞きたくもない。
「王者の冠って?」
俺は人の話を無視して自分の知りたいことを聞いた。 プイプイは気にしておらず答えた。
「人を従わせるという禁断の魔術を秘めた品なんだ」
「禁断の魔術……?」
なんだか物騒な品だが、全くケロリとした物言いだった。もしかしたら何かオチがあるのか? そう俺は考えて、この続きで詳細を聞かせてもらった。
「その昔は魔王が所持していたようだ。冠を身に付けることで魔術を得たら、人の心を狂わせ、街や国を支配した。世界をも破壊しかけたらしい。でも、とある勇者が奪還した。そしてその冠は今、勇者の屍と共にここへ埋葬してある」
それがこれだ。と、世界を救った勇者の墓がバーンと現れる。
「こ、これは……!!」雑なオチ振りは、目の前で俺に肩透かしを食らわせた。
勇者の墓とは実に立派だったのだ。十字架を掲げるのではなく、立方体の黒石に「ナムアミダブツ」と掘られてた。
俺は思わず「日本式だ」と漏らしてしまう。素直に驚いたのもあるし、絶妙にガッカリしたのもある。
「見ろ。あれが王者の冠だ」
「ええっ!?」
プイプイが指をさした。探し物は一瞬で見つかった。なにせその墓石の上に普通に置いてあったからだ。ただし効力が強いらしいので、軽々手を出せる訳じゃないんだと。
それより別の衝撃も後から地味に来る。俺は男声を隠すのを忘れて「埋葬されていないじゃないか!」とツッコミを入れてしまった。しかし誰も聞いていない。
「……美しいな。レイスの血の結晶石と、臨海人魚の鱗で飾られている。あの輝きが人間を虜にするんだ……」
そう語るプイプイをはじめ、ユーミンとケンシも。虚ろになって冠に手を伸ばそうとしていた。
「おいおい。正気になれ、お前ら!」
三人は同時にハッとする。こんな調子で大丈夫なのかよ。俺は心配になった。
……まあ。確かに冠は綺麗だな。レイスの血と何人魚だっけ?
そこで俺は、そういえば。と、思い出したのだ。すかさずメモ帳を開いて明かりの近くでページをめくる。やっぱりだ。
「なあ、プイプイ。これって王者の冠のことじゃないか?」
聞きながら俺はメモ帳をプイプイに見せる。指で示した箇所をプイプイの目が追い終えたら「た、たぶん」と言った。
そうか……。
メモ帳の文字にはこうあるんだ。
『レースノチとリンカイキンギョのオーカン』
ブランド物を欲しがった女神が、涎を垂らしまくりながら言ったもんだから。聞き取りづらくて適当に書いた俺の字。
「そうなのか……」
俺はひとりだけ冠の虜にはならず。こちらの諸事情のせいで項垂れるばかりであった。
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