友達の犯罪。

アイザワ

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1.始まり

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 普通…。平凡……。そういった言葉がぴったりとハマる、そんな人生を送っている。でも、特に苦なものでもない。だから「かわいそう」だとか「大丈夫?」などという不憫な言葉は無用だ。
 
 
 
 俺は今日もママチャリを全力でこぐ。時間に余裕をもって早めに家を出れば、こんなに焦る思いはしなくて済むはずだが、俺は時間ギリギリにハンドルを握り始める。まぁ、いつものことだ。
 
 セーフ。
 教室に入って一番窓側の席に座る。
 「おは‼︎髪の毛はねてるよー。」
 後ろから声が飛んできた。板垣百恵だ。急いでやってきた為、彼女の言うとおり俺の頭上は獣と化していた。俺はテキトーな返しをして髪をもとに戻す。
 今日は天気が良い。気候もおだやかでかすかに吹くすきま風が俺を優しく撫で下ろす。
 ふと周りを見渡した。俺は真逆の席が空いていることに気づいた。後ろを振り向いて百恵に尋ねる。
 「立花はー?」
 あくび混じりに問いた俺の頭を叩き「さぁ、休みなんじゃない。」と一言。珍しさのあまり俺は「へー」と馬鹿らしいリアクションをとってしまった。案の定、百恵から貶された。
 とりあえず、こんな毎朝が平凡な一日のスタートをきる。これが俺の日課ってやつだ。
 

 うちの学校は毎六時間授業である。部活は文化部で週に一度しかないため今日は授業が終わったら何処にも寄らず家へ帰る予定だ。友達と何処かへ遊びに行くことはあるがそれは時々の話だ。
 

 1月17日15時50分。
 駐輪場にて、俺はサドルに腰を下ろす。そうしたら女子テニス部の数人が俺を横切る。その数秒後、また数人が横切ろうとする。百恵の姿が眼に映る。そのため俺は煽り口調で彼女に呟いた。すると、テニス部のエースとだけあり反射神経が速く、強烈な返しを受けた。そばにいた百恵の仲間二人が笑って俺らのやりとりを覗いている。
 「んじゃ、がんばれ~!」とまあまあなところで話を切り上げ俺はペダルを漕いで家に向かった。
 平凡な一日だった。
 
 

 それから数日のことである。俺は放課後、立花の家へ向かった。
 「晃どうしちゃったんだろう。」
 「なんでおめーも付いてきてんだ?おい。」
 つい口を滑らせたばかりに百恵は俺についてきてしまった。まぁ、俺ら三人は中学からの仲でよく一緒にいたもんだ。だから立花の見舞いに行く。
 『ピンポーン』とベルが鳴り響く。少しの沈黙が訪れたのち、ドアが重々しく開いた。
 「こんにちはー。」
 俺と百恵が声を揃え挨拶をすると、玄関から出てきた立花のお母さんが会釈をする。俺は事情を説明する。するとお母さんは俺ら二人を家の中へ招いてくれた。
 
 リビングのソファに座り込むと、お母さんはその向かいに座った。
 「立花君の体調はいかがですか?」
 『…』彼女は何も言わず無言のまま。その姿に俺は違和感を感じた。横に居る百恵も同じ思いを持ったらしい。なぜなら、お母さんと全く視線が合わないからだ。しかもそもそも下を向いたまま顔を上げさえしない。
 俺と百恵はいくら彼女に声をかけても何も返事をしてくれない。眉間に皺を寄せてよく彼女の顔を覗いてみると、瞳に薄っすら赫きが見える。泣いてる⁉︎どうして?
 
 ぽつん。


 雨が降り出した。


 「お母さん、何かあったんですか。俺は立花の事が心配なんです。」
 熱意を彼女に伝えた。すると百恵も俺に便乗し想いを届ける。
 
 

 1月22日8時25分。
 「やっぱり来てないみたい。」
 教室に入ると百恵にそう告げられた。
 「このことはまだ誰にも言わない方がいい。」
 『うん、分かってる』そう答えた百恵は不安そうに席に座る。昨日聞いた立花のお母さんの言葉が頭の中で蘇る。
 『実は、晃がこの間から行方不明なの…。それと置き手紙があって…』
 
 ドカッ。教室のドアに何かがぶつかる音が教室内を包み込む。朝のHRをしていた担任が『誰や騒がしい』と近づいた瞬間。床に這いつくばりながら中へと入ってくる森山の姿が現れた。
 「きゃぁー‼︎」
 クラスの女子が叫び出す。俺は皆んなの身体が邪魔してよく見えず、間から覗き込む。


俺は息を呑んだ。



俺の目に映ったのは、ナイフで腹部を刺され、血だらけになっていた森山の姿だった。。。
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