1 / 1
1.始まり
しおりを挟む
普通…。平凡……。そういった言葉がぴったりとハマる、そんな人生を送っている。でも、特に苦なものでもない。だから「かわいそう」だとか「大丈夫?」などという不憫な言葉は無用だ。
俺は今日もママチャリを全力でこぐ。時間に余裕をもって早めに家を出れば、こんなに焦る思いはしなくて済むはずだが、俺は時間ギリギリにハンドルを握り始める。まぁ、いつものことだ。
セーフ。
教室に入って一番窓側の席に座る。
「おは‼︎髪の毛はねてるよー。」
後ろから声が飛んできた。板垣百恵だ。急いでやってきた為、彼女の言うとおり俺の頭上は獣と化していた。俺はテキトーな返しをして髪をもとに戻す。
今日は天気が良い。気候もおだやかでかすかに吹くすきま風が俺を優しく撫で下ろす。
ふと周りを見渡した。俺は真逆の席が空いていることに気づいた。後ろを振り向いて百恵に尋ねる。
「立花はー?」
あくび混じりに問いた俺の頭を叩き「さぁ、休みなんじゃない。」と一言。珍しさのあまり俺は「へー」と馬鹿らしいリアクションをとってしまった。案の定、百恵から貶された。
とりあえず、こんな毎朝が平凡な一日のスタートをきる。これが俺の日課ってやつだ。
うちの学校は毎六時間授業である。部活は文化部で週に一度しかないため今日は授業が終わったら何処にも寄らず家へ帰る予定だ。友達と何処かへ遊びに行くことはあるがそれは時々の話だ。
1月17日15時50分。
駐輪場にて、俺はサドルに腰を下ろす。そうしたら女子テニス部の数人が俺を横切る。その数秒後、また数人が横切ろうとする。百恵の姿が眼に映る。そのため俺は煽り口調で彼女に呟いた。すると、テニス部のエースとだけあり反射神経が速く、強烈な返しを受けた。そばにいた百恵の仲間二人が笑って俺らのやりとりを覗いている。
「んじゃ、がんばれ~!」とまあまあなところで話を切り上げ俺はペダルを漕いで家に向かった。
平凡な一日だった。
それから数日のことである。俺は放課後、立花の家へ向かった。
「晃どうしちゃったんだろう。」
「なんでおめーも付いてきてんだ?おい。」
つい口を滑らせたばかりに百恵は俺についてきてしまった。まぁ、俺ら三人は中学からの仲でよく一緒にいたもんだ。だから立花の見舞いに行く。
『ピンポーン』とベルが鳴り響く。少しの沈黙が訪れたのち、ドアが重々しく開いた。
「こんにちはー。」
俺と百恵が声を揃え挨拶をすると、玄関から出てきた立花のお母さんが会釈をする。俺は事情を説明する。するとお母さんは俺ら二人を家の中へ招いてくれた。
リビングのソファに座り込むと、お母さんはその向かいに座った。
「立花君の体調はいかがですか?」
『…』彼女は何も言わず無言のまま。その姿に俺は違和感を感じた。横に居る百恵も同じ思いを持ったらしい。なぜなら、お母さんと全く視線が合わないからだ。しかもそもそも下を向いたまま顔を上げさえしない。
俺と百恵はいくら彼女に声をかけても何も返事をしてくれない。眉間に皺を寄せてよく彼女の顔を覗いてみると、瞳に薄っすら赫きが見える。泣いてる⁉︎どうして?
ぽつん。
雨が降り出した。
「お母さん、何かあったんですか。俺は立花の事が心配なんです。」
熱意を彼女に伝えた。すると百恵も俺に便乗し想いを届ける。
1月22日8時25分。
「やっぱり来てないみたい。」
教室に入ると百恵にそう告げられた。
「このことはまだ誰にも言わない方がいい。」
『うん、分かってる』そう答えた百恵は不安そうに席に座る。昨日聞いた立花のお母さんの言葉が頭の中で蘇る。
『実は、晃がこの間から行方不明なの…。それと置き手紙があって…』
ドカッ。教室のドアに何かがぶつかる音が教室内を包み込む。朝のHRをしていた担任が『誰や騒がしい』と近づいた瞬間。床に這いつくばりながら中へと入ってくる森山の姿が現れた。
「きゃぁー‼︎」
クラスの女子が叫び出す。俺は皆んなの身体が邪魔してよく見えず、間から覗き込む。
俺は息を呑んだ。
俺の目に映ったのは、ナイフで腹部を刺され、血だらけになっていた森山の姿だった。。。
俺は今日もママチャリを全力でこぐ。時間に余裕をもって早めに家を出れば、こんなに焦る思いはしなくて済むはずだが、俺は時間ギリギリにハンドルを握り始める。まぁ、いつものことだ。
セーフ。
教室に入って一番窓側の席に座る。
「おは‼︎髪の毛はねてるよー。」
後ろから声が飛んできた。板垣百恵だ。急いでやってきた為、彼女の言うとおり俺の頭上は獣と化していた。俺はテキトーな返しをして髪をもとに戻す。
今日は天気が良い。気候もおだやかでかすかに吹くすきま風が俺を優しく撫で下ろす。
ふと周りを見渡した。俺は真逆の席が空いていることに気づいた。後ろを振り向いて百恵に尋ねる。
「立花はー?」
あくび混じりに問いた俺の頭を叩き「さぁ、休みなんじゃない。」と一言。珍しさのあまり俺は「へー」と馬鹿らしいリアクションをとってしまった。案の定、百恵から貶された。
とりあえず、こんな毎朝が平凡な一日のスタートをきる。これが俺の日課ってやつだ。
うちの学校は毎六時間授業である。部活は文化部で週に一度しかないため今日は授業が終わったら何処にも寄らず家へ帰る予定だ。友達と何処かへ遊びに行くことはあるがそれは時々の話だ。
1月17日15時50分。
駐輪場にて、俺はサドルに腰を下ろす。そうしたら女子テニス部の数人が俺を横切る。その数秒後、また数人が横切ろうとする。百恵の姿が眼に映る。そのため俺は煽り口調で彼女に呟いた。すると、テニス部のエースとだけあり反射神経が速く、強烈な返しを受けた。そばにいた百恵の仲間二人が笑って俺らのやりとりを覗いている。
「んじゃ、がんばれ~!」とまあまあなところで話を切り上げ俺はペダルを漕いで家に向かった。
平凡な一日だった。
それから数日のことである。俺は放課後、立花の家へ向かった。
「晃どうしちゃったんだろう。」
「なんでおめーも付いてきてんだ?おい。」
つい口を滑らせたばかりに百恵は俺についてきてしまった。まぁ、俺ら三人は中学からの仲でよく一緒にいたもんだ。だから立花の見舞いに行く。
『ピンポーン』とベルが鳴り響く。少しの沈黙が訪れたのち、ドアが重々しく開いた。
「こんにちはー。」
俺と百恵が声を揃え挨拶をすると、玄関から出てきた立花のお母さんが会釈をする。俺は事情を説明する。するとお母さんは俺ら二人を家の中へ招いてくれた。
リビングのソファに座り込むと、お母さんはその向かいに座った。
「立花君の体調はいかがですか?」
『…』彼女は何も言わず無言のまま。その姿に俺は違和感を感じた。横に居る百恵も同じ思いを持ったらしい。なぜなら、お母さんと全く視線が合わないからだ。しかもそもそも下を向いたまま顔を上げさえしない。
俺と百恵はいくら彼女に声をかけても何も返事をしてくれない。眉間に皺を寄せてよく彼女の顔を覗いてみると、瞳に薄っすら赫きが見える。泣いてる⁉︎どうして?
ぽつん。
雨が降り出した。
「お母さん、何かあったんですか。俺は立花の事が心配なんです。」
熱意を彼女に伝えた。すると百恵も俺に便乗し想いを届ける。
1月22日8時25分。
「やっぱり来てないみたい。」
教室に入ると百恵にそう告げられた。
「このことはまだ誰にも言わない方がいい。」
『うん、分かってる』そう答えた百恵は不安そうに席に座る。昨日聞いた立花のお母さんの言葉が頭の中で蘇る。
『実は、晃がこの間から行方不明なの…。それと置き手紙があって…』
ドカッ。教室のドアに何かがぶつかる音が教室内を包み込む。朝のHRをしていた担任が『誰や騒がしい』と近づいた瞬間。床に這いつくばりながら中へと入ってくる森山の姿が現れた。
「きゃぁー‼︎」
クラスの女子が叫び出す。俺は皆んなの身体が邪魔してよく見えず、間から覗き込む。
俺は息を呑んだ。
俺の目に映ったのは、ナイフで腹部を刺され、血だらけになっていた森山の姿だった。。。
0
お気に入りに追加
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
『10年後お互い独身なら結婚しよう』「それも悪くないね」あれは忘却した会話で約束。王子が封印した記憶……
内村うっちー
青春
あなたを離さない。甘く優しいささやき。飴ちゃん袋で始まる恋心。
物語のA面は悲喜劇でリライフ……B級ラブストーリー始まります。
※いささかSF(っポイ)超展開。基本はベタな初恋恋愛モノです。
見染めた王子に捕まるオタク。ギャルな看護師の幸運な未来予想図。
過去とリアルがリンクする瞬間。誰一人しらないスパダリの初恋が?
1万字とすこしで完結しました。続編は現時点まったくの未定です。
完結していて各話2000字です。5分割して21時に予約投稿済。
初めて異世界転生ものプロット構想中。天から降ってきたラブコメ。
過去と現実と未来がクロスしてハッピーエンド! そんな短い小説。
ビックリする反響で……現在アンサーの小説(王子様ヴァージョン)
プロットを構築中です。投稿の時期など未定ですがご期待ください。
※7月2日追記
まずは(しつこいようですが)お断り!
いろいろ小ネタや実物満載でネタにしていますがまったく悪意なし。
※すべて敬愛する意味です。オマージュとして利用しています。
人物含めて全文フィクション。似た組織。団体個人が存在していても
無関係です。※法律違反は未成年。大人も基本的にはやりません。
花霞にたゆたう君に
冴月希衣@電子書籍配信中
青春
【自己評価がとことん低い無表情眼鏡男子の初恋物語】
◆春まだき朝、ひとめ惚れした少女、白藤涼香を一途に想い続ける土岐奏人。もどかしくも熱い恋心の軌跡をお届けします。◆
風に舞う一片の花びら。魅せられて、追い求めて、焦げるほどに渇望する。
願うは、ただひとつ。君をこの手に閉じこめたい。
表紙絵:香咲まりさん
◆本文、画像の無断転載禁止◆
No reproduction or republication without written permission
【続編公開しました!『キミとふたり、ときはの恋。』高校生編です】
モブキャラ男子は三条千歳をあきらめない
未来屋 環
青春
――そう、今日こそ僕は生まれ変わる。
モブキャラ生活を脱して高校デビューを叶えるため、一瀬拓也は軽音楽部の部室に足を踏み入れる。
しかし、体験入部も早々に同級生たちが揉め始め、なす術なく立ち尽くす拓也の前に、凛とした声の女子が現れて……。
これは高校デビューを夢見たモブキャラ男子の、恋と青春の物語。
※長編『夏よ季節の音を聴け -トラウマ持ちのボーカリストはもう一度立ち上がる-』のスピンオフですが、本編を読んでいなくても問題なくお楽しみ頂けます。
表紙イラスト制作:ウバクロネさん。
夏の抑揚
木緒竜胆
青春
1学期最後のホームルームが終わると、夕陽旅路は担任の蓮樹先生から不登校のクラスメイト、朝日コモリへの届け物を頼まれる。
夕陽は朝日の自宅に訪問するが、そこで出会ったのは夕陽が知っている朝日ではなく、幻想的な雰囲気を纏う少女だった。聞くと、少女は朝日コモリ当人であるが、ストレスによって姿が変わってしまったらしい。
そんな朝日と夕陽は波長が合うのか、夏休みを二人で過ごすうちに仲を深めていくが。
スカートなんて履きたくない
もちっぱち
青春
齋藤咲夜(さいとうさや)は、坂本翼(さかもとつばさ)と一緒に
高校の文化祭を楽しんでいた。
イケメン男子っぽい女子の同級生の悠(はるか)との関係が友達よりさらにどんどん近づくハラハラドキドキのストーリーになっています。
女友達との関係が主として描いてます。
百合小説です
ガールズラブが苦手な方は
ご遠慮ください
表紙イラスト:ノノメ様
隣の席の関さんが許嫁だった件
桜井正宗
青春
有馬 純(ありま じゅん)は退屈な毎日を送っていた。変わらない日々、彼女も出来なければ友達もいなかった。
高校二年に上がると隣の席が関 咲良(せき さくら)という女子になった。噂の美少女で有名だった。アイドルのような存在であり、男子の憧れ。
そんな女子と純は、許嫁だった……!?
春色フォーチュンリリィ
楠富 つかさ
青春
明るく華やかな高校生活を思い描いて上京した主人公、春宮万花は寮の四人部屋での生活を始める。個性豊かな三人のルームメイトと出会い、絆を深め、あたたかな春に早咲きの百合の花がほころぶ。
キミとふたり、ときはの恋。【 君と歩く、翡翠の道】
冴月希衣@電子書籍配信中
青春
「君は、俺の女でしょ? 俺だけ見てて」
【独占欲強め眼鏡男子と純真天然女子の初恋物語】
女子校から共学の名門私立・祥徳学園に編入した白藤涼香は、お互いにひとめ惚れした土岐奏人とカレカノになる。
付き合って一年。高等科に進学した二人に、新たな出会いと試練が……。恋の甘さ、もどかしさ、嫉妬、葛藤、切なさ。さまざまなスパイスを添えた初恋ストーリーをお届けできたら、と思っています。
風が、髪をさらっていく。柔らかなそれは、甘い花の薫りを含んで。
風が、頬を撫でていく。涼やかなそれは、目に鮮やかな青葉が奏でる音色とともに。
風が、私たちを包み込んで、ふたりの距離をゼロにする。
待ちかねた季節を風が運んできた。
目に映る全ての光が、翡翠色に輝く季節。
それは、ふたりの新しい道の始まり。
☆.。.*・☆.。.*・☆.。.*・☆.。.*☆.。.*・☆.。.*・☆.。.*☆
『花霞にたゆたう君に』の続編です。
◆本文、画像の無断転載禁止◆
No reproduction or republication without written permission.
表紙:香咲まりさん作画
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる