フェロモン？ そんなの僕知りません！！

第七章

スノウ再び

彼らは廊下の端まで歩いていきその角を曲がった。どうやら踊り場の人目につかないところで話そうと思っているらしかった。
僕はコソコソとそこに近づき、話を窺おうと思った。

だってさ、なんだかいつの間にか日暮に同情しちゃってるんだよ。あいつ笹山のことを好きすぎて、きっと不器用になっちゃってるだけなんだろうから。

呼吸を整えてゆっくりと近づく。

「んぐっ……!?　んんんー！　んんんん～!!」

前方の二人に意識を全部持って行っていたせいで、他の気配に気づくことが出来なかった。
突然後ろから口を塞がれ羽交い絞めにされて、すぐ傍の教室に引きずり込まれる。

なんて馬鹿力だ！
バタバタと大暴れしてもそいつはびくともしない。
それどころか、僕の体を床に抑え付け下腹部に触れる。ベルトを外し、直に触れようとする行為に驚いて、僕はそいつをけり飛ばそうと足をバタバタとした。
だけどうまくヒットさせることが出来なくて、相手にダメージを与えることが出来なかった。

僕を襲っている奴が誰なのかを確かめようと、顔を上げた。見て驚愕した。

――スノウだ。

心臓が恐ろしいほどにうるさく鳴り始めた。

だって、こいつは既に魔界に帰ったはずだ。ロベールにひどい目に合わされて僕のことも諦めたはずなのに。
すっかり安心しきっていたせいで、僕の驚きは半端なく恐怖が波となって押し寄せてきた。

「いい表情だ。そそるな ……」

舌なめずりをするようなその声が気持ち悪い。足がガクガクと震え始めて、力がうまく入らない。
そんな僕を見たスノウが気味悪く笑った。
と同時にシャツが破けるんじゃないかと思うくらいの勢いで、スノウが片手で僕のシャツを思いっきり引っ張った。

「な、何するんだ離せ！　モガッ ……」
「人が来ると拙いだろ」

何か拙いだ！　手ぇ離せ！
ロベール助けて、助けてー！

「モガガッ！」

心の中で必死で助けを求めながら、力いっぱい抵抗した。だけど服は剥がされ胸に吸いつかれて虫唾が走る。

「んんん……っ！　ぐうっ！」
「大人しくしろ。さもないと、もっと苦しくなるぞ」

そう言いながらスノウが、僕の首に手を押し当て圧を加えた。容赦ないその行為が苦しく、僕はほとんど動くことができなくなってしまった。