88 / 93
第七章
潜むモノ
しおりを挟む
「で、で? どうだった? 同棲初日」
「同居だから……!」
「うん、うん。で?」
なんだこの奏多の興味津々ぶりは。あまりにもキラキラと瞳を輝かせて聞くものだから、僕の腰がちょっぴり引ける。
「……別に普通だよ。どんどん甘えていいとは言ってもらったけど……」
「甘えて? わー、なになにそれ!」
バシバシッ!
一人で勝手に興奮をした奏多が、僕の肩を容赦なく叩く。
「いって! 痛いよ、奏多」
「ああ、ごめんごめん! ……でも、良いよなあ。羨ましい。寂しいって言われたら抱き寄せて、慰めてって言われたら押し倒してキスしてさあ……。そしてついには……っ!」
「あのさ、奏多……」
「くぅ~、いいなあ、俺も礼美ちゃんと同棲したいなあ……」
「同居だって!」
「うんうん、同居、同居。……いいなあ」
どうやら奏多の頭の中では、礼美ちゃんとの仲睦まじい新婚生活でも描かれているのだろう。ほわほわニヤニヤと、幸せそうなだらけた顔で宙を見ている。
……まあ、いいんだけどさ。
楽しそうに妄想に浸る奏多に呆れていると、教室の後ろの方から楽しそうに騒ぐ雄基たちの声が聞こえてきた。相変わらず楽しそうな彼らだけど、笹山の様子がいつもと違っているように見える。
「南、どうかした?」
僕が笹山の様子を気にしてみていると、それに気付いた奏多が同じく視線を後方に向けた。
どうやら礼美ちゃんとの妄想から抜け出してきたらしい。
「ん……、なんだか笹山の様子が気になって。なんかちょっと変じゃない?」
「あー、ぼーっとしてる?」
「うん。……やっぱこないだの、僕に何か相談があったのかなー」
「どうだろ? あっ!」
笹山のところに日暮がやってきた。どうやら話がしたいようで、廊下に出るように誘っている。
少し抵抗のそぶりを見せた後、結局笹山の方が折れたようで、日暮の後をついていった。
日暮の表情は強張っているし、笹山の方はどこか落ち着かないような感じだ。
日暮の気持ちを知っている僕としては、二人のことが気になって仕方がない。廊下に出てそのまま向こうに歩いていく二人を追いかけようと思った。
「ちょっと見てくる」
「え? 何言ってんだよ南!」
走り出した僕を追いかけようと、奏多もつられて席を立った。
「痛っ! ちょっと何してんのよ近江!」
どうやら勢いよく立ち上がった時に、奏多は周りを見ていなかったらしい。歩いてきた女子と強かぶつかって、尻餅をつかせてしまったらしかった。
奏多を待つべきかとも思ったけど、笹山たちがどんどん遠ざかっていくので焦った僕は、心の中で奏多に『ごめん』と呟いて、一人で彼らの後を追った。
「同居だから……!」
「うん、うん。で?」
なんだこの奏多の興味津々ぶりは。あまりにもキラキラと瞳を輝かせて聞くものだから、僕の腰がちょっぴり引ける。
「……別に普通だよ。どんどん甘えていいとは言ってもらったけど……」
「甘えて? わー、なになにそれ!」
バシバシッ!
一人で勝手に興奮をした奏多が、僕の肩を容赦なく叩く。
「いって! 痛いよ、奏多」
「ああ、ごめんごめん! ……でも、良いよなあ。羨ましい。寂しいって言われたら抱き寄せて、慰めてって言われたら押し倒してキスしてさあ……。そしてついには……っ!」
「あのさ、奏多……」
「くぅ~、いいなあ、俺も礼美ちゃんと同棲したいなあ……」
「同居だって!」
「うんうん、同居、同居。……いいなあ」
どうやら奏多の頭の中では、礼美ちゃんとの仲睦まじい新婚生活でも描かれているのだろう。ほわほわニヤニヤと、幸せそうなだらけた顔で宙を見ている。
……まあ、いいんだけどさ。
楽しそうに妄想に浸る奏多に呆れていると、教室の後ろの方から楽しそうに騒ぐ雄基たちの声が聞こえてきた。相変わらず楽しそうな彼らだけど、笹山の様子がいつもと違っているように見える。
「南、どうかした?」
僕が笹山の様子を気にしてみていると、それに気付いた奏多が同じく視線を後方に向けた。
どうやら礼美ちゃんとの妄想から抜け出してきたらしい。
「ん……、なんだか笹山の様子が気になって。なんかちょっと変じゃない?」
「あー、ぼーっとしてる?」
「うん。……やっぱこないだの、僕に何か相談があったのかなー」
「どうだろ? あっ!」
笹山のところに日暮がやってきた。どうやら話がしたいようで、廊下に出るように誘っている。
少し抵抗のそぶりを見せた後、結局笹山の方が折れたようで、日暮の後をついていった。
日暮の表情は強張っているし、笹山の方はどこか落ち着かないような感じだ。
日暮の気持ちを知っている僕としては、二人のことが気になって仕方がない。廊下に出てそのまま向こうに歩いていく二人を追いかけようと思った。
「ちょっと見てくる」
「え? 何言ってんだよ南!」
走り出した僕を追いかけようと、奏多もつられて席を立った。
「痛っ! ちょっと何してんのよ近江!」
どうやら勢いよく立ち上がった時に、奏多は周りを見ていなかったらしい。歩いてきた女子と強かぶつかって、尻餅をつかせてしまったらしかった。
奏多を待つべきかとも思ったけど、笹山たちがどんどん遠ざかっていくので焦った僕は、心の中で奏多に『ごめん』と呟いて、一人で彼らの後を追った。
1
お気に入りに追加
177
あなたにおすすめの小説
【完結】別れ……ますよね?
325号室の住人
BL
☆全3話、完結済
僕の恋人は、テレビドラマに数多く出演する俳優を生業としている。
ある朝、テレビから流れてきたニュースに、僕は恋人との別れを決意した。
いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!
梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!?
【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】
▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。
▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。
▼毎日18時投稿予定
朝目覚めたら横に悪魔がいたんだが・・・告白されても困る!
渋川宙
BL
目覚めたら横に悪魔がいた!
しかもそいつは自分に惚れたと言いだし、悪魔になれと囁いてくる!さらに魔界で結婚しようと言い出す!!
至って普通の大学生だったというのに、一体どうなってしまうんだ!?
『番外編』イケメン彼氏は警察官!初めてのお酒に私の記憶はどこに!?
すずなり。
恋愛
イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の身は持たない!?の番外編です。
ある日、美都の元に届いた『同窓会』のご案内。もう目が治ってる美都は参加することに決めた。
要「これ・・・酒が出ると思うけど飲むなよ?」
そう要に言われてたけど、渡されたグラスに口をつける美都。それが『酒』だと気づいたころにはもうだいぶ廻っていて・・・。
要「今日はやたら素直だな・・・。」
美都「早くっ・・入れて欲しいっ・・!あぁっ・・!」
いつもとは違う、乱れた夜に・・・・・。
※お話は全て想像の世界です。現実世界とはなんら関係ありません。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
人気アイドルグループのリーダーは、気苦労が絶えない
タタミ
BL
大人気5人組アイドルグループ・JETのリーダーである矢代頼は、気苦労が絶えない。
対メンバー、対事務所、対仕事の全てにおいて潤滑剤役を果たす日々を送る最中、矢代は人気2トップの御厨と立花が『仲が良い』では片付けられない距離感になっていることが気にかかり──
秋良のシェアハウス。(ワケあり)
日向 ずい
BL
物語内容
俺は...大学1年生の神代 秋良(かみしろ あきら)。新しく住むところ...それは...男ばかりのシェアハウス!?5人暮らしのその家は...まるで地獄!プライバシーの欠けらも無い...。だが、俺はそこで禁断の恋に落ちる事となる...。
登場人物
・神代 秋良(かみしろ あきら)
18歳 大学1年生。
この物語の主人公で、これからシェアハウスをする事となる。(シェアハウスは、両親からの願い。)
・阿久津 龍(あくつ りゅう)
21歳 大学3年生。
秋良と同じ大学に通う学生。
結構しっかりもので、お兄ちゃん見たいな存在。(兄みたいなのは、彼の過去に秘密があるみたいだが...。)
・水樹 虎太郎(みずき こたろう)
17歳 高校2年生。
すごく人懐っこい...。毎晩、誰かの布団で眠りにつく。シェアハウスしている仲間には、苦笑いされるほど...。容姿性格ともに可愛いから、男女ともにモテるが...腹黒い...。(それは、彼の過去に問題があるみたい...。)
・榛名 青波(はるな あおば)
29歳 社会人。
新しく入った秋良に何故か敵意むき出し...。どうやら榛名には、ある秘密があるみたいで...それがきっかけで秋良と仲良くなる...みたいだが…?
・加来 鈴斗(かく すずと)
34歳 社会人 既婚者。
シェアハウスのメンバーで最年長。完璧社会人で、大人の余裕をかましてくるが、何故か婚約相手の女性とは、別居しているようで...。その事は、シェアハウスの人にあんまり話さないようだ...。
【完結】婚約破棄された僕はギルドのドSリーダー様に溺愛されています
八神紫音
BL
魔道士はひ弱そうだからいらない。
そういう理由で国の姫から婚約破棄されて追放された僕は、隣国のギルドの町へとたどり着く。
そこでドSなギルドリーダー様に拾われて、
ギルドのみんなに可愛いとちやほやされることに……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる