フェロモン? そんなの僕知りません!!

くるむ

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第六章

無自覚で罪な蜜 2

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互いの体温を感じあいながら抱きしめあうこと数分、ロベールの腕が緩み僕の体から少し離れた。

「そろそろ戻るか」
「……うん」

本当はもっとくっ付いていたいんだけどな。
何にもしないでただ抱きしめあう時間って、僕にとっては凄く貴重だもの。

「……無自覚ばかりとは言えないようだな」
「え? ……あっ」

戻したシャツをまた少し開いて、僕の鎖骨の下あたりにロベールが吸い付いた。そして掌もシャツの中に潜り込んできて、直にわき腹あたりに密着させた。

「……落ち着きかけたから大丈夫かと思ったのに、また溢れて来てるぞ。南の甘いフェロモン」
「……え?」

蕩けかけた脳ではロベールの言葉の意味が瞬時に把握できなくて、ぼんやりとロベールを見つめる。

「私が欲しくて誘っているのか?」
「……え? ……? はっ、えっ、あ、ち違うよっ!」

ええーーーっ!?
どうなってんだよ、僕の体!

「……違うのか?」
「う……。正確には……。ただ、もうちょっとくっ付いていたいなって思ったけど。抱かれたいとかそういうことじゃなくて……」

「――じゃあレストランでは?」
「え?」
「……痴漢に遭っただろ? あの時も南のフェロモンが甘く漂っていた」
「は!? ええっ!? なんで!?」
「……やっぱり無意識か」

う~。あからさまに脱力しないでよ。

ロベールはしばらく頭を抱えたそぶりを見せた後、困ったような表情で僕を見た。

「本当に参るな、君には。さっきよりもどんどん増えてる。……今発している量でこのまま外に出てしまうのは、変な奴を呼びかねないし……」

そう言いながら僕を見つめるその顔は、困ったような表情からだんだん色気漂う表情へと変わっていく。
それはロベールが何を考えているのか、簡単に予測できるレベルだ。

「……や、いや……。ロ、ロベール? いやあの……、さっき、その……、もうしたし……」
「――そうだな」

そうだな、と言いながら色っぽい表情で迫るのは止めて!

ギャー、どこ触ってんの!
ちょっと、何そこくつろげようとしてんの!

僕は慌てて、ファスナーを下ろしにかかるロベールの手を抑えた。

「なに邪魔してる」
「だだ、だって……!」
「フェロモンは駄々洩れだぞ?」
「ででで……、でもっ!!」
「大丈夫だ。……止めないでって言いたくなるくらい、気持ちよくさせてやるから」

😨❕
それ怖いーーーー!!

ロベールの言葉にギョッとして固まる僕を見て、ロベールが目を見開いた。
そしてしばらく僕を見続けた後、口元に手をやり可笑しさをこらえるような表情になる。

「……?」

「……私に溺れるのが怖いのか」
「!?」

あまりの直球の言葉に声すら出なかった。

ず、……図星?
心はとうにロベールのモノだけど、それ以上に溺れてしまいそうで怖かった……?

だって……。

ロベールとの行為を思い出した途端体の奥から、おそらく密かにくすぶり続けていた熱がじわじわと広がり始める。

「ロベ……ル」
「……大丈夫だ。慣れない南に無茶なんかさせない。優しくちゃんと、フェロモンをいただいてやる。安心して私に愛されてろ」
「…………」

嫌だなんてもう言えなかった。
疼き始めた体は、もうロベールのことを求め始めていたから。
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