フェロモン? そんなの僕知りません!!

くるむ

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第六章

無自覚で罪な蜜

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その後すっかりお腹が満足して一息ついたので、僕らはレストランを出ることにした。
その帰りの道々も、相変わらず呆けた視線がロベールに集中している。当人は見飽きた光景だとは言っていたけど、もしかしたら中には好みのタイプがいるかもしれないよね。

「……つまみ食いとかしたら、許さないからね」

ぷくっと頬を膨らませてそう言うと、ロベールが片眉を上げる。

「そんな余裕があるか」
「……え?」

建物の陰に入った途端、急に真っ暗になって景色が変わった。

あれ? ここ?

ホテルの部屋じゃん。いつの間に!?
てか、なんで僕ベッドの上に押し倒されてんの?

「ロ、ロベール……?」
「私がどれだけ南に神経を注いでいると思っているんだ?」
「え……?」

「無意識に自覚無く、勝手にフェロモン駄々洩れにして。いつ危うい奴を惹きつけるのかと思うとハラハラして、他の奴なんて気にしてられるか! それに南が私のことを好きでいてくれるのに、どうして他の奴なんか気にする必要があるんだ?」

「ロベール……」

怒ってる……。本気でムッとして怒ってる。

ああ、もう本当に。

「ずるい……」
「――何?」

僕に覆いかぶさって、間近で怒っている綺麗な顔に手を伸ばした。両頬に包むように手のひらを合わせると、ロベールの瞳が大きくなる。

「そんなふうに言われたら、ロベールに焼き餅焼けなくなるじゃん。僕なんかより絶対誘惑多いくせに」
「焼かなくていいし、焼く必要はない。南と違ってどうこうされる立場じゃないからな」

むうっ。

「僕は別に弱いわけじゃないぞ?」
「――分かってる。だが、南より強い奴だってごろごろいるだろ? しかも変質者は容赦ないし」
「う……。わ、分かってるよ」
「よろしい」

……あ。

ニコッと笑ったロベールが顔を近づけ、僕の唇に彼のソレをふわりと押し当てた。

「それにしても」
「……え? ん……」

ロベールは一言言葉を発してまた僕の唇を覆った。何度も何度もしっとりと押し当てて、そっと唇を離す。
そして首筋に唇を移動した。

「南のフェロモンはどうなっているんだ? 大量に発したからしばらく漏れてこないだろうと思っていたら、また溢れてくるし」

「そんなの……、あっ、んっ……!!」

ちょっと、どこ触ってんだよ!

「あ、だめ……っ、ロベ……」
「好きだよな? ここ」
「誰が好きだって……、っん……っ!」

ビクンッと体が跳ねた。ロベールが面白がって、胸の粒を捏ねながら引っ張ったからだ。
そして空いている方の粒を、舌で舐め甘噛みする。

「あ、やあっ!!」

また体が跳ねて、高い声が出た。

「……南の中にはまだ甘いものがいっぱい詰まっているな」
「ふ……、んんっ。……ヤダ……」
「全部出させて、私が取り込んだ方が安心なのか?」
「は……、あ。……え?」

ロベールが何を言いたいのかよく意味が分からなかった。焦点の合わない瞳でロベールの顔を見ると、彼は困ったように笑っている。

「冗談だよ」
「ロベール……?」

弄っていた粒から手を離して、ロベールがギュッと僕を抱きしめた。



――いくら安心したいからって、そんな鬼畜なこと。

「……何?」

「いや、私はつまみ食いはしないし、南に纏わりつこうとする奴にも容赦しないから安心しろ」
「うん」

僕もロベールの背中に腕を回した。
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