フェロモン? そんなの僕知りません!!

くるむ

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第六章

ランチデート♪ 3

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皿に取った料理を食べ終えて、何度か往復して堪能した。
ロベールは僕みたいに料理をてんこ盛りにせずに、上品に少しずつ皿に取っている。

「ねえ、ロベール」
「なんだ?」
「ロベールにとってのこの食事って、どんな感じなの?」
「どんな感じとは?」
「えっと、だからさ。付き合いだから食べるけど、本当は欲しくないとか」
「そんなことは無い。人間ほど重要じゃなくても、ちゃんと体の役には立っているぞ」
「そうなの?」
「ああ」

そっか、ならよかった。

「なんだ?」
「うん? んー、ロベールが僕のためだからって、無理して付き合ってくれてるとしたらヤダなって思って……」
「なんだ、そんなこと……」
「そんなことじゃないし」

ぷくっとふくれっ面をして見せると、ロベールは苦笑いをこぼす。

「私は南の楽しそうな顏が見れるなら、たとえ本当に単なる付き合いだったとしても、それはってことにはならないんだけどな」

「…………」

ああ、こういうところ。直球でドンドンぶつけてくるところ……。ホント敵わないや。
そんな幸せそうな顔で言われたら、こっちはどんな顔を返せばいいのか分からないし。

「デ、デザート取ってくるね!」
「……ああ、行ってらっしゃい」

勢いよくガタッと席を立った僕を、ロベールは笑いながら見送った。

照れ隠しだって気がつかれちゃってるね……。

スイーツのコーナーに行くと、びっくりするくらいの種類がずらりと並んでいた。どう見ても二十種類以上はありそうだ。

とてもじゃないけど全種類は食べられそうにないな……。

仕方がないので、特に美味しそうなものをチョイスしようと吟味しながら取って行く。

あ、あのティラミス美味しそう!

僕の目の前に、ふんわりしっとりとした存在を主張するかのように、それこそ直径二十センチくらいの大きなティラミスが半分以上取られた状態で置かれている。
傍には大きなスプーンが置いてあり、どうやらそれで掬って持っていきなさいってことのようだ。

ありがたいことにティラミスは大好物だ。かなり大きめに切り込みを入れて、スプーンで上手に掬おうと意識を集中していると、背後で人の気配がする。
ティラミス待ちかな?と、急いで掬おうと焦った時、お尻をムギュッとわしづかみにされた。

背筋をおぞましい悪寒が駆け上がる。

痴漢!? こんなところで!?

両手がふさがっていたので、抗議のつもりで首だけねじって後ろを振り向いた途端、腰を掴まれ下半身を押し当てられた。

た……っ、勃ってる!?
気持ちわりーーーーーっ!!

こんなところで発情しやがんなーーーっ!!

空いてる足で思いっきり踏んづけようとした時、「グアッ!」と背後から悲鳴が聞こえた。
同時に下半身も僕から離れる。

「……ロベール」

いつの間に来たのか、ロベールが痴漢の腕を取り捻り上げていた。

「い、いたっ、いたたた」
「どういうつもりだ。他人のモノを」
「……っ、あうっ、し、しません……。もうしませんから……っ! い、痛っ、ぐうぅっ」

真っ青な顔で脂汗を滲ませながら必死で謝る痴漢を、ロベールはそれでも容赦なく締め上げていた。近くにいる人たちが、怪訝な顔で二人を見ている。

「……ロベール、ロベール! もういいよ。大丈夫だから……。みんな見てるよ」

あんまり大事にすると厄介だ。僕はロベールをなだめようと、腕を軽く叩きながら小声で諭した。

最初はそんな僕の声も耳に届かないような感じだったんだけど、それこそ近くの人たちがざわめき始めたのに気が付いて、しぶしぶといった感じでロベールは痴漢を解放した。

「二度とするなよ」
「しません、すみません。すみません」

身を小さくしてその場から慌てて離れる男の姿は、とても普段から変態行為をしている人には見えない。

「普通の人に見えても変態っているんだな……」
「…………」

え? 何?

不機嫌さに加え、まさに呆れたといった表情のロベールが僕を見ている。
そして愁いを帯びたすごく艶っぽい表情で、彼は小さなため息を吐いた。
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