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第六章

ランチデート♪ 2

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少し時間がずれているから空いてるんじゃないかなと思ってたんだけど、そうでもなかった。僕らは十五分くらい待たされて、それから中に通してもらった。

「みんなロベールのこと見ていくね」
「ん?」

言ってる傍から僕らの横を、女の人たちがほぼロベールに視線を固定したまま、コソコソ囁きながら通って行く。

「気にするな」
「まあ、そりゃさ……」
「あんなのは見飽きてる。大したことじゃない」

……!!
見飽きてる! 見飽きてるって言いましたよ、この人。

確かにこの容姿ならさあ、自信もあるだろうしそれを当然のことと思っちゃっても仕方ないのかもしれないけど。

「南に注意がいかれるよりマシだろ」
「……え?」
「女だろうが男だろうが、南に不埒な思いを寄せる輩は許せないからな」
「!!」

もうっ。なんてこと言うんだよ。……うれしいじゃないか。

「…………」
「……、な、何?」
「いや、……あんまり可愛い顔をするから。だけどここで押し倒したら拙いよなって思って」
「あ、当たり前だろ! 何考えてるんだよ! め、飯! 腹減ってるんだからな、取りに行くぞ!」
「……ククッ。はいはい」

もう! 半分は本気かもしれないけど、あれ絶対揶揄ってるよね。

いいように翻弄されているのが悔しくて、平静を装うふりをして取り皿を手に取った。その隣では、ジュージューといい音を放ちながらシェフがステーキを焼いている。

美味そう!
あ、テンション上がって来たぞ。

遠慮せずに好きなだけ取って、次を回る。スペアリブにマリネか。
サラダもあるし、んん? これは、なんだ?

「楽しそうだな」
「ふひゃっ!」

目の前の料理に夢中になっていると、突然ふわりと僕の耳元にロベールの唇が近づく。囁くように言葉を吹き込まれて、背筋に甘い痺れが走った。
一瞬お皿の中身をこぼしそうになって、冷やっとする。

「あ、危ないよ! 何、急に?」
「気にするな。ちょっかい出したくなっただけだ」
「ちょっかいって……」

あっ。
料理に夢中で気が付かなかったけど、周りの綺麗なお姉さんたちがロベールの方をチラチラ見ている。
どうやら、話しかけるタイミングを見計らっているようだ。

「ある程度取ったから、席に戻ろ?」
「そうだな」

ロベールの腕をさりげなく取って、速足で席に戻った。お姉さんたちの『あっ!』って顔に、勝手に溜飲が下がる。

席に着いてもなお、あちらこちらから視線がザクザクとロベールに注がれているみたいだけど、当の本人は本当に気にもしてないようなので、面白くないけど僕も気にしないふりを装った。

気持ちを切り替えようと、さっきの焼き立てのお肉をほおばる。

!?
うっま!  なにこれ! 
柔らかいし、肉汁すげー。

「美味い! ロベールこの肉、すっごい美味い!」
「そうか、良かったな」

燥ぐ僕に、ロベールが満足そうに微笑んだ。そんなロベールに、僕の心臓がトクンと脈打つ。

……なんだよ。
こんなところで、そんな嬉しそうな甘い微笑みなんて見せるなよな。
もぞもぞする。

フォークでお肉を刺しながらチラリと窺うと、ロベールは楽しそうに笑った。
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