上 下
79 / 93
第六章

ランチデート♪ 2

しおりを挟む
少し時間がずれているから空いてるんじゃないかなと思ってたんだけど、そうでもなかった。僕らは十五分くらい待たされて、それから中に通してもらった。

「みんなロベールのこと見ていくね」
「ん?」

言ってる傍から僕らの横を、女の人たちがほぼロベールに視線を固定したまま、コソコソ囁きながら通って行く。

「気にするな」
「まあ、そりゃさ……」
「あんなのは見飽きてる。大したことじゃない」

……!!
見飽きてる! 見飽きてるって言いましたよ、この人。

確かにこの容姿ならさあ、自信もあるだろうしそれを当然のことと思っちゃっても仕方ないのかもしれないけど。

「南に注意がいかれるよりマシだろ」
「……え?」
「女だろうが男だろうが、南に不埒な思いを寄せる輩は許せないからな」
「!!」

もうっ。なんてこと言うんだよ。……うれしいじゃないか。

「…………」
「……、な、何?」
「いや、……あんまり可愛い顔をするから。だけどここで押し倒したら拙いよなって思って」
「あ、当たり前だろ! 何考えてるんだよ! め、飯! 腹減ってるんだからな、取りに行くぞ!」
「……ククッ。はいはい」

もう! 半分は本気かもしれないけど、あれ絶対揶揄ってるよね。

いいように翻弄されているのが悔しくて、平静を装うふりをして取り皿を手に取った。その隣では、ジュージューといい音を放ちながらシェフがステーキを焼いている。

美味そう!
あ、テンション上がって来たぞ。

遠慮せずに好きなだけ取って、次を回る。スペアリブにマリネか。
サラダもあるし、んん? これは、なんだ?

「楽しそうだな」
「ふひゃっ!」

目の前の料理に夢中になっていると、突然ふわりと僕の耳元にロベールの唇が近づく。囁くように言葉を吹き込まれて、背筋に甘い痺れが走った。
一瞬お皿の中身をこぼしそうになって、冷やっとする。

「あ、危ないよ! 何、急に?」
「気にするな。ちょっかい出したくなっただけだ」
「ちょっかいって……」

あっ。
料理に夢中で気が付かなかったけど、周りの綺麗なお姉さんたちがロベールの方をチラチラ見ている。
どうやら、話しかけるタイミングを見計らっているようだ。

「ある程度取ったから、席に戻ろ?」
「そうだな」

ロベールの腕をさりげなく取って、速足で席に戻った。お姉さんたちの『あっ!』って顔に、勝手に溜飲が下がる。

席に着いてもなお、あちらこちらから視線がザクザクとロベールに注がれているみたいだけど、当の本人は本当に気にもしてないようなので、面白くないけど僕も気にしないふりを装った。

気持ちを切り替えようと、さっきの焼き立てのお肉をほおばる。

!?
うっま!  なにこれ! 
柔らかいし、肉汁すげー。

「美味い! ロベールこの肉、すっごい美味い!」
「そうか、良かったな」

燥ぐ僕に、ロベールが満足そうに微笑んだ。そんなロベールに、僕の心臓がトクンと脈打つ。

……なんだよ。
こんなところで、そんな嬉しそうな甘い微笑みなんて見せるなよな。
もぞもぞする。

フォークでお肉を刺しながらチラリと窺うと、ロベールは楽しそうに笑った。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】別れ……ますよね?

325号室の住人
BL
☆全3話、完結済 僕の恋人は、テレビドラマに数多く出演する俳優を生業としている。 ある朝、テレビから流れてきたニュースに、僕は恋人との別れを決意した。

お客様と商品

あかまロケ
BL
馬鹿で、不細工で、性格最悪…なオレが、衣食住提供と引き換えに体を売る相手は高校時代一度も面識の無かったエリートモテモテイケメン御曹司で。オレは商品で、相手はお客様。そう思って毎日せっせとお客様に尽くす涙ぐましい努力のオレの物語。(*ムーンライトノベルズ・pixivにも投稿してます。)

【完結】僕の大事な魔王様

綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
BL
母竜と眠っていた幼いドラゴンは、なぜか人間が住む都市へ召喚された。意味が分からず本能のままに隠れたが発見され、引きずり出されて兵士に殺されそうになる。 「お母さん、お父さん、助けて! 魔王様!!」 魔族の守護者であった魔王様がいない世界で、神様に縋る人間のように叫ぶ。必死の嘆願は幼ドラゴンの魔力を得て、遠くまで響いた。そう、隣接する別の世界から魔王を召喚するほどに……。 俺様魔王×いたいけな幼ドラゴン――成長するまで見守ると決めた魔王は、徐々に真剣な想いを抱くようになる。彼の想いは幼過ぎる竜に届くのか。ハッピーエンド確定 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/11……完結 2023/09/28……カクヨム、週間恋愛 57位 2023/09/23……エブリスタ、トレンドBL 5位 2023/09/23……小説家になろう、日間ファンタジー 39位 2023/09/21……連載開始

平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです

おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの) BDSM要素はほぼ無し。 甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。 順次スケベパートも追加していきます

同僚に密室に連れ込まれてイケナイ状況です

暗黒神ゼブラ
BL
今日僕は同僚にごはんに誘われました

平凡な男子高校生が、素敵な、ある意味必然的な運命をつかむお話。

しゅ
BL
平凡な男子高校生が、非凡な男子高校生にベタベタで甘々に可愛がられて、ただただ幸せになる話です。 基本主人公目線で進行しますが、1部友人達の目線になることがあります。 一部ファンタジー。基本ありきたりな話です。 それでも宜しければどうぞ。

オメガなパパとぼくの話

キサラギムツキ
BL
タイトルのままオメガなパパと息子の日常話。

見ぃつけた。

茉莉花 香乃
BL
小学生の時、意地悪されて転校した。高校一年生の途中までは穏やかな生活だったのに、全寮制の学校に転入しなければならなくなった。そこで、出会ったのは… 他サイトにも公開しています

処理中です...