フェロモン? そんなの僕知りません!!

くるむ

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第六章

ランチデート♪

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冷たい水を飲み終え一息ついて、ちょっぴりウトウト。ロベールに髪を撫でられながら、瞼を閉じた。
いい感じに微睡み始めたころ、僕のお腹からキュウ~と大きな音が鳴る。

うわ、ハズッ!

慌ててお腹辺りを抑えるけれど、ロベールにはすでに聞こえている。(当たり前か……)

「腹、減ったか?」
「うん……。ロベールは?」

僕が問いかけると、ロベールは艶やかな甘い笑みを見せる。
ゾクリと下腹部に甘い疼きがよみがえり、僕は慌てて気持ちを他に散らそうとプルプルと首を横に振った。

もう、ロベールってば人間離れした妖艶さなんだもん。……あ、そっか。人間じゃなかった。

「私はさっき甘く濃い南を堪能したからな」
「え?」

ちょ、それって……!
うわー、バカ! なんてこと言うんだよっ!

カーッと一気に顔に熱が集まった。
真っ赤だろう僕を見て、ロベールは楽しそうに笑う。

「ここに運んで来てもらうか? それとも外に出るか?」
「うーん」

ここで、いちゃいちゃしながら食べるのもいいけど、でもロベールのことだからなあ。
さっきは甘えたかったしキスしたくて、結果誘うようなことになっちゃったけど……。

「外で食べよっか。ロベールとどっかで食事って、したことないもんな」
「分かった」

ロベールは頷いて、僕を引き寄せ起こしてからベッドを降りた。僕もロベールの後に続く。


「どこに行きたい?」

ホテルを出てぐるっと辺りを見回して、それからロベールは僕に視線を戻した。

この辺は駅前ということもあり飲食店の数は多い。
だけど今日はあんまりお金を持ってきていなかったので、普通にファーストフードでいいかと馴染みの店を探す。

「決まったか?」
「うん。ハンバーガーでいい? 僕今日あんまりお金持ってきてないんだ。お昼ご飯のことすっかり忘れてて」
「いらん心配するな。金なら私が持ってる」
「え?」
「忘れたのか? 私は保健医だぞ。給料というものはちゃんともらっている」
「あ……」

そうだった。
てっきりロベールのことだから、また変な力使って無銭飲食をする気かと思ってた。

「で、どこに行きたい?」
「ええっと……。本当にどこでもいいの?」
「ああ」
「じゃあ、じゃああのホテルの、ランチビュッフェに行きたい」

僕が指さしたのは、食事が美味しいとこの辺りでは有名なホテルで、値段はほんのちょっぴりお高め。
あんまり高級なところでは僕が浮いちゃうからパスだけど、でもロベールと一緒だから本当は感じの良いところに行けたらなって思っていたんだ。

「了解。じゃ行くか」
「うん」

ホテルに向かって歩き出すロベールに僕も並ぶ。

背も高く、まるでモデルのような存在感を放ちながら歩くロベールを、道行く人たちがほぼ全員、驚いたように振り返る。そして呆けたようにロベールに見惚れていた。

……老若男女問わずに、ほぼ全員を釘付けにしているんだもん。大したもんだよ。

「こら」
「えっ?」

急に腕を引っ張られて、びっくりした。

「余所見ばっかしてるんじゃない、危ないだろ」
「……あ、うん」

確かに。
知らないうちに僕の足は車道に近づいていた。素直にうなずいて、僕は視線を前に向けて歩き始める。

「あの、ロベール……」
「なんだ?」

もう周りに気を取られずにちゃんと前を向いて歩いてるんだけど、ロベールの手は僕の腕を掴んだままだ。

「手、もう大丈夫だよ?」
「引率だ」
「や、でもさ……」
「手を握ってるわけじゃないから、いいだろ」

ぞくり。

急に声が甘く低くなって、背筋に甘い痺れが走る。
そっとロベールを見上げると、目を眇めてなんだか意味深な表情だ。

なんだよ……。

もうっ!

逆にギューッて、こっちの方からロベールの腕にしがみついてやった。
もちろん一瞬。
一応男同士だし、他人の目あるし。

「…………」

でも、成功だったかな?
だって、ロベールったら僕のその一瞬の行動に、呆けたような表情になったんだもん。

そしてその後、ロベールは楽しそうに笑って僕の頭をぐしゃぐしゃと撫でまわした。

「さ、急ぐか。腹、減ってんだろ?」
「うん。……あ~、思い出したら余計に腹減って来たよ」

僕の情けない声にロベールが明るく笑う。

そして僕らはホテルのレストランへと足を速めた。
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