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第六章

引っ越し、準備のはずなんですが 4

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ちゃぽん。

「…………」

ええっと、気が付いたらですね……。
なぜかロベールの膝の上で、湯船に浸かっているんですけど……。

「南……」

うわわわわわ。

ロベールが背後から僕をキュッと抱きしめて、耳元で吐息交じりに僕の名を呼ぶ。
甘く、すごく優しい声だ。
どうしよう。ロベールは僕が眠ってるって思ってるんだよね?
別に起きたことを知らせればいいことなんだろうけど、全裸でこんなふうにされてる最中だからなんだか恥ずかしい。
気まずい僕は、眠ったふりを続けようと決心した。
……んだけど。

スルッ。
ピクン!

スルスル。
ビグビクン!

ちょ……! 何してんだよ、ロベール!

背後から僕を抱きしめていた片方の手が、急に僕の体を触り始めた。わき腹やへその周り、そしてそれは怪しくゆっくりと下降していく。

ちょっと! そこはヤバいだろ!

勝手に手が動いて、ロベールのいたずらな手をパシッと止めた。ロベールは、まだ僕が眠っていたと思っていたんだろう。驚いたように一瞬動きを止めた。

「起きたか」
「……起きちゃったよ」

知らないうちにこんな恥ずかしい状態の真っただ中にいることを抗議するように、唇を尖らせてロベールを見た。

「――何をいまさら」

むうっ。

「南のことはとっくに、この手もこの唇も、隅々まで知ってるのに?」
「ひゃあっ! ロ、ロベール!」

いたずらっぽく微笑みながら、手のひらで僕の体をスルスルと撫でる。
もうっ!

怒って体を起き上がらせるように動かしたら、一瞬クラッとした。
アレ?

「南? もしかして上せたか?」

焦ったロベールが僕をそのままお姫様抱っこして、ザブンと勢い良く立ち上がった。

「あ……、うん。大丈夫、ちょっと立ち眩みに近い感じがしただけだから」
「悪かったな。南が可愛いから、ついつい離したくなくて」

そう言いながらロベールは、僕を抱いたまま浴槽から出て浴室の扉を開けた。前方から勝手にタオルが飛んできて、僕らの体に纏わりつき体の水けを取っていく。

横着してるなあ。……それとも、これが普通のロベールの日常なんだろうか。

「大丈夫か、南。水、飲むか?」
「うん、欲しい」

僕がコクンと頷くと、ロベールは簡易冷蔵庫からミネラルウォーターを取ってくれた。

「ありがとう。でもその前に」
「なんだ?」
「服着たい」
「…………」

ちょっと、なんでそこで止まるの。
ロベールも全裸のままだよ。気にならないの?

顎に手を当て、じいーっと何かを考えるそぶりを見せた後、ふうっとロベールは一息吐いた。

「仕方ないか。風邪ひいたら拙いもんな」
「…………」

しぶしぶといった感じでロベールは僕の服を取ってきてくれて、ついでに自分も服を着始めた。

僕が言わなきゃ、二人ともこのまま全裸のままだったの?
裸族じゃないんだから……。

よく冷えたミネラルウォーターを飲みながら、僕は心の中でこっそり苦笑した。
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