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第六章

引っ越し、準備のはずなんですが

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「さて……と、少しのんびりしていくか?」
「え? まずは荷物まとめないと」
「ああ、それなら必要ない。服の移動くらい簡単に出来るし。一応南の両親に違和感を覚えさせないために二つほどスーツケースは準備しておいたけど」

そう言って、ほらと指さす先にあるスーツケースを僕は何げなく持ってみた。

「あれ? そんなに重くないね」
「二着ほどしか入っていないからな。力を使えば簡単に移動できるんだ。ダミー程度に入れておけばいいだろ」
「……でも、大丈夫なの? 余計な力を使ったら見つかって拙いとか言ってなかったっけ?」

「ああ、それ……。大丈夫だ。マクグラスもスノウにも居場所はとうにばれてるし。他にこんな微細な力まで、追ってくるような奴はいないだろ。なんの問題もない」

「そう……、なんだ」

ポフンとベッドに寝転んでみた。
いつもロベールが眠っていたベッドだ。

天井を仰いでいると、視界にスッとロベールの顔が入ってきた。

「誘ってるのか?」
「……そんなんじゃないけど」
「けど?」

腹筋を使い上半身を浮かせて、両手をロベールの背のあたりに回した。
目を見開くロベールに笑って、僕は伸びあがりチュッと軽く唇を啄んだ。

「……お前、まあいいか」

ほぼ唇をつけた状態で呟いた後、ロベールは僕の頬を包むように撫でながら今度はロベールの方から唇を寄せてきた。
柔らかくしっとりと合わさった後、貪るように深いキスへ。
何度も何度も絡み合う舌の動きに、そればかりに意識が集中していたのに、突然わき腹あたりにロベールの手のひらの感触が現れて、ピクンと反射的に体が跳ねた。

「甘い。……匂い立ってきたな」
「……っ、んっ!」

首元に唇を移動させ、息を吸い込むようなしぐさをする。そしてそこに何度も吸い付き舌を這わせ、ロベールはどんどん僕の体を下降していく。
前開きのシャツなんて、もうとっくに全部ボタンを外されて、僕の肌は露になっていた。

キスして抱きしめてもらうだけで本当は満足なんだけど、だけどロベールがそれだけで我慢してくれるわけがなかった。

「ん……、ああっ!」

胸の突起を唇で挟まれて、甲高い声が出た。思いもよらない大きな声にびっくりして、とっさに両手で口を覆う。

「南」

甘く、だけど責めるような低音ボイス。
スッと手が伸びてきて両手を引きはがされた。

「隠すな」
「だ……、だって」
「南が私に感じている声だ。しっかり聞かせろ」
「~~~~、だから恥ずかしいんじゃないか……っ」

レースのカーテン越しに、さんさんと陽が入ってきている。もしかしたらこの眩しすぎる健全な雰囲気が、いつもより羞恥を増させているのかもしれない。
……ロベールを煽るような真似しちゃったのは、失敗だったかもしれない……。

くにっ。
「あ、んっ……!」

くにくにっ。
「ん……、んんっ、やあっ!」

もう……、恥ずかしいって言ってるのに!
涙目で睨んだのに、目があったロベールは逆にうれしそうな顔をした。

「可愛いな」
「……あっ」
「可愛い、南」
「……、やっ、あ……、んんん……」

失敗した? 変なスイッチ押しちゃった!?

ロベールは僕の胸をまるでキャンディでも舐めるように唇に含み、しつこく舐めたり吸い付いたり甘噛みしたり……、そして手のひらはわき腹から胸元へと、するすると何度も撫でまわしていた。
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