フェロモン? そんなの僕知りません!!

くるむ

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第六章

いよいよ引っ越し♪ 2

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「じゃあ、行ってきまーす」
「行ってらっしゃい。ちゃんとお手伝いしなさいよ」
「分かってるって!」

両親に見送られて、僕らはロベールの引っ越し作業へと出かけた。

「初めてだね」
「何が?」
「ロベールの家に行くことだよ」

クリンと顔をロベールに向けてそう言うと、目が合った彼は苦笑いをした。

「がっかりするぞ」
「え? なんで?」
「……行けば分かる」

四十分くらい歩いただろうか。駅前の大通りにつく。

「あれだ。今はあのビジネスホテルの一室に住んでいる」
「え!? なんで? お金かかるだろ!」
「金なんて払っていない。好意で泊まらせてもらっている」
「ええ!? 好意? 何それ……、あ……」

驚いて見上げる僕を、ロベールが冗談だよと顔で訴えている。
変な笑い方!

「正直なところ、トイレと風呂と服を置いておく場所さえあれば私は別にどんな環境でも構わないんだ。寝るのなんて木の上で十分だし。そう考えたら、ホテルの一室を堂々と間借りさせてもらった方が手っ取り早いかと思ったんだよ」

なるほど……。いつものアレね。

「ほら、行くぞ」
「あ、待ってよ」

長い脚でスタスタと、ロベールは迷いなくフロントへと一直線だ。そしてまるでオーナーの如く、彼女らからすんなりカギを受け取った後、「ご苦労」と言わんばかりに片手をあげて挨拶をした。そして僕の肩に腕を回してエレベーターへと向かった。

「なんだか客じゃないみたいな振る舞いだったね」
「客じゃないからな。彼らは私のことを会長かなんかだと思っているだろう」

しれっとそう言って、ロベールは廊下の一番奥の部屋を開けた。
中は普通にこじんまりとしたビジネスホテルの一室だ。取り立てて別に広くも無く豪華でもなかった。

「ねえ、ロベール」
「なんだ?」
「……ロベールはずっとこんなふうにホテルを渡り歩いていたの?」
「――いや、前は適当にしていた」
「適当……?」
「ああ」

言葉を濁してはっきりと言おうとしないロベールをじっと見つめていると、にょきっと手が伸びてきて、頭をわしゃわしゃとされた。

「もう~、何だよロベール……」

よく見ると、ロベールの表情はちょっぴり自嘲気味だ。
……ああ、そういうことか。

「……南の存在を知って、手に入れたいと思った時にここに越してきた。本気で欲しいと思ったから、適当はもう止めようと思ったんだよ」
「ロベール……」

僕の……、ために?

――これから先の未来は南だけのものだ。

確か、そんなようなことを言ってくれてたよな。

過去のことが気にならないと言ったら嘘になるし、めっちゃ気にはなるけど。
それでも。

今、僕の胸の中は凄く温かくなっているから、素直にロベールに凭れかかり、僕はロベールの手のひらをギュッと握った。
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