上 下
68 / 93
第五章

ロベールVSスノウ 2

しおりを挟む
スノウの苦悶の表情と、空中で足をもがきジタバタする姿は滑稽を通り越して恐ろしい。しがみつきながらスノウを窺う僕の様子に気づいたロベールは、スノウを徐々に床へと下ろした。だが、どうやらまだ自由にはしていないようだ。

「ダイガンに引き渡すか?」

ボソリと呟くロベールに、スノウの表情が一変した。

「はあ!? お前、魔界には出禁だろ! てか、追放された身で何言ってんだ!」

「門番に引き渡すくらいは可能だろう。しかもあいつは秩序に厳しいから、お前が勝手に抜け道を使ったと知ったら怒り狂うぞ? どうする?」
「……分かった。おとなしく魔界に帰る」
「本当だな?」
「……本当だ」

スノウは返事をしたとたん、崩れるように蹲った。どうやらやっとロベールから解放されたようだ。
そして数分後、ふっと息を吐いて体の力を抜いた後、スッと立ち上がった。

「邪魔したな」

そう言って一瞬のうちにスノウは消えた。
そこでようやく僕の力も抜ける。

良かった。これでもう、何の心配もないか……。

「ロベール、ありが……」
「ちょっと待て」
「え?」

安心して脱力する僕の横で、ロベールは何かを追うように一点に意識を集中しているようだった。その様子は、スノウの行先を追いかけているかのようだ。

じっと集中すること数分。ロベールは、ふうっと息を吐いてこちらに視線を向けた。

「どうやらちゃんと帰ったようだ」
「すごい、本当に分かるの?」
「……場合によるけどな。障害物が多かったり、たくさんの気が行きかう中では見失っちまうこともあるし。だが、今のスノウは空中まで飛んで、それから魔界に向かったようだったから意識を追いやすかった……」

僕に説明をしながら、なぜだかロベールの表情が曇る。

「どうかしたの?」
「――ああ、いや。考えすぎだろう。大丈夫だ」

そう言いながらもどこかスッキリしないロベールを小首を傾げながら眺めていると、そんな僕に気づいたロベールが額をコツンと軽く叩いた。

「ロベール……」

優しい目で僕を見ているロベールに堪らなくなる。自分からムギュッと抱き着いて、ロベールの体温をしっかりと感じる。その熱さが、すごく心地よかった。

「南、お前……」
「何……?」

「誘ってるのはお前だからな」
「え?」
「……気づいてないのか。甘くて濃いフェロモンが漂い始めている」
「ええっ!?」

「……フッ。まあ、いい。……いただきます」
「…………」

妖艶にほほ笑んだロベールが、しっとりと唇を重ね合わせる。

そしてそのままベッドに押し倒されて、僕とロベールは何度も何度もキスを交わした。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

お見合い相手はお医者さん!ゆっくり触れる指先は私を狂わせる。

すずなり。
恋愛
母に仕組まれた『お見合い』。非の打ち所がない相手には言えない秘密が私にはあった。「俺なら・・・守れる。」終わらせてくれる気のない相手に・・私は折れるしかない!? 「こんな溢れさせて・・・期待した・・?」 (こんなの・・・初めてっ・・!) ぐずぐずに溶かされる夜。 焦らされ・・焦らされ・・・早く欲しくてたまらない気持ちにさせられる。 「うぁ・・・気持ちイイっ・・!」 「いぁぁっ!・・あぁっ・・!」 何度登りつめても終わらない。 終わるのは・・・私が気を失う時だった。 ーーーーーーーーーー 「・・・赤ちゃん・・?」 「堕ろすよな?」 「私は産みたい。」 「医者として許可はできない・・!」 食い違う想い。    「でも・・・」 ※お話はすべて想像の世界です。出てくる病名、治療法、薬など、現実世界とはなんら関係ありません。 ※ただただ楽しんでいただけたら幸いです。 ※コメントや感想は受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 それでは、お楽しみください。 【初回完結日2020.05.25】 【修正開始2023.05.08】

目覚めたらヤバそうな男にキスされてたんですが!?

キトー
BL
傭兵として働いていたはずの青年サク。 目覚めるとなぜか廃墟のような城にいた。 そしてかたわらには、伸びっぱなしの黒髪と真っ赤な瞳をもつ男が自分の手を握りしめている。 どうして僕はこんな所に居るんだろう。 それに、どうして僕は、この男にキスをされているんだろうか…… コメディ、ほのぼの、時々シリアスのファンタジーBLです。 【執着が激しい魔王と呼ばれる男×気が弱い巻き込まれた一般人?】 反応いただけるととても喜びます! 匿名希望の方はX(元Twitter)のWaveboxやマシュマロからどうぞ(⁠^⁠^⁠)  

初恋を諦めるために惚れ薬を飲んだら寵妃になった僕のお話

トウ子
BL
惚れ薬を持たされて、故国のために皇帝の後宮に嫁いだ。後宮で皇帝ではない人に、初めての恋をしてしまった。初恋を諦めるために惚れ薬を飲んだら、きちんと皇帝を愛することができた。心からの愛を捧げたら皇帝にも愛されて、僕は寵妃になった。それだけの幸せなお話。 2022年の惚れ薬自飲BL企画参加作品。ムーンライトノベルズでも投稿しています。

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜

飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。 でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。 しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。 秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。 美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。 秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。

今日の授業は保健体育

にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり) 僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。 その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。 ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。

親友と同時に死んで異世界転生したけど立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話

gina
BL
親友と同時に死んで異世界転生したけど、 立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話です。 タイトルそのままですみません。

異世界転生先でアホのふりしてたら執着された俺の話

深山恐竜
BL
俺はよくあるBL魔法学園ゲームの世界に異世界転生したらしい。よりにもよって、役どころは作中最悪の悪役令息だ。何重にも張られた没落エンドフラグをへし折る日々……なんてまっぴらごめんなので、前世のスキル(引きこもり)を最大限活用して平和を勝ち取る! ……はずだったのだが、どういうわけか俺の従者が「坊ちゃんの足すべすべ~」なんて言い出して!?

放課後教室

Kokonuca.
BL
ある放課後の教室で彼に起こった凶事からすべて始まる

処理中です...