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第五章
ロベールVSスノウ 2
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スノウの苦悶の表情と、空中で足をもがきジタバタする姿は滑稽を通り越して恐ろしい。しがみつきながらスノウを窺う僕の様子に気づいたロベールは、スノウを徐々に床へと下ろした。だが、どうやらまだ自由にはしていないようだ。
「ダイガンに引き渡すか?」
ボソリと呟くロベールに、スノウの表情が一変した。
「はあ!? お前、魔界には出禁だろ! てか、追放された身で何言ってんだ!」
「門番に引き渡すくらいは可能だろう。しかもあいつは秩序に厳しいから、お前が勝手に抜け道を使ったと知ったら怒り狂うぞ? どうする?」
「……分かった。おとなしく魔界に帰る」
「本当だな?」
「……本当だ」
スノウは返事をしたとたん、崩れるように蹲った。どうやらやっとロベールから解放されたようだ。
そして数分後、ふっと息を吐いて体の力を抜いた後、スッと立ち上がった。
「邪魔したな」
そう言って一瞬のうちにスノウは消えた。
そこでようやく僕の力も抜ける。
良かった。これでもう、何の心配もないか……。
「ロベール、ありが……」
「ちょっと待て」
「え?」
安心して脱力する僕の横で、ロベールは何かを追うように一点に意識を集中しているようだった。その様子は、スノウの行先を追いかけているかのようだ。
じっと集中すること数分。ロベールは、ふうっと息を吐いてこちらに視線を向けた。
「どうやらちゃんと帰ったようだ」
「すごい、本当に分かるの?」
「……場合によるけどな。障害物が多かったり、たくさんの気が行きかう中では見失っちまうこともあるし。だが、今のスノウは空中まで飛んで、それから魔界に向かったようだったから意識を追いやすかった……」
僕に説明をしながら、なぜだかロベールの表情が曇る。
「どうかしたの?」
「――ああ、いや。考えすぎだろう。大丈夫だ」
そう言いながらもどこかスッキリしないロベールを小首を傾げながら眺めていると、そんな僕に気づいたロベールが額をコツンと軽く叩いた。
「ロベール……」
優しい目で僕を見ているロベールに堪らなくなる。自分からムギュッと抱き着いて、ロベールの体温をしっかりと感じる。その熱さが、すごく心地よかった。
「南、お前……」
「何……?」
「誘ってるのはお前だからな」
「え?」
「……気づいてないのか。甘くて濃いフェロモンが漂い始めている」
「ええっ!?」
「……フッ。まあ、いい。……いただきます」
「…………」
妖艶にほほ笑んだロベールが、しっとりと唇を重ね合わせる。
そしてそのままベッドに押し倒されて、僕とロベールは何度も何度もキスを交わした。
「ダイガンに引き渡すか?」
ボソリと呟くロベールに、スノウの表情が一変した。
「はあ!? お前、魔界には出禁だろ! てか、追放された身で何言ってんだ!」
「門番に引き渡すくらいは可能だろう。しかもあいつは秩序に厳しいから、お前が勝手に抜け道を使ったと知ったら怒り狂うぞ? どうする?」
「……分かった。おとなしく魔界に帰る」
「本当だな?」
「……本当だ」
スノウは返事をしたとたん、崩れるように蹲った。どうやらやっとロベールから解放されたようだ。
そして数分後、ふっと息を吐いて体の力を抜いた後、スッと立ち上がった。
「邪魔したな」
そう言って一瞬のうちにスノウは消えた。
そこでようやく僕の力も抜ける。
良かった。これでもう、何の心配もないか……。
「ロベール、ありが……」
「ちょっと待て」
「え?」
安心して脱力する僕の横で、ロベールは何かを追うように一点に意識を集中しているようだった。その様子は、スノウの行先を追いかけているかのようだ。
じっと集中すること数分。ロベールは、ふうっと息を吐いてこちらに視線を向けた。
「どうやらちゃんと帰ったようだ」
「すごい、本当に分かるの?」
「……場合によるけどな。障害物が多かったり、たくさんの気が行きかう中では見失っちまうこともあるし。だが、今のスノウは空中まで飛んで、それから魔界に向かったようだったから意識を追いやすかった……」
僕に説明をしながら、なぜだかロベールの表情が曇る。
「どうかしたの?」
「――ああ、いや。考えすぎだろう。大丈夫だ」
そう言いながらもどこかスッキリしないロベールを小首を傾げながら眺めていると、そんな僕に気づいたロベールが額をコツンと軽く叩いた。
「ロベール……」
優しい目で僕を見ているロベールに堪らなくなる。自分からムギュッと抱き着いて、ロベールの体温をしっかりと感じる。その熱さが、すごく心地よかった。
「南、お前……」
「何……?」
「誘ってるのはお前だからな」
「え?」
「……気づいてないのか。甘くて濃いフェロモンが漂い始めている」
「ええっ!?」
「……フッ。まあ、いい。……いただきます」
「…………」
妖艶にほほ笑んだロベールが、しっとりと唇を重ね合わせる。
そしてそのままベッドに押し倒されて、僕とロベールは何度も何度もキスを交わした。
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