フェロモン? そんなの僕知りません!!

くるむ

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第五章

下宿決定!

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その後、すぐに父さんが帰って来た。出迎えに出た母さんと玄関先で何やら話をしてリビングに入って来た時は、もう二人してロベールを下宿させてもいいかという方向になっていた。

「ロベール先生、こんばんは。お待たせしました」
「こんばんは。初めまして。こちらこそ、お邪魔しています」

父さんの顔を見てパッと立ち上がったロベールを、座るように促して言葉をつづけた。

「どうやら家内は、先生を下宿させてもいいと思ったようです。私にも異論は無いので、いつでも越してきてください。部屋はすぐに使える状態ですから」

「ありがとうございます」
「いやいや、こちらこそ礼を言わなくては! 脅されている南を助けてくれたとか。その節は本当にありがとうございました」
「……え? ああ、いえ。あれはたまたま通りがかっただけで、大したことではありませんから」
「それでも、助けていただいたことに間違いはありません。……もしよければ、今日夕飯を一緒にどうですか?」
「え? 有難いですけどご迷惑では……?」
「いやいや、母さん! 一人分くらい大丈夫だろ?」
「大丈夫ですよ。先生、どうぞ」
「……それでは、お世話になります」


なんてね。人を誑かすのはお手の物だろうと思っていたから、やっぱさすがロベールだなーとは思ってたんだけど……。

「お父さん上機嫌ね」
「だよね」

ロベールが酒がいける口だと分かり、父さんはいそいそと晩酌に入った。誰かと酔う楽しさってのが、酒飲みにはきっとあるのだろう。いつもより楽しそうな父さんは、いつもよりたくさんお酒を飲んでいるような気がする。

「先生! 先生ー!!」
バシバシ!

酔っぱらいの勢いで、父さんがロベールの肩を叩いている。
……あれは結構、痛いんじゃないか?

「はいはい。聞いてますよ」
「母さん、つまみ追加ー!」

グラスを片手に、ゆらゆらと揺らして上機嫌の父さんが大声を出す。それに軽く眉間にしわを寄せた母さんが、近づいていきそのグラスを奪った。

「もう、飲み過ぎですよ。今日はお開きです! ……先生もすみませんね、付き合わせてしまって」
「ああ、いえ。楽しかったです」
「そうかー。そうかー。君は良い人だなあ……。もう遅いし、今日は泊って行きなさい。……ん~、良い人だぁ……。……グー」
「ちょっと、お父さん! そんなとこで寝られたら困るわ。ほら、起きて、起きて頂戴!」
「グゥゥー……」

「…………」
「…………」

呆れる父さんのつぶれ具合に、ロベールと顔を見合わせた。

「寝室はどこですか? よければ私が運びます」
「……まあ、本当にすみません。じゃあお言葉に甘えて……」

よいしょと父さんを担いだロベールを、母さんが寝室へと先導した。

そして、おかげさまでロベールは、このまま家に泊まることが決まったのだ。
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