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第五章
閑話(スノウ視点)
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あれは本当に美味そうだ――。
ロベールのあの人間への惚れ込み具合には驚いたが、あれだけ美味そうなフェロモンを持っているのなら合点はいく。
とは言っても、俺はあんな風に本気になったりはしないがな。
全く、滑稽だ。
あれが以前、次期魔王として崇められていた今の姿とは。
しばらく気配を消して傍で様子を窺ってはいたが、その後どんなに待っても一向にあの甘くて濃いフェロモンは匂い立ってはこなかった。
どうやらロベールは、あの美味そうな餌に手を出さずに眠ってしまったらしい。らしくない、かつての奔放で我が強く猛々しい従兄の今の姿に心底あきれた。
だがそれと同時に、「厄介だ」とも思った。
俺はアレを諦める気は無い。
あの美味そうな気持のいいエネルギーの源を、目の前にまでしていて味わわないという選択肢なんてあるはずがない。
だからこそ、あの本気なロベールは心底邪魔で鬱陶しい。
「キーーーーーーー」
夜空の向こうから、放っていた使い魔が俺の元に戻って来た。
「どうだった? ダルは見つかったか?」
「事故に遭ったのか、死んでいました」
「死んでた……?」
「はい」
「そうか。……奴は知能が低かったからな。仕方がないか」
「はい」
「ご苦労。お前は戻っていろ。俺はもう少しここにいるから、もしも兄上たちが騒ぎ始めたら知らせてくれ」
「畏まりました」
止まっていた枝から羽ばたいて、ソタは魔界へと消えて行く。
「さあてと……、どうやってあの餌にありつこうか」
久しぶりの狩りに、俺は心底ぞくぞくしていた。
ロベールのあの人間への惚れ込み具合には驚いたが、あれだけ美味そうなフェロモンを持っているのなら合点はいく。
とは言っても、俺はあんな風に本気になったりはしないがな。
全く、滑稽だ。
あれが以前、次期魔王として崇められていた今の姿とは。
しばらく気配を消して傍で様子を窺ってはいたが、その後どんなに待っても一向にあの甘くて濃いフェロモンは匂い立ってはこなかった。
どうやらロベールは、あの美味そうな餌に手を出さずに眠ってしまったらしい。らしくない、かつての奔放で我が強く猛々しい従兄の今の姿に心底あきれた。
だがそれと同時に、「厄介だ」とも思った。
俺はアレを諦める気は無い。
あの美味そうな気持のいいエネルギーの源を、目の前にまでしていて味わわないという選択肢なんてあるはずがない。
だからこそ、あの本気なロベールは心底邪魔で鬱陶しい。
「キーーーーーーー」
夜空の向こうから、放っていた使い魔が俺の元に戻って来た。
「どうだった? ダルは見つかったか?」
「事故に遭ったのか、死んでいました」
「死んでた……?」
「はい」
「そうか。……奴は知能が低かったからな。仕方がないか」
「はい」
「ご苦労。お前は戻っていろ。俺はもう少しここにいるから、もしも兄上たちが騒ぎ始めたら知らせてくれ」
「畏まりました」
止まっていた枝から羽ばたいて、ソタは魔界へと消えて行く。
「さあてと……、どうやってあの餌にありつこうか」
久しぶりの狩りに、俺は心底ぞくぞくしていた。
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