上 下
55 / 93
第四章

一番信頼している

しおりを挟む
久しぶりに感じるロベールとのキス。優しく何度も唇を押し当てた後、お互い貪るような深いキスへと移行した。
伸びあがってロベールの腕にしっかりと掴まり、夢中で舌を絡めあった。

「南……」
甘く掠れたロベールの声。僕の好きな、僕を求めるロベールの声だ。

「やはりお前のフェロモンは心地がいいな」

僕の背中に回していた片方の掌が、お尻の方へと下降した。その掌にぐっと力を入れた後、僕のうなじに唇を寄せて深く息を吸い込む。

「……甘くて癒されて、力が漲る」
「ロベール……」

僕もこうやってロベールとキスしたりくっ付いたりしてるのって、すごく嬉しいから……、きっと僕も同じだ。
しばらく見つめあっていると、ロベールがクスリと笑った。

「あんまりくっ付いていると拙いな。しばらくの辛抱だ。南はそこのベッドにでも腰かけてろ」
「うん」

確かに、このままここで盛り上がっちゃったら拙いよな。もしも運動部の誰かがケガしたとか言って治療に来たりしたら……、想像しただけで恐ろしい。


幸い、放課後に飛び込んでくるケガ人とかはいなかったので、のんびりと他愛のない話をしながら寛げた。
時間になったので、そろそろ帰ろうかと保健室を閉めて帰路に就く。

「ねえ、ロベール」
「なんだ?」
「今日下宿のこと話すだろ? そしたらどんなに早くても越してこれるのは明日か明後日じゃん? 今日はどうするの?」
「こないだみたいにこっそり入り込むさ。心配することは無い」

にっこりとほほ笑んでそう告げるロベールにキュウンとした。
ああもう、本当に。完璧にやられちゃってるよね。

人通りがあまりないし、薄暗くなった帰り道だ。僕はロベールの手に自分の手を寄せて、そっと握った。ロベールはそんな僕をチラッと横目で見て微笑み、キュッと僕の掌を握り返してくれた。

ほわほわと雲の上でも歩いているような気分だ。
怖いことも面倒なことも、ロベールさえ傍にいてくれれば何もかもが大丈夫な気持ちになってくる。
信頼、仕切っちゃってるんだよなー、本当に。

家に到着し、ロベールは勝手に部屋に入ると言うので僕はそのまま玄関へと向かった。

「ただいまー」
「おかえり、南」

僕の声に反応して、母さんが台所からひょいと顔を出した。

「ねえ、母さん、話があるんだけど」
「なに? あー、それより先に手を洗って着替えてきなさい。すぐご飯出来るから、食事の時に聞くわ」
「……分かった」

そうだよな。
焦らない、焦らない。

こっそり深呼吸をして、僕は言われたとおりに手を洗い自分の部屋へと駆けこんだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

そばにいてほしい。

15
BL
僕の恋人には、幼馴染がいる。 そんな幼馴染が彼はよっぽど大切らしい。 ──だけど、今日だけは僕のそばにいて欲しかった。 幼馴染を優先する攻め×口に出せない受け 安心してください、ハピエンです。

親友と同時に死んで異世界転生したけど立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話

gina
BL
親友と同時に死んで異世界転生したけど、 立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話です。 タイトルそのままですみません。

【完結】糸と会う〜異世界転移したら獣人に溺愛された俺のお話

匠野ワカ
BL
日本画家を目指していた清野優希はある冬の日、海に身を投じた。 目覚めた時は見知らぬ砂漠。――異世界だった。 獣人、魔法使い、魔人、精霊、あらゆる種類の生き物がアーキュス神の慈悲のもと暮らすオアシス。 年間10人ほどの地球人がこぼれ落ちてくるらしい。 親切な獣人に助けられ、連れて行かれた地球人保護施設で渡されたのは、いまいち使えない魔法の本で――!? 言葉の通じない異世界で、本と赤ペンを握りしめ、二度目の人生を始めます。 入水自殺スタートですが、異世界で大切にされて愛されて、いっぱい幸せになるお話です。 胸キュン、ちょっと泣けて、ハッピーエンド。 本編、完結しました!! 小話番外編を投稿しました!

獣のような男が入浴しているところに落っこちた結果

ひづき
BL
異界に落ちたら、獣のような男が入浴しているところだった。 そのまま美味しく頂かれて、流されるまま愛でられる。 2023/04/06 後日談追加

僕を拾ってくれたのはイケメン社長さんでした

なの
BL
社長になって1年、父の葬儀でその少年に出会った。 「あんたのせいよ。あんたさえいなかったら、あの人は死なずに済んだのに…」 高校にも通わせてもらえず、実母の恋人にいいように身体を弄ばれていたことを知った。 そんな理不尽なことがあっていいのか、人は誰でも幸せになる権利があるのに… その少年は昔、誰よりも可愛がってた犬に似ていた。 ついその犬を思い出してしまい、その少年を幸せにしたいと思うようになった。 かわいそうな人生を送ってきた少年とイケメン社長が出会い、恋に落ちるまで… ハッピーエンドです。 R18の場面には※をつけます。

すてきな後宮暮らし

トウ子
BL
後宮は素敵だ。 安全で、一日三食で、毎日入浴できる。しかも大好きな王様が頭を撫でてくれる。最高! 「ははは。ならば、どこにも行くな」 でもここは奥さんのお部屋でしょ?奥さんが来たら、僕はどこかに行かなきゃ。 「お前の成長を待っているだけさ」 意味がわからないよ、王様。 Twitter企画『 #2020男子後宮BL 』参加作品でした。 ※ムーンライトノベルズにも掲載

俺のかつての護衛騎士が未だに過保護すぎる

餡子
BL
【BL】護衛騎士×元王子もどきの平民  妾妃の連れ子として王家に迎え入れられたけど、成人したら平民として暮らしていくはずだった。というのに、成人後もなぜかかつての護衛騎士が過保護に接してくるんだけど!? ……期待させないでほしい。そっちには、俺と同じ気持ちなんてないくせに。 ※性描写有りR18

こっそりバウムクーヘンエンド小説を投稿したら相手に見つかって押し倒されてた件

神崎 ルナ
BL
バウムクーヘンエンド――片想いの相手の結婚式に招待されて引き出物のバウムクーヘンを手に失恋に浸るという、所謂アンハッピーエンド。 僕の幼なじみは天然が入ったぽんやりしたタイプでずっと目が離せなかった。 だけどその笑顔を見ていると自然と僕も口角が上がり。 子供の頃に勢いに任せて『光くん、好きっ!!』と言ってしまったのは黒歴史だが、そのすぐ後に白詰草の指輪を持って来て『うん、およめさんになってね』と来たのは反則だろう。   ぽやぽやした光のことだから、きっとよく意味が分かってなかったに違いない。 指輪も、僕の左手の中指に収めていたし。 あれから10年近く。 ずっと仲が良い幼なじみの範疇に留まる僕たちの関係は決して崩してはならない。 だけど想いを隠すのは苦しくて――。 こっそりとある小説サイトに想いを吐露してそれで何とか未練を断ち切ろうと思った。 なのにどうして――。 『ねぇ、この小説って海斗が書いたんだよね?』 えっ!?どうしてバレたっ!?というより何故この僕が押し倒されてるんだっ!?(※注 サブ垢にて公開済みの『バウムクーヘンエンド』をご覧になるとより一層楽しめるかもしれません)

処理中です...