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第四章

しばらくの辛抱

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「んん~」

身動きの取れない窮屈さに目が覚めた。
どうやらロベールにしっかりと抱きしめられているようで、起きているのかというくらいの抱きしめっぷりだ。

「ロベール……?」

小声でそっと名前を呼んでみた。だけど返事はない。
寝てるの?

無意識とはいえ、離しちゃいけないと思ってくれているのだろうか。
……だったら、いいな。

時計を確認するとまだ六時前だ。もう少しのんびりしていても大丈夫だから、僕はあとちょっとと心の中で思いながらまた目を瞑った。


「……南、南」
「ん~」
「時間だぞ? 起きろよ」
「んん……、もうちょっとぉ」

起きろとロベールが僕の体を離すから、それを嫌がってまたロベールにしがみつく。

「……お前」
ドスの効いた低い声。甘さの欠片も無いその声に、一瞬硬直。

「耐える私の身にもなれ。……可愛いのは嬉しいが、私を煽るのは禁止だ。しばらくは南の身の安全をちゃんと考えないとだめだ」
「……昨日言ってたイチャイチャ禁止ってこと?」
「まあ、そういう事だ。しばらくは仕方ないだろう」
「…………」

エロいロベールの言葉とは思えない慎重さだ。
よほどその使い魔を飛ばしているスノウとかいう奴が危ないのか、それともただ心配性なだけなのか……?
けど、昨日の深刻な表情を見せていたロベールのことを考えると、もしかしたら前者なのかもしれない。

「……分かった。起きるよ」
「ああ、そうしろ」

チェー。もうちょっとロベールに甘えてべたべたしたかったんだけどな。

僕が体を離すと、ロベールはスッとベッドから降りて窓際へと歩いていった。

「いったん私は戻るから、学校で会おう。……一応南の気配は追っておくから、安心して登校しろ」
「……うん」

渋々の僕の返事を聞いた後、ロベールは窓から外を窺ってサッと飛び降りた。
慌てて窓の外を見下ろすと、こちらを見上げたロベールが手を振っている。ホッとして僕も手を振り返すと、そのまま向こうの通りへと走っていってしまった。

……しょうがないか。
ロベールには学校ですぐまた会えるんだから。

とにかく、今日は試験の一日目だ。学校に行ったらまた、教科書やらノートやらを見て最後の記憶の植え付けをしなくちゃなんないし。
僕は気持ちを切り替えて、顔を洗いに自室を出た。
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