フェロモン? そんなの僕知りません!!

くるむ

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第四章

笹山の告白 2

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「あ……、も、もちろんいきなり付き合ってくれなんてそんな風には思ってないから! その……、好きになってもらうよう……、努力する……し」

「…………」
僕はなんと言っていいのか、ただただ呆然。
そんな僕に呆れられていると思ったのか、笹山は早口で言い訳を始めた。

「あ、ごめん。きゅ……、急に言われたら誰でもびっくりするよな。えっと、その、気にしないでくれてていいから……」
「あっ、うん。だ、大丈夫。あの……、でもごめん。僕、今……、付き合っている人がいるんだ」
「えっ!?」

一生懸命気持ちを伝えてくれてる笹山のためにも、ちゃんと言わなきゃって思ったんだ。だけど僕のその告白は、笹山にとっては全く予測していなかったことだったみたいで、すごくショックを受けているようだった。

「――同じ学校の人……?」
「内緒」
「え~? なんでさ」
「あんまり詮索されたくないから」

「……もしかして、あの保健医か?」
「えっ!?」

あまりにも予想外の指摘に、顔がボムッと熱くなった。
うわっ、ヤバ!

そんな慌てる僕の表情を見て、笹山の表情がみるみる冷めたものになる。

「……やっぱ、あいつかよ」
「……なんで……?」

オロオロする僕をしげしげと眺めた後、笹山はふうっと軽く息を吐いた。

「なんとなく、思いついたのがあいつだっただけだ。……ばらしたりしないから安心しろ」
「……あっ、う、うん! ありがとう笹山!」

ホッとして全力でお礼を言ったら、盛大なため息を吐かれてしまった。
……あ、ごめん。

「あ~ああ。せっかく勇気振り絞って告ったのにこれだよ」
「……あ、え、えっと、ごめん」
「いいよ、もう。謝んな」
「う、うん」
「ま、いつまでもぐずぐずしてるのも嫌だったからさ、ちゃんと言ってくれてよかったよ」
「ん……」

一重の釣り目のせいか、笹山は少し話しにくそうというか怖そうに見えるけど、でもやっぱり良い奴だったね。僕の人を見る目もそう悪くはなさそうだ。

「なあ、南……」
「なに?」
「俺の気持ちはさっき言った通りだけど、意識しすぎて無視とかしないでくれよ」

「もちろんだよ! 僕だって一緒に勉強するようになってから、笹山が実は良い奴なんだってわかったんだもの。話しやすいし、出来れば今まで通りにしてもらいたいよ」

「――はっ、まーったくお前って奴は……。あの保健医も苦労するなー」
「……え?」
「ま、いっか。でも気をつけろよ? あんまり無防備に近づきすぎると、隙を見て色んなとこ触っちまうかもしれないからな」
「ええっ!?」
「まあ適当に、俺にも気を遣えってことだ」
「う、……うん」

適当に気を遣うって、どのくらいだよ?
試験勉強よりも酷い難問を突き付けられて、僕もため息を吐いたのだった。
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