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第四章

笹山の告白

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思っていた通りだった。
ロベールは僕がお昼ご飯を食べ終わって部屋に戻って来ても、やっぱり来てはいなかった。

「……いいんだけどさ、別に」

そう呟きながらも、がっかり感は半端ない。
そうだろーなーと思ってはいたけど、もしかしたら僕に会いに来てくれるかもしれないって、ほんのちょっぴりだけど本当は期待してたから。

でも一応、それなりにだけど英語は頑張ったから。気を取り直して公民館に行く準備をしなくちゃ。
リュックに教科者やノート、筆記用具など適当に必要そうなやつを入れていく。ついでに机の上に置いてあったキャラメルも放り込んだ。口寂しい時のお供だ。

「母さん、出てくるね」

リュックを背負って下に降りて、リビングにいる母さんに声をかけた。

「ああ、笹山君と勉強するんだったわね。あまり遅くならないようにね」
「うん。早く帰ってくるよ。勉強一緒にするだけだし、五時ごろには帰るんじゃないかな。わかんないけど」
「そ。行ってらっしゃい、気を付けて」
「行ってきまーす」

〇▽公民館は歩いて行ける距離だ。時間的にはぴったりで、余裕があったのでのんびりと歩いた。
公民館前に設置してある自販機でお茶を買って自習スペースに向かった。

あれ? 笹山、もう来てる?

「笹山ー、早いなー。てっきり僕の方が早いかと思ってた」

声を掛けながら近づく僕に、笹山が取っておいてくれた隣の席から自分の荷物をどかして、僕に座るよう促した。ありがとうと礼を言って席に着き、教科書を取り出す。

「席埋まっちゃったら拙いと思ったんだよ。だから、気が急いちゃって」
「ふうん。で、どう? 進んでる?」
「進んでるも何も……。もうすでにダルい」
「早すぎんだろっ! ……んー、じゃあさ、まず手始めにこっからここまで読んで覚えてクイズしようよ」
「クイズ?」
「そ。交互に適当に問題つくりっこするんだ。問題出す側は教科書見て、答える方は何も見ないで」
「ああ、なるほど! それいいな」
「でしょ? じゃあ、覚えるの始め!」

我ながらそれはよくできた案だった。
真面目に集中できない僕たちは、ちょっとした負けん気を発揮して、それなりに少しずつ出された問題をクリアしていく。
途中で持参したキャラメルを食べたりして休憩し、僕らなりの勉強時間が過ぎていった。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

「はあー、何とかそれなりに勉強した気分だなー」
「だよねー。……まあ、帰ったらまたやらなきゃならないけどさ」
「……だな」

時刻はもう四時を回っている。僕らにしては頑張った方だ。
だって絶対一人では、二時間も集中なんて出来ないから。

公民館を出て、おしゃべりしながら帰路に就いた。

「そういえば、昨日は日暮の所に行ったんだろ? どうだった? 勉強、はかどったの?」
「あ? ……あー、……まあな」

ん? なんだ? 歯切れ悪いな。

「なに? 日暮と喧嘩でもした?」
「しないよ、そんなもの」

イラッとしたような返答に首をかしげる。
怪訝に笹山を見ると、ハッとしたような表情になった。

「ああ、わりぃ。……南も気付いているだろうけど、俺、あいつのことあんまり好きじゃないんだよな」
「なんで?」
「……ちっさい頃から知ってるけど、あいつ俺のことバカにしてるのかうぜーんだもん」
「え? そんな風に見えないけど」
「昔の話だよ。俺のすることにいちいち指図したりしてさ。あんまりうぜーから殴ったこともあった」
「え!? 殴っちゃったの? 笹山が?」
「……一回だけな」
「そう、なんだ……。もしかして、その後騒ぎになっちゃったりしたの?」

「いや。……結構まともにくらわせちゃったから顔が少し腫れて赤くなったんだけど、あいつ先生に嘘吐いて……、俺のことかばってくれたんだよな……」

それって……。

「ねえ、それ。もしかしたら日暮は、笹山と友達になりたいって思ってるんじゃないの?」
「それは無いな」
「なんで?」
「詳しい経緯いきさつは覚えてないけど、あいつ俺に友達だなんて思ってないとか、そんなこと言ってたし」
「…………」

なんだ、日暮。わけわからん。
秀才って奴はどこかひねくれているものなのか?

「……そんなことよりさ」
「うん?」
「……俺さ、俺……」

何かを言い淀みながら、笹山の足が遅くなった。振り返って彼を見ると、真っ赤な顔で僕を見ていた。

……?

「お、俺……、南のことが……とく……、特別に好きなんだ……っ」
「は……?」

真っ赤な顔で僕を見続ける笹山に、呆けるしかない。
特別ってまさかそういう意味? 僕はただただ唖然とするしかなかった。
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