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第四章

傍にいてくれるから

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きっとロベールも、僕が不安を払拭出来ないでいるのを分かってくれているんだろう。しばらくそのまま何も言わずに、優しく僕の髪を撫でながら抱きしめてくれていた。

同じ姿勢でいるのが少しきつくなり、ロベールの腕の中でもぞりと動いた。と、それに気づいたロベールが少し腕を緩める。

「……落ち着いたか?」
「うん……」
「そう、か」

体を離し、僕と目と目を合わせたロベールが、額をコツンと合わせた。

「それじゃあ、そろそろ勉強始めるか」
「う~、うん……」

仕方ないか。
……でもホント、変だよな? 悪魔のくせに、勉強教えてくれるなんてさ。
なんとなくだけど、悪い魔っていうくらいだから、堕落させることの方が好きそうなイメージなのに。

「なんだ?」
「えっ? あ、ううん。何でもない。えっと、じゃあ昨日の続きからで……」
「ああ。分からないとこあるのか?」
「あ、うん。えっとね……」

もう僕も今は余計なことを考えるのは止めにして、素直に勉強を教えてもらう事に没頭した。ロベールの教えがうまいのはやっぱり確かなようで、僕の今一つの頭でも理解できるように、彼は噛み砕いて丁寧に教えてくれた。

「ふわーっ」
ポスン。

倒れこむようにロベールに抱き着いて全身で凭れ掛かる。突然の僕の行動に驚いたようだったけど、さすがロベール。動じるどころか僕をお姫様抱っこに抱きなおし、ベッドの上にゆっくりと僕を仰向けに寝かせた。

「疲れたか?」
「うん。めっちゃ疲れた。こんなに勉強したことなんて……、受験以来だよ」
「ふっ……、まるでどっかの誰かみたいだな」
「……え?」
「ああ、いや……、少し眠るか? 寝不足だろ、南」
「うん。……あっ、それ、そういえばロベールだって寝不足なんじゃないの? もしかしたら昨夜、あの使い魔のせいで一睡もしていないんじゃ……?」

「いや、大丈夫だ。数時間ちゃんと寝てきた。私には十分な時間だ」
「……本当に? 僕に気を遣ってるんじゃないの?」
「なんで私が南に気を遣うんだ?」
「だって……」

だってロベールって変態だけど、でもそれでも僕のことを一番に考えてくれてるみたいなんだもの。

ロベールの目をじっと見つめてみた。少しでもロベールの気持ちが知りたくて。
だけど僕は特別敏いわけでもないので、やっぱり何にもわかんない。

「南……」

僕がジーッと見つめ続けていると、その内ロベールの表情が甘く崩れてきた。

「一時間くらい寝ていたらいい。腕枕してやるから」
そう言いながらロベールが、僕の首裏に腕を差し込み抱き寄せてくれた。

「うん……」

ね? やっぱりそうじゃないか。
ロベールはやっぱり僕のことを一番に考えてくれて、そして甘やかせてくれる。


たとえ気になることがたくさんあったとしても、ロベールが傍にいてくれるのならきっと、きっと大丈夫だよね。
ゆらゆらと微睡みの中に落ちていくさなか、僕はそんなことを考えていた。
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