38 / 93
第四章
傍にいてくれるから
しおりを挟む
きっとロベールも、僕が不安を払拭出来ないでいるのを分かってくれているんだろう。しばらくそのまま何も言わずに、優しく僕の髪を撫でながら抱きしめてくれていた。
同じ姿勢でいるのが少しきつくなり、ロベールの腕の中でもぞりと動いた。と、それに気づいたロベールが少し腕を緩める。
「……落ち着いたか?」
「うん……」
「そう、か」
体を離し、僕と目と目を合わせたロベールが、額をコツンと合わせた。
「それじゃあ、そろそろ勉強始めるか」
「う~、うん……」
仕方ないか。
……でもホント、変だよな? 悪魔のくせに、勉強教えてくれるなんてさ。
なんとなくだけど、悪い魔っていうくらいだから、堕落させることの方が好きそうなイメージなのに。
「なんだ?」
「えっ? あ、ううん。何でもない。えっと、じゃあ昨日の続きからで……」
「ああ。分からないとこあるのか?」
「あ、うん。えっとね……」
もう僕も今は余計なことを考えるのは止めにして、素直に勉強を教えてもらう事に没頭した。ロベールの教えがうまいのはやっぱり確かなようで、僕の今一つの頭でも理解できるように、彼は噛み砕いて丁寧に教えてくれた。
「ふわーっ」
ポスン。
倒れこむようにロベールに抱き着いて全身で凭れ掛かる。突然の僕の行動に驚いたようだったけど、さすがロベール。動じるどころか僕をお姫様抱っこに抱きなおし、ベッドの上にゆっくりと僕を仰向けに寝かせた。
「疲れたか?」
「うん。めっちゃ疲れた。こんなに勉強したことなんて……、受験以来だよ」
「ふっ……、まるでどっかの誰かみたいだな」
「……え?」
「ああ、いや……、少し眠るか? 寝不足だろ、南」
「うん。……あっ、それ、そういえばロベールだって寝不足なんじゃないの? もしかしたら昨夜、あの使い魔のせいで一睡もしていないんじゃ……?」
「いや、大丈夫だ。数時間ちゃんと寝てきた。私には十分な時間だ」
「……本当に? 僕に気を遣ってるんじゃないの?」
「なんで私が南に気を遣うんだ?」
「だって……」
だってロベールって変態だけど、でもそれでも僕のことを一番に考えてくれてるみたいなんだもの。
ロベールの目をじっと見つめてみた。少しでもロベールの気持ちが知りたくて。
だけど僕は特別敏いわけでもないので、やっぱり何にもわかんない。
「南……」
僕がジーッと見つめ続けていると、その内ロベールの表情が甘く崩れてきた。
「一時間くらい寝ていたらいい。腕枕してやるから」
そう言いながらロベールが、僕の首裏に腕を差し込み抱き寄せてくれた。
「うん……」
ね? やっぱりそうじゃないか。
ロベールはやっぱり僕のことを一番に考えてくれて、そして甘やかせてくれる。
たとえ気になることがたくさんあったとしても、ロベールが傍にいてくれるのならきっと、きっと大丈夫だよね。
ゆらゆらと微睡みの中に落ちていくさなか、僕はそんなことを考えていた。
同じ姿勢でいるのが少しきつくなり、ロベールの腕の中でもぞりと動いた。と、それに気づいたロベールが少し腕を緩める。
「……落ち着いたか?」
「うん……」
「そう、か」
体を離し、僕と目と目を合わせたロベールが、額をコツンと合わせた。
「それじゃあ、そろそろ勉強始めるか」
「う~、うん……」
仕方ないか。
……でもホント、変だよな? 悪魔のくせに、勉強教えてくれるなんてさ。
なんとなくだけど、悪い魔っていうくらいだから、堕落させることの方が好きそうなイメージなのに。
「なんだ?」
「えっ? あ、ううん。何でもない。えっと、じゃあ昨日の続きからで……」
「ああ。分からないとこあるのか?」
「あ、うん。えっとね……」
もう僕も今は余計なことを考えるのは止めにして、素直に勉強を教えてもらう事に没頭した。ロベールの教えがうまいのはやっぱり確かなようで、僕の今一つの頭でも理解できるように、彼は噛み砕いて丁寧に教えてくれた。
「ふわーっ」
ポスン。
倒れこむようにロベールに抱き着いて全身で凭れ掛かる。突然の僕の行動に驚いたようだったけど、さすがロベール。動じるどころか僕をお姫様抱っこに抱きなおし、ベッドの上にゆっくりと僕を仰向けに寝かせた。
「疲れたか?」
「うん。めっちゃ疲れた。こんなに勉強したことなんて……、受験以来だよ」
「ふっ……、まるでどっかの誰かみたいだな」
「……え?」
「ああ、いや……、少し眠るか? 寝不足だろ、南」
「うん。……あっ、それ、そういえばロベールだって寝不足なんじゃないの? もしかしたら昨夜、あの使い魔のせいで一睡もしていないんじゃ……?」
「いや、大丈夫だ。数時間ちゃんと寝てきた。私には十分な時間だ」
「……本当に? 僕に気を遣ってるんじゃないの?」
「なんで私が南に気を遣うんだ?」
「だって……」
だってロベールって変態だけど、でもそれでも僕のことを一番に考えてくれてるみたいなんだもの。
ロベールの目をじっと見つめてみた。少しでもロベールの気持ちが知りたくて。
だけど僕は特別敏いわけでもないので、やっぱり何にもわかんない。
「南……」
僕がジーッと見つめ続けていると、その内ロベールの表情が甘く崩れてきた。
「一時間くらい寝ていたらいい。腕枕してやるから」
そう言いながらロベールが、僕の首裏に腕を差し込み抱き寄せてくれた。
「うん……」
ね? やっぱりそうじゃないか。
ロベールはやっぱり僕のことを一番に考えてくれて、そして甘やかせてくれる。
たとえ気になることがたくさんあったとしても、ロベールが傍にいてくれるのならきっと、きっと大丈夫だよね。
ゆらゆらと微睡みの中に落ちていくさなか、僕はそんなことを考えていた。
2
お気に入りに追加
177
あなたにおすすめの小説
【完結】別れ……ますよね?
325号室の住人
BL
☆全3話、完結済
僕の恋人は、テレビドラマに数多く出演する俳優を生業としている。
ある朝、テレビから流れてきたニュースに、僕は恋人との別れを決意した。
お客様と商品
あかまロケ
BL
馬鹿で、不細工で、性格最悪…なオレが、衣食住提供と引き換えに体を売る相手は高校時代一度も面識の無かったエリートモテモテイケメン御曹司で。オレは商品で、相手はお客様。そう思って毎日せっせとお客様に尽くす涙ぐましい努力のオレの物語。(*ムーンライトノベルズ・pixivにも投稿してます。)
【完結】僕の大事な魔王様
綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
BL
母竜と眠っていた幼いドラゴンは、なぜか人間が住む都市へ召喚された。意味が分からず本能のままに隠れたが発見され、引きずり出されて兵士に殺されそうになる。
「お母さん、お父さん、助けて! 魔王様!!」
魔族の守護者であった魔王様がいない世界で、神様に縋る人間のように叫ぶ。必死の嘆願は幼ドラゴンの魔力を得て、遠くまで響いた。そう、隣接する別の世界から魔王を召喚するほどに……。
俺様魔王×いたいけな幼ドラゴン――成長するまで見守ると決めた魔王は、徐々に真剣な想いを抱くようになる。彼の想いは幼過ぎる竜に届くのか。ハッピーエンド確定
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/11……完結
2023/09/28……カクヨム、週間恋愛 57位
2023/09/23……エブリスタ、トレンドBL 5位
2023/09/23……小説家になろう、日間ファンタジー 39位
2023/09/21……連載開始
平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです
おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの)
BDSM要素はほぼ無し。
甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。
順次スケベパートも追加していきます
平凡な男子高校生が、素敵な、ある意味必然的な運命をつかむお話。
しゅ
BL
平凡な男子高校生が、非凡な男子高校生にベタベタで甘々に可愛がられて、ただただ幸せになる話です。
基本主人公目線で進行しますが、1部友人達の目線になることがあります。
一部ファンタジー。基本ありきたりな話です。
それでも宜しければどうぞ。
見ぃつけた。
茉莉花 香乃
BL
小学生の時、意地悪されて転校した。高校一年生の途中までは穏やかな生活だったのに、全寮制の学校に転入しなければならなくなった。そこで、出会ったのは…
他サイトにも公開しています
【完結】極貧イケメン学生は体を売らない。【番外編あります】
紫紺(紗子)
BL
貧乏学生をスパダリが救済!?代償は『恋人のフリ』だった。
相模原涼(さがみはらりょう)は法学部の大学2年生。
超がつく貧乏学生なのに、突然居酒屋のバイトをクビになってしまった。
失意に沈む涼の前に現れたのは、ブランドスーツに身を包んだイケメン、大手法律事務所の副所長 城南晄矢(じょうなんみつや)。
彼は涼にバイトしないかと誘うのだが……。
※番外編を公開しました(10/21)
生活に追われて恋とは無縁の極貧イケメンの涼と、何もかもに恵まれた晄矢のラブコメBL。二人の気持ちはどっちに向いていくのか。
※本作品中の公判、判例、事件等は全て架空のものです。完全なフィクションであり、参考にした事件等もございません。拙い表現や現実との乖離はどうぞご容赦ください。
※4月18日、完結しました。ありがとうございました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる