フェロモン? そんなの僕知りません!!

くるむ

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第四章

使い魔の狙い

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「そんなことより、ほら。月曜からテストだろ? 分からないところがあれば、」
「ロベール!」
「…………」
「知らない方が怖いことだってあるよ。教えてよ。そうじゃなきゃ、気になって気になって勉強なんて手に着かないよ」

しっかりとロベールに目を合わせて訴える。そんな僕の目をロベールは逸らすことが出来なくて、彼は軽くため息を吐いた。

「……仕方がないな。昨日のアレは、使い魔だ」
「……使い魔? ロベールの?」
「まさか。私に使い魔なんていない。魔界を追い出されたときに、あいつらは魔王の下に戻された」
「じゃあ、あれは誰の?」

「さすがにそこまでは分からん。今の魔界の状態がどんなものになっているのかなんて知らないし、知ろうとも思わん。だが……、わざわざこんな所に使い魔を飛ばす奴なんてそんな暇な奴なんてそうそういないし。それにあの使い魔もかなり下層の奴だったから、ただ単に興味本位に飛ばしただけだとは思うんだが」

「……だが?」

なんとなく回りくどい説明に聞こえて、暗に他にロベールが言いたいことが隠されているような気がして気になる。
案の定、僕が聞き返すとロベールの眉間に軽くしわが寄った。

「――下層の使い魔を使ってはいるが、あれを飛ばした奴は下層クラスではないだろうってことだ」
それって……。

「もしかして、ロベールを捜し出して魔界に連れ帰ろうとしてるって事……?」
「まさか、それは無い」
「え? でも……」

きっぱりと否定されて少し安心したけれど、じゃあどうして昨日、ロベールがいるこの部屋に辿り着いたんだ?

「あれが引き寄せられたのは私にではない。恐らく南の、強烈な濃くて甘いフェロモンの匂いだ」
「え……?」

背筋を冷たいものがゾゾゾと走った。
僕? 僕のフェロモン!?

「僕って……、そんなにそのヤバいもの、駄々洩れなの?」
「始終ではないし、匂う範囲もそんなに広くはないんだろうが……、昨夜は恐らく運が悪かったんだな」
「運?」
「ああ。あの使い魔がたまたまこの辺りを飛んでいた時に、南のフェロモンが匂い立ったんだろう」
「…………」

もしかして、ロベールが帰るって言った時のこと?
そういえば質が悪いとか言われたけど、僕そんなこと本当に意識なんてしてないし……。

「そんな顔するな、大丈夫だ。あれはちゃんと捕まえて処分しておいたと言ったろ?」
「処分って……?」
「下層の使い魔だから知能もかなり低いんだ。だから不自然でない形で始末しておいた。だからアレの持ち主も不思議には思わないだろう。気にすることはない」
「う……ん」
「大丈夫だから」

ロベールは優しくそう言って僕を抱きしめてくれたけど、無意識に漏れ出すフェロモンなんてどうしたらいいのか分からないよ。昔から変態には慣れてるけど、化け物になんて慣れてないし……。

「守ってやるって言ったろ? 相手が誰であろうと一緒だ。私を信じて安心していい」
「……うん」

ロベールの背に腕を回す。僕はなんだかやけに甘えたくなってしまって、そっと頬を彼の肩口に摺り寄せた。

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