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第三章
甘い家庭教師
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ため息吐いて、家に入った。
「ただいま」
「南、お帰り。もうご飯出来てるわよ」
「あ、うん。鞄置いてくる」
のそのそと部屋に行って鞄を置き、手を洗って食卓に向かった。
僕んちは4人家族だけど、兄貴が大学で県外に出ているから今は3人だ。
「そういえば南、来週からテストだって言ってたわよね。日暮君とかいう子に勉強教えてもらってるって言ってたけど、今度はいい点取れそうなの?」
「え? あー、うん。数学は……、少しは、多分」
「なんだ? はっきりしない奴だな」
「大丈夫だよ。……土日、必死で頑張るし」
「少しは普段から勉強しなさいよ」
「わぁってるよ」
まったく、母さんまでロベールみたいなこと言うなよな。
「…………」
おかげで、昨日と打って変わってつれないロベールのことを思い出しちゃったじゃないか。
大体さ、ロベールが学校の成績なんて気にするわけないし。……変態のくせに、あんなあっさり帰っちゃうなんて、どうかしてるよ。
……。
て、どうかしてるのは僕の方か。
はあっ。
……マク……に会ってるのかな。
考えれば考えるほど思考が暗い方へと傾いていく。
もそもそとご飯を食べ終えて、しばらくリビングでお茶を飲んでぼーっとして、それから風呂に入り部屋へと戻った。
「ふう……」
時間を確認すると、もう九時半を回っていた。
本当に、今日からしっかりやらなきゃとてもじゃないけどテストに間に合わない。……のに。
「はあ~ああっ……」
ボフンとベッドにダイブした。
「……やる気しねー。それもこれもみんなロベールのせいだし……」
そうだよ。僕のやる気スイッチが入らないのも、何もかもみんなロベールのせいだもん。
グダグダそんなことを考えて俯せのまま目を閉じると、だんだんと睡魔が襲ってくるから不思議だ。
重力をそのまま布団に沈みこませる感覚の中で、コツコツ、ゴトゴトと妙な音が窓の付近から聞こえてきた。
……?
コツコツ、ドンドン。
「えっ!?」
なんだ!? 気のせいなんかじゃない。窓の方から変な音がする!
びっくりして飛び起きて窓に目をやると……。
「ロベール! そんなとこで何してんの!」
鍵を掛けた二階の窓の外から彼がこちらを覗き込んでいる。僕は慌てて窓に駆け寄って、鍵を開けた。
「はー、慌てた。まさか鍵が掛かってるとは思わなかったからな」
「だ、だってこないだロベールが不用心だって言ったんじゃん。……だけど、なんで……?」
「何が?」
「っ……、だ、だって、さっき、さっさと帰っちゃったじゃないか」
「…………」
僕の文句に一瞬目を見開いた後、ロベールの表情が困ったように甘く崩れた。
「まーったくお前は……。何だ、それは? 私に此処で暮らしてほしいのか?」
「えっ!? ええっ? いや、それは流石にちょっと……」
「ふっ……。悩むな、冗談だ。いくら私でも、そこまで無謀な真似はしないさ」
「ロベール……」
時折見せる、僕とは違う大人な表情。それに憧れ惹かれはするものの、少し不安になるのはどうしてだろう?
ああ、そうか。マクのせいだ。
「どれ、見せてみろ」
「え、え? 何を?」
「月曜から試験なんだろ? 何から取り掛かるんだ?」
「え、えっと、今日はとりあえず教えてもらった数学の復習とか……」
「ふうん」
ひょいと僕から教科書を取り上げて、「ああ、これか」と呟いた。
「え? 何、ロベール数学分かるの?」
「ああ。暇なときは何度か生徒として学校に潜り込んだりしてたからな」
「ええー?」
驚いた。ロベールって、いったいどのくらい長い時間をこの世界で過ごしてきたんだ?
「ただいま」
「南、お帰り。もうご飯出来てるわよ」
「あ、うん。鞄置いてくる」
のそのそと部屋に行って鞄を置き、手を洗って食卓に向かった。
僕んちは4人家族だけど、兄貴が大学で県外に出ているから今は3人だ。
「そういえば南、来週からテストだって言ってたわよね。日暮君とかいう子に勉強教えてもらってるって言ってたけど、今度はいい点取れそうなの?」
「え? あー、うん。数学は……、少しは、多分」
「なんだ? はっきりしない奴だな」
「大丈夫だよ。……土日、必死で頑張るし」
「少しは普段から勉強しなさいよ」
「わぁってるよ」
まったく、母さんまでロベールみたいなこと言うなよな。
「…………」
おかげで、昨日と打って変わってつれないロベールのことを思い出しちゃったじゃないか。
大体さ、ロベールが学校の成績なんて気にするわけないし。……変態のくせに、あんなあっさり帰っちゃうなんて、どうかしてるよ。
……。
て、どうかしてるのは僕の方か。
はあっ。
……マク……に会ってるのかな。
考えれば考えるほど思考が暗い方へと傾いていく。
もそもそとご飯を食べ終えて、しばらくリビングでお茶を飲んでぼーっとして、それから風呂に入り部屋へと戻った。
「ふう……」
時間を確認すると、もう九時半を回っていた。
本当に、今日からしっかりやらなきゃとてもじゃないけどテストに間に合わない。……のに。
「はあ~ああっ……」
ボフンとベッドにダイブした。
「……やる気しねー。それもこれもみんなロベールのせいだし……」
そうだよ。僕のやる気スイッチが入らないのも、何もかもみんなロベールのせいだもん。
グダグダそんなことを考えて俯せのまま目を閉じると、だんだんと睡魔が襲ってくるから不思議だ。
重力をそのまま布団に沈みこませる感覚の中で、コツコツ、ゴトゴトと妙な音が窓の付近から聞こえてきた。
……?
コツコツ、ドンドン。
「えっ!?」
なんだ!? 気のせいなんかじゃない。窓の方から変な音がする!
びっくりして飛び起きて窓に目をやると……。
「ロベール! そんなとこで何してんの!」
鍵を掛けた二階の窓の外から彼がこちらを覗き込んでいる。僕は慌てて窓に駆け寄って、鍵を開けた。
「はー、慌てた。まさか鍵が掛かってるとは思わなかったからな」
「だ、だってこないだロベールが不用心だって言ったんじゃん。……だけど、なんで……?」
「何が?」
「っ……、だ、だって、さっき、さっさと帰っちゃったじゃないか」
「…………」
僕の文句に一瞬目を見開いた後、ロベールの表情が困ったように甘く崩れた。
「まーったくお前は……。何だ、それは? 私に此処で暮らしてほしいのか?」
「えっ!? ええっ? いや、それは流石にちょっと……」
「ふっ……。悩むな、冗談だ。いくら私でも、そこまで無謀な真似はしないさ」
「ロベール……」
時折見せる、僕とは違う大人な表情。それに憧れ惹かれはするものの、少し不安になるのはどうしてだろう?
ああ、そうか。マクのせいだ。
「どれ、見せてみろ」
「え、え? 何を?」
「月曜から試験なんだろ? 何から取り掛かるんだ?」
「え、えっと、今日はとりあえず教えてもらった数学の復習とか……」
「ふうん」
ひょいと僕から教科書を取り上げて、「ああ、これか」と呟いた。
「え? 何、ロベール数学分かるの?」
「ああ。暇なときは何度か生徒として学校に潜り込んだりしてたからな」
「ええー?」
驚いた。ロベールって、いったいどのくらい長い時間をこの世界で過ごしてきたんだ?
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