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第三章
最後の居残り勉強会
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教室にバタバタと戻ってきた時には、もう勉強会は始まっていた。
「あ、南やっと来た。遅かったな、どこ行ってたんだよ」
笹山にくるんと後ろを振り向かれて、待ちくたびれたというように問われて「うっ」と詰まった。
「あー、うん。ちょっとね。えっと、どこまで進んでる?」
そう言って適当に誤魔化しながら、腰かけて教科書をめくる。笹山は流されたことに気付いたのか一瞬まばたきをしたけれど、あえて突っ込みはしなかった。横から奏多が教科書を僕の方に向けて、今やってるところを教えてくれた。
「ここ、こないだ教えてもらった続きからやってて……」
「ああ、そこ。僕も引っかかったところだ」
「じゃあ甘木のためにも、もう一回復習するね。この公式を当てはめて――」
相変わらず親切な日暮が、分かりやすく丁寧に解説していく。みんな僕同様、頭があんまり良い奴らじゃないから、二度目になるだろう説明を文句を言わずにしっかり聞いていた。
時折ダレておしゃべりへと脱線しながら、それでも分からないところをしっかりと教えてもらいながら時間は過ぎていく。
そして段々暗くなってきて、みんなそろそろ帰ろうかと教科書をしまい始めた。
「そういえば居残りでの勉強会は今日までだね。明日からは休みだし」
「ああ、そうだね……」
あー、これはロベールとイチャイチャすることばかり考えてちゃ拙いよな。土日はみっちり試験勉強しなきゃ。
「もしよかったら、俺んちで勉強会する?」
「え? マジで? うん、俺行きたい! な、創?」
雄基が笹山の肩を叩いて、一緒に行こうと誘っている。それに対して笹山は、嫌そうに眉根を寄せた。
「いや……、俺はいいわ」
「ええー? 何言ってんだよ! せっかくの好意無駄にすんなよ。俺も行くぞ。昌義も行くよな?」
「おう。俺、一人じゃどう勉強していいか分からないからな」
「だよな! 創も、変な意地張ってんじゃねーよ。今度成績悪いとマジヤバいじゃん。せっかく日暮が言ってくれてるんだから、行こうよ! なあ、日暮?」
「ハハ……。うん、遠慮しないでもいいよ。俺も復習になるし、一人で勉強するより大勢でする方が楽しいから」
「そうだよな、な! じゃあ創も俺たちと行くという事で」
「……おい」
仲間に説得されては、いくら笹山でもそれ以上反論できなかったようだ。眉間にしわを寄せて嫌々だが、結局は言葉を飲み込んだようだ。
「甘木たちはどうするんだ?」
雄基が、笹山の肩を抱いたままこちらをくるんと振り返った。
「僕は家で勉強するよ。日暮に教えてもらったところを復習しながら、他の教科も暗記しなきゃなんないし。奏多は?」
「俺もそっちかなー。礼美ちゃんと一緒に勉強する約束してるし」
奏多のその一言で、雄基たちの目つきが変わる。
あ、今奏多喧嘩売っちゃったか?
ちょっぴり冷や冷やしたんだけど、当の本人は礼美ちゃんのことを思い出してか周りの視線を全く関知していない。
そんなこんなでぞろぞろと教室を出てみんなが歩き出す中、ロベールと帰る約束をしていたことを思い出して奏多の手を引っ張って合図をした。
「え? ……ああ、保健室、寄る?」
「うん、お願い」
こそこそとそんなやり取りをしている内に、またすごく良いタイミングで、ロベールがこちらに歩いてきた。
「あれ? ロベール先生、よく遇いますね」
「そうだね。……君たちもよく残ってるね。来週の試験勉強に向けてかい?」
「はい」
「偉いねー」
「そんなことないです」
そんな会話を繰り広げながら自然と俺らとロベールは合流して、そのまま校舎を出た。
「あ、南やっと来た。遅かったな、どこ行ってたんだよ」
笹山にくるんと後ろを振り向かれて、待ちくたびれたというように問われて「うっ」と詰まった。
「あー、うん。ちょっとね。えっと、どこまで進んでる?」
そう言って適当に誤魔化しながら、腰かけて教科書をめくる。笹山は流されたことに気付いたのか一瞬まばたきをしたけれど、あえて突っ込みはしなかった。横から奏多が教科書を僕の方に向けて、今やってるところを教えてくれた。
「ここ、こないだ教えてもらった続きからやってて……」
「ああ、そこ。僕も引っかかったところだ」
「じゃあ甘木のためにも、もう一回復習するね。この公式を当てはめて――」
相変わらず親切な日暮が、分かりやすく丁寧に解説していく。みんな僕同様、頭があんまり良い奴らじゃないから、二度目になるだろう説明を文句を言わずにしっかり聞いていた。
時折ダレておしゃべりへと脱線しながら、それでも分からないところをしっかりと教えてもらいながら時間は過ぎていく。
そして段々暗くなってきて、みんなそろそろ帰ろうかと教科書をしまい始めた。
「そういえば居残りでの勉強会は今日までだね。明日からは休みだし」
「ああ、そうだね……」
あー、これはロベールとイチャイチャすることばかり考えてちゃ拙いよな。土日はみっちり試験勉強しなきゃ。
「もしよかったら、俺んちで勉強会する?」
「え? マジで? うん、俺行きたい! な、創?」
雄基が笹山の肩を叩いて、一緒に行こうと誘っている。それに対して笹山は、嫌そうに眉根を寄せた。
「いや……、俺はいいわ」
「ええー? 何言ってんだよ! せっかくの好意無駄にすんなよ。俺も行くぞ。昌義も行くよな?」
「おう。俺、一人じゃどう勉強していいか分からないからな」
「だよな! 創も、変な意地張ってんじゃねーよ。今度成績悪いとマジヤバいじゃん。せっかく日暮が言ってくれてるんだから、行こうよ! なあ、日暮?」
「ハハ……。うん、遠慮しないでもいいよ。俺も復習になるし、一人で勉強するより大勢でする方が楽しいから」
「そうだよな、な! じゃあ創も俺たちと行くという事で」
「……おい」
仲間に説得されては、いくら笹山でもそれ以上反論できなかったようだ。眉間にしわを寄せて嫌々だが、結局は言葉を飲み込んだようだ。
「甘木たちはどうするんだ?」
雄基が、笹山の肩を抱いたままこちらをくるんと振り返った。
「僕は家で勉強するよ。日暮に教えてもらったところを復習しながら、他の教科も暗記しなきゃなんないし。奏多は?」
「俺もそっちかなー。礼美ちゃんと一緒に勉強する約束してるし」
奏多のその一言で、雄基たちの目つきが変わる。
あ、今奏多喧嘩売っちゃったか?
ちょっぴり冷や冷やしたんだけど、当の本人は礼美ちゃんのことを思い出してか周りの視線を全く関知していない。
そんなこんなでぞろぞろと教室を出てみんなが歩き出す中、ロベールと帰る約束をしていたことを思い出して奏多の手を引っ張って合図をした。
「え? ……ああ、保健室、寄る?」
「うん、お願い」
こそこそとそんなやり取りをしている内に、またすごく良いタイミングで、ロベールがこちらに歩いてきた。
「あれ? ロベール先生、よく遇いますね」
「そうだね。……君たちもよく残ってるね。来週の試験勉強に向けてかい?」
「はい」
「偉いねー」
「そんなことないです」
そんな会話を繰り広げながら自然と俺らとロベールは合流して、そのまま校舎を出た。
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