30 / 93
第三章
保健室の恋人(バカップルw)たち
しおりを挟む
「もう……っ、バカ」
やっと唇を離してくれたロベールに涙目で文句を言っても、どうやらあまり効果は無いようだ。やけにニヤニヤと嬉しそうだ。
ロベールは機嫌のいいまま僕の肩を引き寄せて、僕に凭れ掛かるよう促す。
……あんまり時間無いんだけど、五分くらいならいいかな。
「あ……」
「ん?」
急に思い出してしまった。今朝あった、上から目線のあの威圧的な天界人。
「今朝の、すっげ綺麗で威圧的な天界人、あの人どうした? 帰ったの?」
「ああ、マクグラスのことか。あいつならとっくに帰った。気にすんな」
「…………」
気にすんなって言われて、素直に気にしないなんてとてもじゃないけど言えない。
だってあの人、ロベールのこといやに気に入ってたじゃないか。しかも僕のこと値踏みしてさ。……確かにあいつ、綺麗だし迫力あるし頭も良さそうだったけどさ、すっげ性格悪そうじゃん。
唇尖らせて心の中でぐちぐち文句を言っていると、目の前に綺麗な顔がひょいと現れた。
「どうした? ヤキモチ焼いてんのか?」
「――だって……、だってあの人ロベールのこと気に入ってたみたいじゃない。……あっ、もしかしてあの人なの? 前に言ってた魔力を使って見つかったら面倒だって言ってた人って」
「……まあ、そうだ」
「なんで? そういえばどうして悪魔と天界人が知り合いだったりするの? 普通、敵対している相手だよね?」
「まあな」
「…………」
いつになく口の重いロベールの様子が気になる。探るように見つめ続けていると、軽くため息を吐かれた。
「……前に、私が気紛れであいつを助けたことがあるんだ」
「助けた? どう言う事?」
「何があったのかは知らないが、すごい雪の日にマクグラスが怪我をして倒れているところを発見したんだ。いったんはそのまま通り過ぎたんだが、なんだかやけにあいつの白い羽が目に焼き付いてな……。気が付いたら近くの小屋に運んで火を起こしてやっていた」
「それって、ロベールが助けてなかったらそのマク……、何とかって人、死んでたってこと?」
「おそらくな」
「そうなんだ……。あっ!」
前に言ってた、魔界を追放されたってそのせいなのか?
その天界人の……、せい?
「何?」
「あ、うん。だからあのマク何とかって人、ロベールのこと気に入っているんだね?」
浮かんだのはそのことじゃなかったけど、なんとなくそれをロベールには言いたくなくて咄嗟にごまかした。そう言うと、ロベールの顔が嫌そうに歪む。
「気に入っているというよりは、変な恩義を感じているらしい。鬱陶しいから気にするなと言っているのに、私を探し出しては監視したがってうざいったらない」
「…………」
やっぱりそれって、気に入ってるっていうんじゃないの?
「なんだ? まだ何か気になるのか?」
「だって……。マク……、上からだし綺麗だし迫力あるし……」
それでもってロベールのことが好きなのだとしたら、どう戦っていけばいいんだよ……。
「おーまーえー!」
ビシッ!
「いたっ!」
ロベールが僕の額を人差し指でツンと小突いた。突然だったので本気でびっくりした。
「私の気持ちを蔑ろにするな。……こんなに溺れたのは初めてなんだぞ。誰が南を手放すかよ」
「ロベール……」
ああ、もう狡い。そんな綺麗な顔で、そんな風に優しく見つめられたらこれ以上剥れることなんてできないじゃないか。
「……今日も、一緒に帰るよね?」
「ああ、言ったろ?」
「うん。……勉強会終わったら、保健室に呼びに行くね」
「――ああ。昨日の、アレな?」
ロベールのため息に、やっぱり笹山たちを警戒しているのが見て取れて苦笑いがこぼれる。
「うん。じゃあもう行くね。みんな待ってるだろうから」
「そうだな。――南」
チュッ。
「/////」
呼ばれてひょいっと顔を上げたら、ロベールに可愛いバードキスをされた。
もう~。
パチン。
「いたっ!」
せっかく幸せな気分になっていたのに、今度はほっぺを叩かれた。なぜか結構強めだったので幸せが半分くらい吹き飛ぶ。
「なんだよ、もう!」
「変態防止だ」
「……へ?」
「南は可愛すぎる。ただでさえお前はヤバいフェロモンが出やすいのに、そんな顔で私のいないオオカミの元へ行くのは拙い」
「オオカミって……」
だったら、キスなんてしなきゃいいのに。
いや……、うれしくないわけじゃ……無いけどさ。
「じゃ……、行くね」
「ああ、またあとでな」
「うん」
ロベールの手を名残惜しく触りながら、保健室の扉を開けた。
「じゃ、行ってきます」
手を振り見送るロベールを残して、僕はまた教室へと全力疾走をした。
やっと唇を離してくれたロベールに涙目で文句を言っても、どうやらあまり効果は無いようだ。やけにニヤニヤと嬉しそうだ。
ロベールは機嫌のいいまま僕の肩を引き寄せて、僕に凭れ掛かるよう促す。
……あんまり時間無いんだけど、五分くらいならいいかな。
「あ……」
「ん?」
急に思い出してしまった。今朝あった、上から目線のあの威圧的な天界人。
「今朝の、すっげ綺麗で威圧的な天界人、あの人どうした? 帰ったの?」
「ああ、マクグラスのことか。あいつならとっくに帰った。気にすんな」
「…………」
気にすんなって言われて、素直に気にしないなんてとてもじゃないけど言えない。
だってあの人、ロベールのこといやに気に入ってたじゃないか。しかも僕のこと値踏みしてさ。……確かにあいつ、綺麗だし迫力あるし頭も良さそうだったけどさ、すっげ性格悪そうじゃん。
唇尖らせて心の中でぐちぐち文句を言っていると、目の前に綺麗な顔がひょいと現れた。
「どうした? ヤキモチ焼いてんのか?」
「――だって……、だってあの人ロベールのこと気に入ってたみたいじゃない。……あっ、もしかしてあの人なの? 前に言ってた魔力を使って見つかったら面倒だって言ってた人って」
「……まあ、そうだ」
「なんで? そういえばどうして悪魔と天界人が知り合いだったりするの? 普通、敵対している相手だよね?」
「まあな」
「…………」
いつになく口の重いロベールの様子が気になる。探るように見つめ続けていると、軽くため息を吐かれた。
「……前に、私が気紛れであいつを助けたことがあるんだ」
「助けた? どう言う事?」
「何があったのかは知らないが、すごい雪の日にマクグラスが怪我をして倒れているところを発見したんだ。いったんはそのまま通り過ぎたんだが、なんだかやけにあいつの白い羽が目に焼き付いてな……。気が付いたら近くの小屋に運んで火を起こしてやっていた」
「それって、ロベールが助けてなかったらそのマク……、何とかって人、死んでたってこと?」
「おそらくな」
「そうなんだ……。あっ!」
前に言ってた、魔界を追放されたってそのせいなのか?
その天界人の……、せい?
「何?」
「あ、うん。だからあのマク何とかって人、ロベールのこと気に入っているんだね?」
浮かんだのはそのことじゃなかったけど、なんとなくそれをロベールには言いたくなくて咄嗟にごまかした。そう言うと、ロベールの顔が嫌そうに歪む。
「気に入っているというよりは、変な恩義を感じているらしい。鬱陶しいから気にするなと言っているのに、私を探し出しては監視したがってうざいったらない」
「…………」
やっぱりそれって、気に入ってるっていうんじゃないの?
「なんだ? まだ何か気になるのか?」
「だって……。マク……、上からだし綺麗だし迫力あるし……」
それでもってロベールのことが好きなのだとしたら、どう戦っていけばいいんだよ……。
「おーまーえー!」
ビシッ!
「いたっ!」
ロベールが僕の額を人差し指でツンと小突いた。突然だったので本気でびっくりした。
「私の気持ちを蔑ろにするな。……こんなに溺れたのは初めてなんだぞ。誰が南を手放すかよ」
「ロベール……」
ああ、もう狡い。そんな綺麗な顔で、そんな風に優しく見つめられたらこれ以上剥れることなんてできないじゃないか。
「……今日も、一緒に帰るよね?」
「ああ、言ったろ?」
「うん。……勉強会終わったら、保健室に呼びに行くね」
「――ああ。昨日の、アレな?」
ロベールのため息に、やっぱり笹山たちを警戒しているのが見て取れて苦笑いがこぼれる。
「うん。じゃあもう行くね。みんな待ってるだろうから」
「そうだな。――南」
チュッ。
「/////」
呼ばれてひょいっと顔を上げたら、ロベールに可愛いバードキスをされた。
もう~。
パチン。
「いたっ!」
せっかく幸せな気分になっていたのに、今度はほっぺを叩かれた。なぜか結構強めだったので幸せが半分くらい吹き飛ぶ。
「なんだよ、もう!」
「変態防止だ」
「……へ?」
「南は可愛すぎる。ただでさえお前はヤバいフェロモンが出やすいのに、そんな顔で私のいないオオカミの元へ行くのは拙い」
「オオカミって……」
だったら、キスなんてしなきゃいいのに。
いや……、うれしくないわけじゃ……無いけどさ。
「じゃ……、行くね」
「ああ、またあとでな」
「うん」
ロベールの手を名残惜しく触りながら、保健室の扉を開けた。
「じゃ、行ってきます」
手を振り見送るロベールを残して、僕はまた教室へと全力疾走をした。
2
お気に入りに追加
183
あなたにおすすめの小説
男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。
カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。
今年のメインイベントは受験、
あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。
だがそんな彼は飛行機が苦手だった。
電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?!
あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな?
急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。
さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?!
変なレアスキルや神具、
八百万(やおよろず)の神の加護。
レアチート盛りだくさん?!
半ばあたりシリアス
後半ざまぁ。
訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前
お腹がすいた時に食べたい食べ物など
思いついた名前とかをもじり、
なんとか、名前決めてます。
***
お名前使用してもいいよ💕っていう
心優しい方、教えて下さい🥺
悪役には使わないようにします、たぶん。
ちょっとオネェだったり、
アレ…だったりする程度です😁
すでに、使用オッケーしてくださった心優しい
皆様ありがとうございます😘
読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞
スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~
深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】
異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
平凡ハイスペックのマイペース少年!〜王道学園風〜
ミクリ21
BL
竜城 梓という平凡な見た目のハイスペック高校生の話です。
王道学園物が元ネタで、とにかくコメディに走る物語を心掛けています!
※作者の遊び心を詰め込んだ作品になります。
※現在連載中止中で、途中までしかないです。
「短冊に秘めた願い事」
悠里
BL
何年も片思いしてきた幼馴染が、昨日可愛い女の子に告白されて、七夕の今日、多分、初デート中。
落ち込みながら空を見上げて、彦星と織姫をちょっと想像。
……いいなあ、一年に一日でも、好きな人と、恋人になれるなら。
残りの日はずっと、その一日を楽しみに生きるのに。
なんて思っていたら、片思いの相手が突然訪ねてきた。
あれ? デート中じゃないの?
高校生同士の可愛い七夕🎋話です(*'ω'*)♡
本編は4ページで完結。
その後、おまけの番外編があります♡
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
信じて送り出した養い子が、魔王の首を手柄に俺へ迫ってくるんだが……
鳥羽ミワ
BL
ミルはとある貴族の家で使用人として働いていた。そこの末息子・レオンは、不吉な赤目や強い黒魔力を持つことで忌み嫌われている。それを見かねたミルは、レオンを離れへ隔離するという名目で、彼の面倒を見ていた。
そんなある日、魔王復活の知らせが届く。レオンは勇者候補として戦地へ向かうこととなった。心配でたまらないミルだが、レオンはあっさり魔王を討ち取った。
これでレオンの将来は安泰だ! と喜んだのも束の間、レオンはミルに求婚する。
「俺はずっと、ミルのことが好きだった」
そんなこと聞いてないが!? だけどうるうるの瞳(※ミル視点)で迫るレオンを、ミルは拒み切れなくて……。
お人よしでほだされやすい鈍感使用人と、彼をずっと恋い慕い続けた令息。長年の執着の粘り勝ちを見届けろ!
※エブリスタ様、カクヨム様、pixiv様にも掲載しています
新しい道を歩み始めた貴方へ
mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。
そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。
その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。
あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。
あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……?
※沢山のお気に入り登録ありがとうございます。深く感謝申し上げます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる