フェロモン? そんなの僕知りません!!

くるむ

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第三章

日暮と笹山

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腹を立てながら、ドカドカと教室に向かった。何とかぎりぎりで席に着いてため息を吐く。

あの二人、……僕なんかよりずっと背が高くて綺麗で迫力があって……。すごくお似合いに見えた。
ロベールは心底煩わしく思っていたみたいだけど、あの天界人はロベールのことどう思っているんだろう? まさか好きとか? 

「…………」

ああ~、なんだかモヤモヤする~。
さっきの二人のことを考えるたびに脳裏に浮かぶあの余裕しゃくしゃくな静かな笑み。それを思い出すと、はらわたが煮えくり返るような気持ちになるんだけど……!

ポカン!
「てっ! あっ……」

突然頭を叩かれて顔を上げると、笑顔を作りながらも恐ろしい表情を浮かべた宇都宮が立っていた。

「甘木くん、さっきからずっと俯いてばかりいるけど、ちゃんと授業は聞いてるの?」
「あっ、うわわっ、すみません!」

慌てて隣を見ると、開いているページも違っている。焦って教科書をぱらぱらと捲って、ちゃんと授業を受けますアピールをした。とりあえず表情もキリッとしてみる。
宇都宮は苦い表情を崩しはしなかったが、何とか納得してもらえたみたいで戻っていき授業を再開した。


昼休み、皆で弁当を広げていると、いつもは学食派の笹山が、売店でホットドッグなどを買ってきて俺らの横に並んだ。笹山とよくつるんでいる雄基や康徳 、昌義も一緒だ。

「あれー? 珍しいな。笹山たちが教室でご飯食べるのって」
「たまにはいいかなーって、な?」
「おう。飯がうまいのは良いけど、学食けっこう混むからな。たまにはのんびりも良いだろう?」
「ああ、それ言えるよね」

みんなでガヤガヤしながらそれぞれの弁当を食べ始めたころ、同じように売店で買ってきたらしい袋を持って、日暮が教室に入ってきた。

「やあ、今日は人数多いんだね。そこ、座っても良い?」
「ああ、空いてるよ~」
「ありがとう」

にっこりと笑う日暮に対して、斜め横に座る笹山の表情が明らかに面白くなさそうなものに変わった。
やっぱり笹山って、日暮のこと嫌ってるみたい。

「そういえば南、さっき宇都宮に怒られてたろ? もしかして、居眠りしてた?」
「あー、ハハ。ちょっとね……」

奏多に突っ込まれて頭を掻いている横で、日暮が笑って僕らを見ていた。呆れられちゃったかな?

――あ、そういえば。
……日暮の方が性格悪そうだとか何とか、ロベールがそんなこと言ってたな。
でも、……。

こうやってみんなと喋ってる日暮から、そんな感じは受けないんだよなー。

「あ、そうだ日暮、弁当食べ終わったら昨日の続き教えて?」
「いいよ」
「え、何々? もしかして近江、日暮に勉強教えてもらってるのか?」
「うん、数学」
「なんだとー! 狡い、俺にも教えろ!」
「俺も、俺も!」

奏多の一言から、結局ここにいる全員が日暮に数学を教えてもらう事になった。それでも日暮は嫌な顔一つしてないんだから、やっぱりどっからどう見ても良い奴なんだよな。

ご飯を食べ終え僕らは各々教科書を広げて、分からないところを日暮にみんなで教えてもらった。
そして特に用事のない奴は、居残り勉強に参加することになったのだ。
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