28 / 93
第三章
日暮と笹山
しおりを挟む
腹を立てながら、ドカドカと教室に向かった。何とかぎりぎりで席に着いてため息を吐く。
あの二人、……僕なんかよりずっと背が高くて綺麗で迫力があって……。すごくお似合いに見えた。
ロベールは心底煩わしく思っていたみたいだけど、あの天界人はロベールのことどう思っているんだろう? まさか好きとか?
「…………」
ああ~、なんだかモヤモヤする~。
さっきの二人のことを考えるたびに脳裏に浮かぶあの余裕しゃくしゃくな静かな笑み。それを思い出すと、はらわたが煮えくり返るような気持ちになるんだけど……!
ポカン!
「てっ! あっ……」
突然頭を叩かれて顔を上げると、笑顔を作りながらも恐ろしい表情を浮かべた宇都宮が立っていた。
「甘木くん、さっきからずっと俯いてばかりいるけど、ちゃんと授業は聞いてるの?」
「あっ、うわわっ、すみません!」
慌てて隣を見ると、開いているページも違っている。焦って教科書をぱらぱらと捲って、ちゃんと授業を受けますアピールをした。とりあえず表情もキリッとしてみる。
宇都宮は苦い表情を崩しはしなかったが、何とか納得してもらえたみたいで戻っていき授業を再開した。
昼休み、皆で弁当を広げていると、いつもは学食派の笹山が、売店でホットドッグなどを買ってきて俺らの横に並んだ。笹山とよくつるんでいる雄基や康徳 、昌義も一緒だ。
「あれー? 珍しいな。笹山たちが教室でご飯食べるのって」
「たまにはいいかなーって、な?」
「おう。飯がうまいのは良いけど、学食けっこう混むからな。たまにはのんびりも良いだろう?」
「ああ、それ言えるよね」
みんなでガヤガヤしながらそれぞれの弁当を食べ始めたころ、同じように売店で買ってきたらしい袋を持って、日暮が教室に入ってきた。
「やあ、今日は人数多いんだね。そこ、座っても良い?」
「ああ、空いてるよ~」
「ありがとう」
にっこりと笑う日暮に対して、斜め横に座る笹山の表情が明らかに面白くなさそうなものに変わった。
やっぱり笹山って、日暮のこと嫌ってるみたい。
「そういえば南、さっき宇都宮に怒られてたろ? もしかして、居眠りしてた?」
「あー、ハハ。ちょっとね……」
奏多に突っ込まれて頭を掻いている横で、日暮が笑って僕らを見ていた。呆れられちゃったかな?
――あ、そういえば。
……日暮の方が性格悪そうだとか何とか、ロベールがそんなこと言ってたな。
でも、……。
こうやってみんなと喋ってる日暮から、そんな感じは受けないんだよなー。
「あ、そうだ日暮、弁当食べ終わったら昨日の続き教えて?」
「いいよ」
「え、何々? もしかして近江、日暮に勉強教えてもらってるのか?」
「うん、数学」
「なんだとー! 狡い、俺にも教えろ!」
「俺も、俺も!」
奏多の一言から、結局ここにいる全員が日暮に数学を教えてもらう事になった。それでも日暮は嫌な顔一つしてないんだから、やっぱりどっからどう見ても良い奴なんだよな。
ご飯を食べ終え僕らは各々教科書を広げて、分からないところを日暮にみんなで教えてもらった。
そして特に用事のない奴は、居残り勉強に参加することになったのだ。
あの二人、……僕なんかよりずっと背が高くて綺麗で迫力があって……。すごくお似合いに見えた。
ロベールは心底煩わしく思っていたみたいだけど、あの天界人はロベールのことどう思っているんだろう? まさか好きとか?
「…………」
ああ~、なんだかモヤモヤする~。
さっきの二人のことを考えるたびに脳裏に浮かぶあの余裕しゃくしゃくな静かな笑み。それを思い出すと、はらわたが煮えくり返るような気持ちになるんだけど……!
ポカン!
「てっ! あっ……」
突然頭を叩かれて顔を上げると、笑顔を作りながらも恐ろしい表情を浮かべた宇都宮が立っていた。
「甘木くん、さっきからずっと俯いてばかりいるけど、ちゃんと授業は聞いてるの?」
「あっ、うわわっ、すみません!」
慌てて隣を見ると、開いているページも違っている。焦って教科書をぱらぱらと捲って、ちゃんと授業を受けますアピールをした。とりあえず表情もキリッとしてみる。
宇都宮は苦い表情を崩しはしなかったが、何とか納得してもらえたみたいで戻っていき授業を再開した。
昼休み、皆で弁当を広げていると、いつもは学食派の笹山が、売店でホットドッグなどを買ってきて俺らの横に並んだ。笹山とよくつるんでいる雄基や康徳 、昌義も一緒だ。
「あれー? 珍しいな。笹山たちが教室でご飯食べるのって」
「たまにはいいかなーって、な?」
「おう。飯がうまいのは良いけど、学食けっこう混むからな。たまにはのんびりも良いだろう?」
「ああ、それ言えるよね」
みんなでガヤガヤしながらそれぞれの弁当を食べ始めたころ、同じように売店で買ってきたらしい袋を持って、日暮が教室に入ってきた。
「やあ、今日は人数多いんだね。そこ、座っても良い?」
「ああ、空いてるよ~」
「ありがとう」
にっこりと笑う日暮に対して、斜め横に座る笹山の表情が明らかに面白くなさそうなものに変わった。
やっぱり笹山って、日暮のこと嫌ってるみたい。
「そういえば南、さっき宇都宮に怒られてたろ? もしかして、居眠りしてた?」
「あー、ハハ。ちょっとね……」
奏多に突っ込まれて頭を掻いている横で、日暮が笑って僕らを見ていた。呆れられちゃったかな?
――あ、そういえば。
……日暮の方が性格悪そうだとか何とか、ロベールがそんなこと言ってたな。
でも、……。
こうやってみんなと喋ってる日暮から、そんな感じは受けないんだよなー。
「あ、そうだ日暮、弁当食べ終わったら昨日の続き教えて?」
「いいよ」
「え、何々? もしかして近江、日暮に勉強教えてもらってるのか?」
「うん、数学」
「なんだとー! 狡い、俺にも教えろ!」
「俺も、俺も!」
奏多の一言から、結局ここにいる全員が日暮に数学を教えてもらう事になった。それでも日暮は嫌な顔一つしてないんだから、やっぱりどっからどう見ても良い奴なんだよな。
ご飯を食べ終え僕らは各々教科書を広げて、分からないところを日暮にみんなで教えてもらった。
そして特に用事のない奴は、居残り勉強に参加することになったのだ。
2
お気に入りに追加
183
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢の追放エンド………修道院が無いじゃない!(はっ!?ここを楽園にしましょう♪
naturalsoft
ファンタジー
シオン・アクエリアス公爵令嬢は転生者であった。そして、同じく転生者であるヒロインに負けて、北方にある辺境の国内で1番厳しいと呼ばれる修道院へ送られる事となった。
「きぃーーーー!!!!!私は負けておりませんわ!イベントの強制力に負けたのですわ!覚えてらっしゃいーーーー!!!!!」
そして、目的地まで運ばれて着いてみると………
「はて?修道院がありませんわ?」
why!?
えっ、領主が修道院や孤児院が無いのにあると言って、不正に補助金を着服しているって?
どこの現代社会でもある不正をしてんのよーーーーー!!!!!!
※ジャンルをファンタジーに変更しました。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
氷の騎士様は実は太陽の騎士様です。
りつ
恋愛
イリスの婚約者は幼馴染のラファエルである。彼と結婚するまで遠い修道院の寄宿学校で過ごしていたが、十八歳になり、王都へ戻って来た彼女は彼と結婚できる事実に胸をときめかせていた。しかし両親はラファエル以外の男性にも目を向けるよう言い出し、イリスは戸惑ってしまう。
王女殿下や王太子殿下とも知り合い、ラファエルが「氷の騎士」と呼ばれていることを知ったイリス。離れている間の知らなかったラファエルのことを令嬢たちの口から聞かされるが、イリスは次第に違和感を抱き始めて……
※他サイトにも掲載しています
※表紙は「かんたん表紙メーカー」様で作成しました

オッサン、エルフの森の歌姫【ディーバ】になる
クロタ
BL
召喚儀式の失敗で、現代日本から異世界に飛ばされて捨てられたオッサン(39歳)と、彼を拾って過保護に庇護するエルフ(300歳、外見年齢20代)のお話です。
【完結】相談する相手を、間違えました
ryon*
BL
長い間片想いしていた幼なじみの結婚を知らされ、30歳の誕生日前日に失恋した大晴。
自棄になり訪れた結婚相談所で、高校時代の同級生にして学内のカースト最上位に君臨していた男、早乙女 遼河と再会して・・・
***
執着系美形攻めに、あっさりカラダから堕とされる自称平凡地味陰キャ受けを書きたかった。
ただ、それだけです。
***
他サイトにも、掲載しています。
てんぱる1様の、フリー素材を表紙にお借りしています。
***
エブリスタで2022/5/6~5/11、BLトレンドランキング1位を獲得しました。
ありがとうございました。
***
閲覧への感謝の気持ちをこめて、5/8 遼河視点のSSを追加しました。
ちょっと闇深い感じですが、楽しんで頂けたら幸いです(*´ω`*)
***
2022/5/14 エブリスタで保存したデータが飛ぶという不具合が出ているみたいで、ちょっとこわいのであちらに置いていたSSを念のためこちらにも転載しておきます。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。

侯爵令息セドリックの憂鬱な日
めちゅう
BL
第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける———
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる